希少性の原理とは、私たちヒトの性質の一つで、少ないものほど価値が高いと感じてしまうことです。
全く同じモノでも、在庫がたくさんあるときはそこまで魅力を感じないのに、残り僅かや最後の1個となると急に欲しくなってしまうのが希少性の原理です。
希少性の原理は私たちの中で無意識に生じるもので、本物の価値とは全く異なっています。
骨董品の収集家はまさに希少性の原理を生業にしている人たちです。
そのもの自体に価値があるないに関わらず、「希少性」という一点だけの価値に頼った商売をしています。
このため、不鮮明な切手や、二度打ちされた硬化などの本来価値を持たない欠陥品が「珍しい」という理由で高値で取引されます。
フロリダの大学で行われたアンケートでも希少性の効果が如実に表れています。
そこでは大学の食堂の料理についてアンケートを取った結果、不満があると答えた学生が大勢いました。
ところが、9日後に再度同じアンケートを実施したところ、料理に対する評価が上がりました。
その間、料理は何も変わっておらず、変わったのは、火災のためにその食堂が2週間の間使えなくなったということでした。
私たちが「レア」や「本日限り」「限定日」といった言葉に弱いのは周知の事実です。
なぜこれほどまでに希少性の原理が強力なのかというと、それは私たちが持つもう一つの感覚「失うことに対する恐怖」と結びついているためです。
私たちは同じモノを得る場合と失う場合で感じる度合いが全く異なっています。失うことに対して過剰なまでに強烈な感情の反応を示します。
ある実験では、大学生にいいパートナーができた場合と、元々いたパートナーを失った場合を想像してもらったとき、失う場合の方が強い感情反応が見られました。
他には、いい成績をとったときと、成績が悪くなってしまったときを想像してもらうと、成績が悪くなってしまった方が強い感情反応が見られました。
このように、私たちは失うことに対して強烈な恐怖を抱いているため「残り僅か」というもうすぐなくなってしまうシグナルを見るとその価値を過剰に見積もってしまいます。
今あるものが無くなってしまうと想像すると人は強い感情を抱き、結果としてそれが行動のためのモチベーションになります。
このため、失うことを強調したパンフレットやマーケティングがそこら中に出回っています。
ある医療機関では乳がん検査を受診する人を増やすために、乳がん検査を受けることで何かが得られることをアピールするのではなく、乳がん検査を受けないと、病気が見逃されて治癒するかわからない危険性があることをアピールしています。
保険商品も私たちが感じる「もしかしたら危険かもしれない」という恐怖心をフル活用したビジネスです。
発生する確率が1%にも満たないものを、「もし発生したら1億円の損害賠償」「入院費用は〇万円」「1回目の手術で治癒しない可能性もある」といって、失う危険性を訴えて私たちに加入を促します。
この記事の内容はアメリカの有名な心理学者 ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」の内容の一部抜粋と要約です。
現代のマーケティングで使われている手法が心理学の面から解き明かされ、たくさんの事例を交えてわかりやすい文章で記されています。
この本の内容を細かく知っているかどうかで、現代の市場に隠されているたくさんのワナにハマりカモになるのか、それを避けて利用する側に回れるのかが大きく分かれます。
気になった方は是非手に取って読んでみることをお勧めします。