私たちは日々の生活を生きていますが、実は「今」を生きている人はごく僅かしかいません。
多くの人が「今」ではなく、「未来」や「過去」を生きています。
「今この瞬間」ではなく、未来を考えていたり、過去を考えています。目の前にあることを疎かにして、どこか別の次元にあるネットやスマホの中の情報に没頭しています。
ここでは、今を生きるとはどういうことか?と今を生きるにはどうすればいいかについて解説しています。
「今を生きる」という言葉はよく聞くありきたりな言葉でもあります。
言葉だけが独り歩きして、具体的にどういうことかイメージができない人も少なくありません。
「今この瞬間を生きる」がどういうことは、アメリカのラグビー界の名将である、ラリー・ゲルウィックス(Larry Gelwix)がわかりやすく語ってくれています。
ラリーは高校ラグビーの監督を務めた35年間で419勝10敗という驚異的な数値を残しています。
ラリーは選手たちに次のような言葉を伝えています。
今ここに集中しろ。明日の練習や来週の試合はどうでもいい。今何が重要かを考えろ。
練習中も試合中も選手が常に考えることは「今、何が重要か」です。
それは勝敗も、相手のプレイも気にしないということです。
自分たちの動きだけを意識し、今この瞬間だけに集中することです。
私たちは時計を基準にして生活しています。
時計の針やスマホの時刻、カレンダーを見て「何時までに学校や会社に行かなければいけない」「5年後にはこうなっていたい」「3年前のあの出来事が忘れられない」と考えます。
ですが本来、私たちの中には今しかありません。
私たちは未来にも過去にも触れることはできません。
行動を起こせるのは「今」だけです。
ですが、あまりに多くの人が「未来」や「過去」のことばかりに気を配り、「今」を生きていません。
「今」を生きているように見えても、「〇年後には」「いつかは」と言って未来ばかりを見たり、「あの時にああしておけば」「昔はよかったのに」といって過去ばかりを見ています。
心ここにあらずと言う言葉がありますが、多くの人が心ここにあらずの状態で、それが普通になっています。
過去や未来を考えることは自分の持っているエネルギーをここではないどこかに分散させているのと同じです。
「今」しか持っていない私たちにとって、持っているエネルギーを100%「今」に注げないことは致命的です。
最良の未来のためにできることは「今この時に集中すること」です。
そして、最良の過去は、最良の未来のために今この時に集中した結果自然にできるものです。
世界的に有名な禅僧のティック・ナット・ハンは次のように語っています。
生は今この瞬間にある。今この瞬間をないがしろにする人は、日々を十分に生きることができない。
過去や未来に捕らわれず、今に集中することは可能です。本来誰しもが持っていることです。
マルチタスクという言葉があるように、私たちは常日頃から複数のことを同時に行っています。
テレビを見ながら食事をして、スマホをいじりながら会話するなどです。
ですが、実際にやっていることは細切れに一つ一つに集中しているだけです。
私たちができることは「一つに集中する」ことだけです。
「今、この瞬間に生きる」ためには集中の対象を一つに絞り込む必要があります。
そのためには、「今、何が重要か」を考えて決める必要があります。
多くの人が陥っているのは「やることが多すぎて何からやっていいかわからない」です。
この状態で今を生きることはできません。
「今、何が重要か」を考えても答えが見つからない時や、「やることが多すぎて何からやっていいかわからない」時にすることは「考えることをやめる」ことです。
「わからない」という前提で考え続けても、答えは見つかりません。
考えるのをやめたら、深呼吸し心を落ち着けます。
あなたの頭の中には「今」「未来」「過去」がごちゃごちゃに入っています。頭の中に「今集中すべき一つの事」以外が入っている状態では一つのことに集中することができません。
まずは「やらなければ」や「やっておいた方がいい」と思うことを全て書き出します。
この作業はとても重要です。頭の中でごちゃごちゃし混乱を招いていたことを外に吐き出すことができます。
書き出した目的は「今集中すべき一つ」を見つけ出すことです。
書き出した項目に「今やるべきだ」と思う優先順位の番号を振り分けていきます。
あとは優先順位の高いものから一つづつやっていくことです。
終わったら線を引いて消していきます。
これだけで、あなたは「今、何が重要か?」という問いに答えを出し、行動までしたことになります。
何かやることがある時以外にも「今」に集中する方法はあります。
自分自身が「今この瞬間に集中した状態」をマインドフルネスと言います。
マインドフルネスとは過去にも未来にもとらわれず「今」に集中している状態です。
mindは心、fullは全て、nessは状態を表す名詞。つまり全ての心が今ここにある状態ということです。
マインドフルネスの一例として、仕事から帰ってきて家に入る前にドアの前で深呼吸する方法があります。
ドアの前で立ち止まり、目を閉じてゆっくりと息を吸う。
深く吸い込んだら、ゆっくりと吐き出す。
そのときに、頭の中にある仕事に関することを全て空気と一緒に吐き出します。
老子も次のように語っています。
仕事は存分に楽しめ。家に帰ったら家にいろ。
仕事をしている時は仕事を楽しむ。家にいるときは家にいることを楽しむ。
どんなときも今、目の前にあるやっていることを楽しむということです。
世界的に有名な禅僧のティック・ナット・ハンはマインドフルネスについて次のように述べています。
マインドフルネスの状態は、あなたを今ここに戻してくれます。今ここで自分の幸せを認識するとき、幸せはやってくるのです。
マインドフルネスの状態はお茶を飲む動作の中にもあります。
湯のみを持ち、息を深く吸い込むと、心が体に戻ってきて、あなたは今この時に落ち着きます。お茶もそこに在ります。
過去や未来をさ迷うことなく、思いや不安に惑うこともありません。
心を悩ませるものから解き放たれ、一杯のお茶を楽しむのです。
それが幸せのときであり、安らぎのときです。
私たちは過去と未来に思いを巡らせすぎています。
いつも、未来のためにやるべきことや、過去を清算するためにやるべきことを探しています。それが幸せにつながると信じて。
ですが、私たちに存在するのは「今」しかありません。
「今」やるべきことを選び取る。
むしろ、本当に幸せな人は、何かを探すことをせず「今」この瞬間の一つ一つの自分の動作や呼吸を感じ取りそこに幸せを見出しています。
あなたの心の全てが「今」に戻ってきて、日々幸せを積み重ねた人生を歩んでいくことを心より願っています。
この記事はAppleやGoogle、FacebookやTwitterなどの世界的に有名な企業でコンサルティング経験のあるグレッグ・マキューン(Greg・Mckeown)氏の「エッセンシャル思考」という本の一部要約と抜粋です。
世界的ベストセラーになったこの本には他にも人生を成功と幸せに導く格言がたくさん載っています。
興味を持たれた方は是非実際に手に取ってみることをお勧めします。