人は何か結果があると原因を考えずにはいられない生き物です。なぜ起こったかがわからない空白状態を受け付けることができません。
結果として、無理やりにでも意味づけを行います。
例えば「地震が起こった原因は神様が怒ったからだ」と誰かが言い出したらそれは間違っていることが明らかです。
現在ではプレートと呼ばれる岩盤がズレることが原因で地震が発生することが解明されているからです。
ですが、世の中には明らかだと思えること以外にもまだまだ、無理やり原因を結び付けている例がたくさんあります。
ここではそういった人が陥りがちな原因と結果のワナを紹介しています。
まずは初歩的な明らかに間違った原因と結果の結び付けの事例です。
ある市では火事の発生件数を抑えるため、あらゆる数値の検証を行いました。その結果、出動する消防士の数が増えると、火事が大きくなることがわかりました。
そこで市長は消防士の採用をやめ、消防士の数を減らしました。
ですが、火事の件数は減りませんでした。
それもそのはずです。本質は火災の規模が大きいから、出動する隊員の数が増えていたのです。
これは間違った原因と結果の結び付けの最たる例です。
スコットランドの西にヘブリティーズ諸島という島々があります。
そこにいる住人はシラミを大切にしていました。
というのも、頭にシラミがいるときは健康なのに、病気になるとシラミがいなくなってしまうからです。
このため、住人は病気になると頭にシラミをまいていました。シラミをまいてしばらくすると病気が治りました。そしてシラミはそこに居続けました。
シラミの生態について詳しくないと関連性があるように聞こえてしまいますが、シラミは熱があるところには住まない性質があります。
このため、病気になって熱が出るとシラミはいなくなります。そして病気が治って熱が下がれがシラミはいつきます。
このことに気付けなかった人たちは間違った因果関係を結びつけ、年中頭がかゆいという不快な状態を続けていました。
結果を間違った原因と結びつける例に日本の景気と女性の履くスカートの丈があります。
ある学者が年度ごとに女性が履いているスカートの丈の長さを調べたところ、日本経済の景気と比例関係にあることがわかりました。
そこで「スカートの丈が短くなればなるほど、日本の景気が良くなる」と結論づけました。
これは偶然一致したものを無理やり関連性があると結び付けてしまった例です。
なお、スカートの丈ではなく、ハイヒールのヒールの高さが使われる場合もあります。
あるニュースの見出しで「社員のモチベーションが高いと利益があがる」という記事がありました。
これを見たあなたは「それはそうだろう」と思うでしょうか?
実はこれにも間違った因果関係が結び付けられている可能性があります。
企業の利益が上がっていてイケイケの時は社員のモチベーションが高いものです。つまり 「社員のモチベーションが高いと利益があった」わけではなく「企業の利益が高かったから、社員のモチベーションが上がった」のかもしれません。
ある健康保険組合は「長期にわたる入院は患者にとってよくない」という統計データを示して、健康であることの大切さを訴えました。
長く入院すればするほど、助かる可能性が減るということです。
ですが、これは当然のことで、病気やケガが軽い人はすぐに退院します。一方、重症や重病の人はより長く入院し続けざるを得ません。
これも間違った因果関係の結び付けです。
ある調査会社がiPhoneとAndroidのユーザーの学歴を調査したとします。その結果、iPhoneを使っている人たちの方が学歴が高いということがわかりました。
そこで「iPhoneを使えば頭がよくなる」という結論を出しました。
ですが、そもそもiPhoneはAndroidよりも価格が高く、モノによっては5倍以上の値段がします。
このため、iPhoneを買える人はAndroidを使っているひとよりも年収が高い傾向があります。年収の高さは学歴によるところが大きいので、結果としてiPhoneを使っている人は学歴が高いという結果になっただけかもしれません。
この場合「iPhoneを使えば頭がよくなる」は間違っていて、正解は「iPhoneは値段が高いので、高学歴で年収の高い人でないと買いにくい」になります。
ある出版会社の調査で「本がたくさんある家庭の子供は、本が少ない家庭の子供に比べて成績がいい」という結果が発表されたとします。
これを目にした、わが子に賢くなって欲しい親はこぞって本を買いあさり家に本を置くようにします。
ですが、これで子供の成績が上がるのでしょうか?
この調査結果も自分たちに都合がいいように間違った結論付けを行った結果です。
本質は次の2つです。
つまり、本が家にたくさんあるからといって子供の成績がよくなるわけではありません。
「コウノトリが赤ちゃんを運んでくる」という話を聞いたことがある人は多いと思います。
これには統計的な裏付けがあります。
なんと1985年から1980年におけるドイツでのコウノトリのペア(つがい)の減少数と出生率がぴったり一致したのです。
だからといって、コウノトリが赤ちゃんを運んでくるわけではありません。
このデータを見て「やっぱりコウノトリが赤ちゃんを運んできてるんだ」と思った人は騙されやすい人なので注意が必要です。
私たちの脳は空白の状態を嫌う性質があります。「わからない」「知らない」という状態を許容できないため、無理やりにでも結論付けようとします。
私たちのこの性質は「本来は間違っている結論がもっともらしく見える」というワナにはまりやすいことを示しています。
ぱっと見関連性がありそうなデータも「本当にそうか?」と疑うことが大切です。
世の中は人の性質を利用したウソで溢れかえっています。
この記事のスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。
人が陥りがちな思考の罠がとてもわかりやすくまとまっています。この記事の内容以外にも全部で52個の人の性質がわかりやすい具体例で解説されています。
この記事の内容でハッとした部分が一つでもあった方は是非手に取ってご覧になられることをお勧めします。
あなたの人生をより賢く豊かにしてくれることは間違いありません。