ハロー効果とは、何かを評価するときにそれが持つ突出した特徴に引きずられて、間違った評価をくだしてしまう人の性質です。
ハローは英語でhaloと書きます。神様の頭にのっかっているピカピカ光るリングや、神様の後ろからパーと差し込む光のことです。
太陽や月を包み込むキラキラした神秘的な光もハローと呼ばれます。
例えばある子供が生まれた瞬間に嵐がおさまり、空の切れ目から光がさしてきてその子だけをパッと照らすと「この子は神の子に違いない」といってみんなが崇め奉ります。
その子の能力でないにも関わらず実際以上に過大評価してしまうのがハロー効果です。
ハロー効果はいいこと(ポジティブ)にも悪いこと(ネガティブ)にも表れます。前者をポジティブハロー、後者をネガティブハローと呼びます。
ハロー効果の例は挙げればきりがありません。
学校の成績がよくていい大学を卒業している人ほど仕事ができると勘違いされやすい傾向があります。
この勘違いはハロー効果によるものです。
例えば「東大を出ている」=「なんでも知っている、仕事もできる、順風満帆」というように突出した一つの特徴で他の関係ない物事まで評価してしまいます。
ですが現実は東大を出て仕事のできない人はたくさんいます。高学歴ワーキングプアーという用語まであるほどです。
この他にも「帰国子女=優秀」「英語ができる=優秀」など間違った評価はそこら中で見られます。
有名企業の社長と聞いただけで、自分よりもたくさんのことを知っていて経験豊富で、パフォーマンスや人脈作りに優れていると考えてしまう人がいます。
これは「有名企業の社長」という突出した条件から、他の関係ないことまで評価してしまった結果です。
ですが現実はそんなことはありません。
有名企業の社長でも、専門外のことは素人同然です。知らないことは知りません。パフォーマンスが派手ではなく、堅実で地味な社長もいます。
美人でモテる人は優秀で、仕事ができて、幸せな人生を送っていると思い込んでしまっている人がいます。
「美人」という突出した特徴から、他の関係ないことまで推測してしまった結果です。
ですが美人な人にも仕事のできない人や不幸な人がいます。美人なのにドラッグに溺れたり自殺してしまった有名人も少なくありません。
ハロー効果はポジティブなことだけでなくネガティブなことにも働きます。
最近はマシになってきたものの、依然として職場で「低学歴=仕事ができない」という考え方が蔓延しています。
ですが、高校すら出ていない有名企業の成功者もいます。
例えば高額納税者ランキングで12年連続10位以内を達成した斎藤一人さんの最終学歴は中卒です。
インターネットのクラウド提供や仮想通貨の取引を行うGMOインターネット株式会社の社長 熊谷正寿さんの最終学歴も中卒です。
それ以外にも、あまり有名でない大学を出ていても営業など優秀な成績を残している人は数えきれないほどいます。
日本人がよく犯しがちな勘違いに「黒人=危険」というものがあります。
日本で取りざたされるのがごく一部の黒人が犯した犯罪であるため、そこから勝手に誤解して「黒人=危険」と思い込んでいるものです。
他にも「中国人だから~」「韓国人だから~」「ベトナム人だから~」「ブラジル人だから~」というような思考をしている人はたくさんいます。
国籍や肌の色というたった一つの突出した特徴から、人格のようにまったく関係ないことまで評価してしまうのもハロー効果です。
ですが現実には、黒人や中国人にも優しくていい人がたくさんいます。
それとは逆に日本人にも犯罪に手を染めたり、人を欺こうとしている悪い人はたくさんいます。
ビジネスでもハロー効果は上手に活用されています。
コマーシャルを見ていると、ビールに詳しくないようなかわいらしい女性がおいしそうにビールを飲んでいたりします。
保険商品と全く関係がないイケメン俳優が保険商品を推してきます。
洋服の製法や材質に関する知識を持ち合わせないアスリートが洋服を進めてきたりします。
商品とその商品をPRしている人には全く関連性がありませんが、その人たちがかわいく、かっこよく、爽やかで、好感度が高いほど、商品にも同くらいいい印象を抱きます。
ある有名企業が新商品を出すと、その商品のことを調べもせずに「このメーカーなら大丈夫」と勝手に評価することがあります。
例えば、そのメーカーが専門とは全く関係のない商品を売り出したとしても「このメーカーなら大丈夫」と推測してしまいます。
人は事前に得た知識やその人の見た目から無意識に推測し評価してしまう生き物です。
良い悪いではなく、人とはそういう生き物ということです。
このため、ハロー効果による勝手な推測を防ぐためには、余計な事前知識を入れず評価したい対象だけをテストすることが大切です。
あるオーケストラの入団試験ではハロー効果による錯覚を防ぐために、試験を受ける人をカーテンの向こう側で演奏させて、意図的にその人の容姿が見えない工夫をしています。
こうすることで純粋に演奏の良し悪しのみを評価することが可能になります。
私たちは人なので、後からカーテンの向こうにいる人を見たときに「なんてキレイな人だ!」といって評価が上がったり「容姿がイマイチ」といって評価が下がることがありますが、それは演奏という本質の評価とは別に下されることになります。
ある企業ではハロー効果によって本当は技術がない人を過大評価することを防ぐために、初回面接を顔が見えない電話で行うようにしているところもあります。
電話で行うことで、電話のマナーや、相手の能力を容姿に左右されることなく判断することができます。
企業の評価であれば決算数値だけで判断しないことも重要です。
ITバブルの時代にシスコシステムズという企業は時価総額世界一位というとても高い評価を獲得していました。
その時の経済評論家の評価は次のようなものでした。
しかし、翌年に株価が80%下落する事態が発生したました。
すると経済評論家は次のような評価を下しました。
しかし、シスコシステムズは前年とこの年で、企業戦略や顧客対応、CEOなど何一つ変わっていません。
変わったのは株価だけです。
経済評論家が「株価」という突出した特徴だけに目がいって、関係のないことまで評価してしまったことを示しています。
この記事の内容はスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。
人が陥りがちな思考の罠がとてもわかりやすくまとまっています。この記事の内容以外にも全部で52個の人の性質がわかりやすい具体例で解説されています。
この記事の内容でハッとした部分が一つでもあった方は是非手に取ってご覧になられることをお勧めします。
あなたの人生をより賢く豊かにしてくれることは間違いありません。