仕事の成果や売上を上げたり、時間や人が足りない状況を改善しようとしたときに、多くの人が「もっと努力する」「人員を増やす」といったいう考え方をします。
従業員が過労でダウンしたり、嫌気を指して辞めてしまったら「至急、人を募集しなければ」と考えます。
機械が故障していたら、故障した箇所を直します。体に痛いところが出たら、薬で痛いところだけを直そうとします。
ですが、これらの行動は応急処置でしかありません。また同じ問題が起こり、その問題が他に飛び火していきます。
そして、あなたの周りもあなたの心と体もつぎはぎだらけになっていきます。
手を抜いているわけではなく、時間とエネルギーを使っているのに、一向によくなっていかない状態です。
たくさんの努力で最小効果しか生まれていません。
ここでは、そういったネガティブスパイラルに陥らなず、最小限の努力で最大の効果を生む方法について解説しています。
最小限の努力で最大限の成果を手に入れるために、まずやるべきことは「考え方を変える」ことです。
次のような考え方をしている限り問題は解決しません。一時的には解決しているように見えても、長期的には増え続けています。
解決までに時間がかかりすぎて、他の新たな問題に対応しきれなくなっていきます。
このような考え方をしている人は、問題が起こるたび応急処置をしてつぎはぎだらけになっていきます。
機械を取り付けている土台が傾いているせいで、あるパーツに歪が出て壊れているのに、そのパーツだけを直す。
直す前に無理に使い続けただけ、他のパーツにも歪が出て、機械の内部はどんどんと劣化していく状態です。
1つ壊れたら直す。すると次に他のパーツが壊れる。水平な場所に機械を据え付けない限り問題は解決しません。
最小限の努力で最大限の成果を手に入れるための考え方は次のようになります。
場当たり的な思考の人たちが、何度も何度もメスを入れるのに対し、最小限の努力で最大の成果を生む人は、本当に必要なところに1度だけメスを入れます。
このように問題の根本的な原因になっている部分を「ボトルネック」と呼びます。
「生産性」という言葉を聞くと「より速くたくさんのことをこなすこと」「エラーや不具合なくとにかく大量に生産すること」だと考えている人がいます。
ですが、その考え方ではただ速く、たくさんこなすことが目的になってしまいます。
本当の生産性とは、「目標をいかに速く・最小限の努力で達成できたか」です。
「今月中に1000個の製品を作る」と言ったときに、自社で頑張ってエラーや不具合品がなく生産できればそれは生産性が高いと言えます。
ですが、自分たち以外でもできる作業を複数の企業に外注し、自分たちは届いたパーツを組むだけに専念すれば、より速く目標を達成できます。
特に、自分たちの企業が苦手としている部分を、得意な人たちに外注すればその効果は絶大です。
更には、その苦手なパーツを使わずに製品を組み立てられるようにすれば、より生産性は上がります。
このように、「生産性」という言葉を、より明確な「目標をいかに速く・最小限の努力で達成できたか」という言葉に置き換えれるだけでも、より本質的な改善につながります。
「生産性」と似た言葉で「生産的」という言葉があります。
「生産的」とは自分の目標に対して、何かを達成し近づいたということです。
「生産性」や「生産的」という言葉と「目標」は切っても切り離せない関係にあります。
ボトルネックとはビン(ボトル)の飲み口(ネック)のように細くなった部分です。ボトルネックのように細くなったところが1ヵ所でもあると、そこで全ての作業や流れが制限されてしまいます。
ボトルネックを見つけて改善する代表的な著書にベストセラーになった「ザ・ゴール」があります。
主人公の新城吾郎はある機械メーカーで工場長をしていました。工場は経営が悪化し赤字が続いており、3か月以内に立て直すことができなければ工場を閉鎖すると言い渡されました。
途方に暮れていた時、大学時代の恩師 ジョナ に会いました。
ジョナは「ボトルネックを探せばいい」とアドバイスし、ボトルネックを次のように説明しました。
ボトルネックとは、システム全体の足枷になっている部分のことだ。他のあらゆる部分の性能を高めても、ボトルネックが残っていたら全体の性能はほとんど上がらない。
吾郎はその意味がつかみきれない状態でした。
ある日、息子たちとボースカウトのハイキングに行くことになりました。吾郎は子供たちを日暮れまでにキャンプ場に連れて行かなければいけません。
ですが、早い子はどんどん先に行ってしまったり、遅い子が遅れて離れてしまい上手く進みません。
特に遅れている子はぽっちゃり体系の大地くんでした。先頭グループと大地くんの差は数kmにもなろうとしていました。
そこで吾郎は、先頭グループにいったん止まるように伝え、他のみんなが追い付くまで待ってから出発するという戦略をとりました。
一旦は全員が揃うのですが、結局また元通りになってしまいます。
そこで吾郎は思い切って、大地くんを先頭に並ばせ、一番早い子を一番後ろに並ばせるようにしました。
すると、列がバラバラにならなくなりました。しかし、大地くんが先頭なので全体のペースは遅いままです。
吾郎が大地くんのリュックの中身を確認すると、そこには水や食料など他の子たちよりもたくさんのものが入っていました。
大きな重りを背負っているのと同じで大地くんが遅くなるわけです。
そこで、吾郎は大地くんのリュックの中身を、他の子たちに少しずつ分けて、大地くんのリュックを軽くしました。
すると、大地くんのスピードが上がり、全体のスピードも速くなり、予定通り日暮れ前にキャンプ場につくことができました。
これが工場の生産性改善の大きなヒントになりました。
吾郎は工場のラインにおける大地くんを見つけ出し、その機械の処理速度を改善しました。
すると、その後に続く機械が処理できる数も向上し、工場全体の生産性が改善しました。
吾郎は工場の生産性が遅いからといって、最新機器を導入したわけでも、ありとあらゆる機械の性能を向上させたわけでもありません。
やったことは、たった一つのボトルネックとなっている機械を見つけ出し、その速度を上げただけです。
手当たり次第にメスを入れたのではなく、一度だけメスを入れて最大の効果を生み出しています。
考え方が「ボトルネックを見つける(目の前の症状に惑わされず、どこが本当の問題か見極めようとする)」に変わったら、実際にやるべき行動は次の5つです。
まずやることは、あれこれ悩んだり場当たり的に対応するといった成果を生まない努力をやめることです。
ボトルネックを特定し・取り除くための時間とエネルギーを作り出す必要があります。
今やっていることに何かを新しく追加するのでは余裕がなくなっていくばかりです。まずは空白を作り出します。
ボトルネックを取り除く目的は生産性を上げることです。
「生産性」とは「目標をいかに速く・最小限の努力で達成できたか」です。
ボトルネックを見つけるためにも、生産性をあげるためにも必要なのは「目標を明確にする」ことです。
目標が明確でない場合、ボトルネックが見つかりません。見つかったとしても間違っている可能性が高くなります。
時間とエネルギーに余裕ができ、目標が明確になったら、立ち止まって
「この目標を達成するうえで、邪魔になっている(なる)ものは何か?」をリストアップします。
疲れている、寝不足、情報が足りない、完璧主義などなんでも構いません。とにかく、目標達成を妨げていると感じたものを全て書き出します。
邪魔なことを書き出したら、それに優先順位付けを行います。優先順位付けで重要なのは考え方です。
次のような基準で優先順位をつけていきます。
取り除けば他の問題も解決するような、大きな障害は何か?
これがボトルネックの特定につながります。
目標達成を邪魔しているものの中からボトルネックを探し出すとき注意するべきことがあります。
それは、一般的にいいと言われていることや、自分自身が「こうあるべきだ」と思い込んでいることがボトルネックになっている可能性があるということです。
例えば「金曜日の14時までにプレゼン資料のたたき台を提出する」という目標があったとき、「デザインに凝る」「ぴったりでおしゃれな写真を探してくる」といった、資料をより美しく・カッコよく見せようとする行為がボトルネックになります。
ボトルネックの特定ができたら、それを取り除く必要があります。
完璧主義など自分自身に問題がある場合は、考え方を変えて行動を変える必要があります。
「いつでも完璧にキレイに終わらせることが大事」→「目標はたたき台をつくることだから、箇条書きで書く。キレイさよりもスピードが大事」
目標達成を妨げる原因が自分にあるとは限りません。
難癖をつけたがる上司、予算の承認をしてくれない経理、すぐに着が変わる顧客である場合があります。
そういう人に対しては「鞭より飴」が大切です。
厳しく対応してくる人を非難したところで「あなたには絶対に許可しない!」と態度を硬化させるだけです。
そうではなく、低姿勢で相手の力になりたいという姿勢を見せます。
例えば、進捗をメールで尋ねるかわりに、直接会いに行って手伝えることが無いか聞いてみる。などです。
そうすると、直接メールを送り付けて最速するよりも、ずっと前向きな回答を得やすくなります。
あなたの目標達成を妨げている根本の原因であるボトルネックを取り除くことは、実はそれほど難しいことではありません。
ボトルネックを取り除くことが「最小限の努力で最大の成果を生む」ことであるように、小さなことをするだけで、とても大きな結果が得られるからです。
何十時間や何年間をかけたり、大量の人員やお金を投入する必要はありません。
山の頂上にある石を転がすのと同じで、最初の一押しさえすれば、あとは自然に上手く回り出す。
この記事はAppleやGoogle、FacebookやTwitterなどの世界的に有名な企業でコンサルティング経験のあるグレッグ・マキューン(Greg・Mckeown)氏の「エッセンシャル思考」という本の一部要約と抜粋です。
世界的ベストセラーになったこの本には他にも人生を成功と幸せに導く格言がたくさん載っています。
興味を持たれた方は是非実際に手に取ってみることをお勧めします。