私たちは生活の中で「いったん悪化してから良くなります」という言葉を頻繁に耳にします。
「良薬口に苦し」「失敗は成功のもと」「かわいい子には旅をさせろ」なども、いったん苦痛を味わうと飛躍的に良くなることを意味しています。
もちろんそれが真実である場合もありますが、そうでない場合もあります。
私たちの多くは「苦痛を味わっても改善しないこともある」という真実を見落としがちです。
ここでは「いったん悪化してから良くなる」というマジックワードの力と危険性について解説しています。
「いったん悪化してから良くなる」というのはものすごい力を秘めています。というのも、悪くなったとしても、良くなったとしても言ったとおりになるからです。
例えば成績が悪化している子を心配した親が家庭教師をつけたとします。その子の家庭教師になったときに「いったん悪化してから良くなる」と伝えれば長く契約することができます。
「全く新しいやり方をするので、最初は成績が下がる。でもその後は必ず回復するのでご安心ください」と一言付け加えておけば完璧です。
教え方が悪かったり、生徒のやる気が全くなければもちろん成績は下がります。これは家庭教師の言った通りです。
親は「本当だ先生の言った通りだ。」と考えます。
仮に、なんらかの拍子に成績が上がったとします。生徒の親に「思ったより早く成果が出ました」と伝えれば喜びます。
つまり、現状よりも悪化した場合は「予想通り」となり、現状から回復した場合は「ありがたがられる」わけです。
どちらに転んでも抜かりの無い強力な言葉です。
「いったん悪化してから良くなる」は言う側にとっては都合のいい重宝すべき言葉です。
ですが、言われる側は注意しなければいけません。なぜなら「いったん悪化してから良くなる」はほとんどの場合で当てはまり、一度受け入れてしまうとなかなか抜け出せないためです。
仮に、あなたの会社の業績が急激に悪化してきたとします。あなたは危機感を感じて経営コンサルタントに依頼しました。
経営コンサルタントは会社の情勢や競合などのデータをあれこれと調べ次のように言いました。
「あなたの会社は大変危機的な状況にあります。これを立て直すのはとても難しく時間がかかります。しばらくはこの状態が続くでしょう。でも安心してください。私が必ず何とかしてみせます」
あなたはこのコンサルタントを信じ任せることにしました。
最初の1年目は業績が悪化しました。これはコンサルタントの言った通りです。2年目も業績が悪化しました。もう暫く辛抱が必要なようです。これもコンサルタントの言った通りです。3年目も業績が悪化しました、、
このように「いったん悪化してから良くなる」は数年間よくならなくても良くなる可能性を秘めたままになります。
つまり、騙されていたり、やり方が間違っていても気づけないということです。
「いったん悪化してから良くなる」が真実なのか、それとも騙されているのか、やり方が間違っているのかを見破る方法はあります。
それは具体的にすることです。
いつまでにどこで誰が何をして、その結果いつまでにどこで何が起こるのかを明確にすることです。
このように具体的にやることと、目標地点を設定しておけばそのやり方が正しいかどうかを見破ることができます。
この記事の内容はスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。
人が陥りがちな思考の罠がとてもわかりやすくまとまっています。この記事の内容以外にも全部で52個の人の性質がわかりやすい具体例で解説されています。
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あなたの人生をより賢く豊かにしてくれることは間違いありません。