避妊をしたり、相手の病気が移らないよいうにするにはコンドームは必須です。正常時はほとんどの人がそのことを理解しています。
誰も変な病気をもらったりエイズで死にたくはないものです。
理性が強ければどんなに性的に興奮していても自分をコントロールすることは可能と考えている人はたくさんいます。
ですが私たちの思考は思っている以上にコントロール不能です。
ここでは男性が静的に興奮したときに、思考がどのような状態になるかについてまとめています。
アメリカの著名な行動経済学の教授 ダン・アリエリーは性欲により男性の思考(理性)がどれぐらい影響が出るかという面白い実験をしました。
実験対象は世界トップクラスの頭脳を持つカリフォルニア大学バークレー校(2021年世界大学ランキング4位(東大は73位))の学生たちです。賢さや理性の強さはお墨付きです。
実験の内容はとても簡単で、実験参加として報奨金を渡す代わりに、PCを渡して質問に答えてもらいます。
まずは何もない正常なとき、もう一つは魅力的な女性のヌード写真をいくつも見て興奮しているときです。ヌード写真の合間に急に質問が現れ、それにノーかイエスを0~100の割合で答えます。
どちらも質問の内容は同じです。
「女性のセックス歴がわからなければ、必ずコンドームを使いますか?」
「デートの相手にセックスを断られたとしても、セックスをしようとしますか?」
「50歳の女性とセックスをしているところを想像できますか?」
「嫌いな人とセックスを楽しめますか?」
「セックス中に相手をぶつのは興奮すると思いますか?」
などです。
普通の状態でこれらの質問に答えてもらったとき、ほとんどの学生が「女性のセックス歴がわからなければ、必ずコンドームを使いますか?」という質問に「はい」と答えました。
女性とセックスをするためなら、お酒を勧めたり、ノーと言われても押し通したり、薬を使うことはないと答えました。
みな道徳をよくわかっていて、自分自身の性癖を理解していると語りました。
これに対して興奮状態では驚くべき結果となりました。なんと、興奮しているときは、なんとしてでもセックスをしようとしたり、非道徳なことをしてもいいと考える人が急増しました。
どんなに道徳的なことを学んだり、叩き込まれていて、誠実で信頼でき、人柄が良い人でさえも、みな一様に理性の大半が消えてしまうということです。
性欲を満足させるためなら、病気や望まない妊娠などの危険を冒しかねません。
また実験の結果、理性がほとんどなくなってしまうことは、勉強して知識を得たり、経験を積めばどうにかなるという問題ではないことが明らかになりました。
この実験は、多くの男性が「自分が興奮したらどうなるのかを理解していない」ということを明らかにしました。
しかも世界トップクラスに頭がいい学生たちのほとんどが、自分の思考や行動をコントロールできなくなったのです。
通常大事だと思っている避妊や病気の予防、相手への警戒心や配慮、道徳心は、興奮状態になるとどこかへ行ってしまいました。
自分の脳が自分のものだとは思えないぐらいに豹変してしまうということです。
自分が性欲をコントロールできないことに「自分はだめなんだ」と落胆したり、自虐的になっている人がいますが、決してその人が悪いわけではありません。
性欲が全ての理性を吹っ飛ばしてしまうほど強いのには理由があります。
私たちヒトが最も長い時間を生きてきたのは過酷な狩猟採集の時代です。その時代がなんと500万年続いています。
私たちは500万年もの過酷な環境の中で子孫を繁栄させ今日まで生き延びてきた動物の子孫です。
私たちの脳の最大の目的は「子孫を繁栄させること」にプログラムされています。
狩猟採集の時代にセックスできるチャンスがあったときに「避妊しないと」「病気が移るかも」と言ってその機会を見送っていたら、その先の短い一生の中でまたチャンスが来るとは限りません。むしろその帰り道にマンモスなどの動物に襲われて死んでしまうかもしれません。
できるときに何を置いても最優先でヤルことが、ヒトが生き残っていくためには重要だったのです。
性的に興奮したときに感情にのっとられてしまうのは私たちがヒトである以上仕方ありません。
では、感情にのっとられないためにはどうすればいいのでしょうか?
次のようなことをやっても効果は低いです。
性的な興奮状態になったとき理性はなくなるので、思考してこうしようと思っていることはできません。
最良の方法は「性的に興奮させるものを意識的に避ける」です。
私たちの理性は性的に興奮する前ならきちんと機能します。理性が機能している状態のうちに、自分を興奮させうるリスクを避けるということです。
魅力的な女性が集まる場所にいかない。どうしても目に入る状況なら目を閉じる。エッチなものが目に入らないようにするなどです。
ダン・アリエリーの実験で行われた質問に対する、冷静なときと興奮状態の回答の結果は次のようになっています。
「女性のセックス歴がわからなければ、必ずコンドームを使いますか?」
「デートの相手にセックスを断られたとしても、セックスをしようとしますか?」
「50歳の女性とセックスをしているところを想像できますか?」
「嫌いな人とセックスを楽しめますか?」
「セックス中に相手をぶつのは興奮すると思いますか?」
質問 | 普通の状態 | 興奮状態 |
---|---|---|
女性のセックス歴がわからなければ、必ずコンドームを使いますか? | 88 | 69 |
コンドームはセックスの自然な流れを妨げると思いますか? | 58 | 73 |
デートの相手にセックスを断られたとしても、セックスをしようとしますか? | 20 | 45 |
女性とセックスするためなら、こっそりドラッグを飲ませますか? | 5 | 26 |
12歳の少女に性的魅力を感じますか? | 23 | 46 |
50歳の女性とセックスしているところを想像できますか? | 28 | 55 |
嫌いな人とのセックスを楽しめますか? | 53 | 77 |
セックス中に相手をぶつのは興奮すると思いますか? | 61 | 72 |
本の中では他にもたくさんの質問が記載されています。
性的な興奮状態の人の思考以外にも、人が犯しがちな勘違いや判断ミスがたくさん載っていて、むしろ、知らないとマズいぐらいです。
興味のある方はぜひ手に取ってみることをお勧めします。