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スパイト行動とは何か?わかりやすく解説。同調圧力による被害と屈しないための付き合い方

日本人は同調圧力がとくに強い民族と言われています。

「何違うことやってるんだよ」「お前も同じことをしろよ」「お前だけ何やってるんだよ」「俺もやってるんだから」というような声があちこちから聞こえてきたり、声が聞こえてこなくても態度からヒシヒシと伝わってきたりすることがあります。

この、同調圧力の根本にある原理は「私も我慢してるんだから、あなたも我慢するべき」「俺も我慢してるんだから、お前も我慢しろよ」という精神です。

つまり、日本人は「自分が我慢していること」 = 「相手も我慢しなければいけないこと」という考え方をしている人の割合が多いということです。

そして、自分が我慢していることを、我慢していない人がいると、自分が損をしてでもいいから相手も得させないようにする人も多く見られます。

このように、「自分が損をしてでもいいから相手も得させないようにする」行動をスパイト行動といいいます。

ここでは、同調圧力から生まれるスパイト行動とは何か?人がなぜスパイト行動をしてしまうのか?同調圧力が強い人とはどう付き合っていったらいいか?について解説しています。

スパイト行動とは?意味と例

スパイト行動の意味

スパイト行動とは「意地悪すること」の専門的な言い回しです。

スパイト(spite)とは意地悪という意味です。英語では意地悪することを、スパイト ビヘービア(spite behavior)意地悪な振る舞いと言います。このビヘービアの部分だけ日本語にしたのが、スパイト行動です。

特に、自分が損をしてでもいいから相手も得させないようにする行動をスパイト行動と指します。

スパイト行動の例

日本では、コロナの非常事態宣言で外出などの自粛が要請されたとき、罰則や罰金が課されることはありません。

しかし、一部の国民はマスクをしていない人(とくに有名人)や外出してお店に行った人をネットやテレビ、SNSや口コミ投稿などで吊るし上げ、みんなでよってたかって叩いたりします。

こういった行為で、非難して叩いた人はそれによって何かを得をするわけではありません。むしろ、他人を批判して苦痛や損害を与えた加害者になるリスクの方が高いです。

叩かれた人は精神的にも社会的にも大きな損失を負うことになります。

その他の例では、学校や会社などでも、自由参加のイベントなどに対して不参加の人がいると、その人を仲間は外れにしたり、悪口を言ったり、みんなで叩いたりといった「いじめ」をします。

こちらも、その人を叩いたことで得をすることは何もありません。むしろ叩いた人はいじめの加害者であり、恨まれたり、将来的に報復されたりといったリスクがあります。

このように、自分が損をしてでも相手に得をさせないようにする傾向が、日本人には強いことが社会的にも見てとれます。

スパイト行動を象徴するような考え方や行動には以下のようなものがあります。

  • 私も我慢してるんだから、あなたも我慢するべき
  • みんな参加するべき
  • 村八分
  • 密告
  • 欲しがりません勝つまでは
  • 和をもって尊しとなす
  • 自粛警察
  • 出る杭は打たれる
  • ぬけがけは許さない

現在だけではなく、古くからスパイト行動につながる考え方が広く蔓延していたことがわかります。


人がなぜスパイト行動をとるのか?

人がなぜスパイト行動をとるのかは状況やその人の特性にもよるので断定できる理由は今のところありません。ただ、多くの場合において、「嫉妬」や「偏った正義感」「不安」が原動力になっています。

つまり、自分が損をしてでもいいから相手も得させないようにしようと考えている人は、嫉妬心が強かったり、偏った正義感(偏見)を持っていたり、いつも不安なことばかりを考えてしまう人である傾向が高いです。

逆に、嫉妬心や偏見、不安が少ない人はスパイト行動をとる傾向が低いです。

また、スパイト行動をとる人は、これまで生まれ育ってきた環境の中で、親や先生、先輩などから「お前も〇〇しなければいけない」という強い同調を直接的に求められてきている場合がほとんどです。

結果として、「~しなければいけない」「~するべきだ」「~しないのは悪だ」という偏った考えが根付いてしまい、それを疑うことなく周囲の人に対しても行っています。

そして、周りに批判されたり反発されたとしても、「私だってそうだったんだから(それでもこうしてちゃんと生きているでしょ)」と自分自身で納得してスパイト行動を続けます。


スパイト行動のデメリット

スパイト行動には自分自身も損を伴う行動なので、デメリットがたくさんあります。

中でも、「いやがらせ」という行為なので、それをした本人が法律的に裁かれるリスクがあります。

例えば、自粛警察と称して、マスクをしていない人を非難して「死ね」「消えろ」などといった暴力的な言葉を使ったり、

お店に対して「閉めろ」「潰れろ」「この時期に営業するとは非常識」といったSNSやWEB上の書き込みや張り紙をすることは罪に問われます。

「死ね」「消えろ」という暴力的な言葉は侮辱罪に、お店に対してSNSや張り紙など嫌がらせをすることは、威力業務妨害罪、強要罪、軽犯罪に問われます。

(参考)Wikipedia 自粛警察の違法性

また、非難した相手を傷つける以外に、非難した相手から恨まれることにもなります。いつか相手から報復を受けるかもしれません。

そして、スパイト行動をする人は、その程度の人とみなされ組織中で成功することが難しくなることもあります。

スパイト行動の根本は精神的な疾患(健全でないこと)や過去のネガティブな体験なので、スパイト行動を続けている限り、幸福な人生を歩めないという大きなデメリットもあります。

なにより、スパイト行動をする人の周りには同じくスパイト行動をする人が集まっています。


スパイト行動のメリット

自分が損をしてでもいいから相手も得させないようにするというスパイト行動の精神が、スパイト行動にはデメリットしかないように思えますが、実は社会的なメリットもあります。

メリットは大きく以下の2つです。

  1. 協力し合う
  2. 公平性を生み出す

協力し合う

自己犠牲を払ってでも、協力的でない人を罰しようとしたり、そうされることがわかっているため、乗り気ではなかったり、やりたくないと思っていても参加する人が多いです。

結果として、みんなで一緒に掃除したり、助け合ったりという協調した社会が生まれます。

しかし、そういった気持ちで参加する人は、不満を持ちながら、それを我慢して参加しています。そしてその気持ちが、「私も我慢してるんだから、あなたもやりなよ」となり、次のスパイト行動へとつながっていきます。

表面的な行動では協力しているものの、気持ちの面ではまったく協力できていないことがスパイト行動による協力の側面でもあります。


公平性を生み出す

スパイト行動は自分が損をしてでも相手に得をさせないという精神です。その損得勘定の基準は相手です。

基準は周囲なので、みんなと同じか、みんなよりも少しだけいいを選択します。

このため、スパイト行動をとる人は自分だけが飛びぬけて得をするような話があっても、周りがやっていなければ、その話に乗らない傾向があります。

周りを巻き込むような場合でも、少数の人が得をするよりも、一部の人が損したとしてもみんなが平均的になる方を選択します。

結果として、誰かが飛びぬけることがない、公平や社会が生まれます。

ただし、これは足の引っ張り合いにもなります。現状を打破してよりよい社会にしたり、不安感や不幸から抜け出そうとする人を、その場に留まらせる現状を変えない力としても働きます。

このため、組織の外や世界などより大きな範囲に目を向けると、技術や裕福度、社会インフラなどが相対的にズルズルと下がっていく事態を招きます


同調圧力の強い人との付き合い方

同調圧力が強い人との付き合い方は距離を置くことです。

同調圧力が強くスパイト行動をする人は、「私も我慢してるんだから、あなたも我慢するべき」という「~するべき」や「~しなければならない」という考え方を当たり前だと思っている人たちです。

その人自身も生まれ育った環境の中で、同調圧力をかけられ時には強制されてきた人たちなので、その人たちが変わるということはほとんどありません。もし、変わるとしても、即効性はなく時間がかかります。

距離を置くというのは、拒絶したり批判することではなく、「あなたたちはそういう考えなんですね」というその人たちの考えを認め、自分は違う考え方をしているということを納得し、同調しないということです。

「あの人たちはそういう考え方なんだ。私は私の考えでいこう」という精神状態にもっていくことが大切です。

同調圧力が強い人たちの輪から急に抜けると裏切り者認定をされ、より酷いいやがらせやいじめをされる可能性があるので、引っ越しや転職など完全に脱出できる場合を除いては注意が必要です。

つかず離れずを意識するようにします。

なお、こういった人たちと距離をおくには努力が必要です。

同調圧力によって現在抱えている不幸や精神的苦痛は、これまでに人と距離をおく努力や同調圧力に屈しない努力を怠ってきたこと、あるいは、努力の方向性が間違っていたことが原因です。

同調圧力をかけてきたりスパイト行動をする集団や組織の外には、それをしない人や集団がたくさんあります。

どちらに所属するかは自分次第です。

人(特に日本人)は自分が所属する集団を自由に選ぶ権利が与えられているので、勇気をもって一歩外に踏み出す努力をしてみてください。

もちろん、自分が今同調圧力の強い組織にいる場合に、あなたが外に出ていこうとすれば、「なんでお前だけ」「ここが一番いいに決まっている」「外に出たって不安なことしかない」と口をそろえて言ってきます。

なぜなら、それはあなたが同調圧力の強い組織に所属していているからです。

ですが、人が行動を起こせばそれは必ず結果として返ってきます。そこにはこれまでとは違う世界が確実に広がっています。


なお、世界は広く外の世界にから見ると、あなたが同調圧力が弱いと思っていた組織は、実は同調圧力がまだ強く、もっと同調圧力が弱い組織があることがあります。

そしてその外にはもっともっと、、、というようにつながっているので、ぜひ自分の価値観にピッタリと合う居心地のいい場所を見つけ出してください。

参考


yuta