「確率」と言う言葉を聞くと拒絶反応が出る人も少なくありません。そういう紛らわしくてめんどうなのは嫌と言う人がたくさんいます。
ですが、確率を計算することは私たち人間にとってとてつもなく強力な武器です。
ここでは、なぜ確率を計算する人が勝利するのかを人の性質から解説しています。
人にはある大きな欠点があります。それは「確率を直感的に理解できない」ということです。
それが悪いというわけではなく、人にはそういう性質があるということです。
1972年に人が確率をどのくらい理解できるのかを調べる実験が行われました。
実験の内容はとても簡単で、被験者を2つのグループに分けます。グループAには「あなたは電気ショックを受けます」と伝え、もう一方のグループBには「50%の確率で電気ショックを受けます」と伝えました。
そして、被験者が感じる不安を心拍数や発汗、緊張の度合いなどで検証しました。
結果は、どちらも同じだけの不安を抱えるというものでした。
つまり100%の確率で電気ショックを受ける人と、受けない可能性が半分ある人が感じる不安は変わらないということです。
なお、電気ショックを受ける確率を10%、5%にしても結果は同じものになりました。
確率がかなり低い5%も、確実に発生する100%も私たちに人にとっては同じだと感じてしまうということです。
これは、私たちは確率を直感的に理解できないことを示しています。
具体的に私たちが何%のリスクなら安全だと考えられるかと言うと、結論は0%です。
「リスクが全くない」という状態にならない限り私たちは不安に駆られます。
シカゴ大学が行った調査で有害物質が含まれている確率がたったの1%しかなくても、人々は恐れるという結果が出ています。
また他の実験では、99%の確率で電気ショックを回避できる場合、人は10ドル払います。残りの1%のリスクを回避するためにすら7ドル払うという結果が出ました。
1%の確率はほぼ起こることはありません。ですがそれでも人は恐れるということを示しています。
アメリカの国家運輸安全委員会 (NTSB) の行った調査によると、飛行機で死亡事故に遭遇する確率は0.0009%と言われています。
めったにないが、ごく稀に発生するということです。
この確率は事故がしばらく発生していない期間であろうが、事故が発生した直後であろうが変わりません。
にも関わらず多くの人が「飛行機が墜落しました」というニュースが流れた途端に恐怖を感じて飛行機をキャンセルします。
これは、飛行機に乗ることに全くリスクを感じていなかった人が、0.0009%の確率で発生した事故に感化され100%発生するのと同じ不安を抱いたために生じる行動です。
ペンシルベニア大学の心理学の名誉教授 ジョナサン・バロンが行った実験における被験者との会話で、人が確率を全く考えられないことが露呈しています。
被験者「私はシートベルトは不要だと思っています」
主催者「もしアクシデントが起こったらどうするんですか?」
被験者「アクシデントが発生しないことを祈ります」
主催者「シートベルトはつけるべきだと思いますか?それともつけなくていいと思いますか?」
被験者「正直に言うと、着用するべきだと思います」
主催者「なぜ、そう思うのですか?」
被験者「もしアクシデントが発生した場合に、被害を軽減できるからです」
主催者「もしアクシデントが発生したときにシートベルトに縛り付けられて脱出できなくなるリスクもありますよ」
被験者「それを考えると、シートベルトはつけない方がいいですね」
これは、被験者が自己が発生したときにシートベルトで助かる確率と、事故が発生したときにシートベルトに絡まってしまう確率を比較できていないことを表しています。
確率を無視して、シートベルトで助かることと、シートベルトに絡まることを同じレベルで考えているために起こる会話です。
こうして眺めると笑い話のようにも聞こえますが、私たちの日常のいたるところでも同じことは怒っています。
もし、1億分の1で10億円が当たる確率と、100万分の1で100万円が当たる確率の宝くじがあれば、あなたはどちらを買うでしょうか?
これは、ほとんどの人が10億円の宝くじを選びます。ですが確率論から考えるとより合理的な選択は100万円の宝くじを買う事です。
多くの人が確率を無視して「10億」と「100万」という金額だけを比較してしまうことを示しています。
私たちは1%のリスクがあっても不安を感じる性質があるため、リスク0の状態を過度に求めすぎる傾向があります。
例えば、あなたが建設会社で働いているとして次の2つのうちとるべき対策はどちらでしょうか?
このような選択肢があると多くの人が「0(ゼロ)」という数値を選択します。
ですが、実際に効果が大きいのは対策Aです。対策Aは4%下がるのに対し、対策Bは1%しか下がりません。
0(ゼロ)という数値過剰反応していると、時間とエネルギーばかりを費やし大きな効果を上げられない事態に陥ります。
私たちは確率を直感的に理解できないという大きな欠陥を持っています。そんな私たちにとって確率を計算することは、欠陥を補完する偉大な武器といえます。
とはいえ、確率を計算することはめんどうなことです。なぜなら私たちが直感的にできないことで、手間がかかるからです。
だからこそ、人の性質を理解して「確率を計算して行動に移す人が勝つ」世の中になっています。
この記事のスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。
人が陥りがちな思考の罠がとてもわかりやすくまとまっています。この記事の内容以外にも全部で52個の人の性質がわかりやすい具体例で解説されています。
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