人は確率を直感的に意識できない生き物です。
実験の結果、リスクが50%ある場合でも、100%のときと同じだけの恐怖や不安を感じることがわかっています。
これと似た性質に、確率を考えているようで、実は考えられていないという心理があります。
例えばコイン投げで表と裏が出る確率は1/2です。このことは誰もが知っています。
コインに細工がされていたり、超人的な動体視力を持つ人が意識的に操作しない限り、常に1/2です。
「表だけでなく、裏が出る確率も平等にある」と考えている人は確率を知っている人です。
では、コイン投げで「表が連続10回出た後に出るのは、表と裏どちらでしょうか?」、5000円を賭ける(あなたが当たれば1万円貰える。外れれば5000円失う)場合、どちらに賭けますか?
このように質問すると、多くの人は「裏」に賭けます。
理由は簡単で「表が10回も続くことはレアすぎるから、次は裏に違いない」と思うわけです。
ですが、コインは「前回、表だったから、今回は裏にしよう」と考えて自分の向きを決めているわけではありません。
以前に表と裏のどちらがでたかは、今回のコイン投げでは一切関係ありません。
今回のコイン投げで表が出る確率は50%、裏が出る確率は50%のままです。
あなたの予想が当たればそれは運がよかったということです。
11回表が続くごくレアな場合に賭けて「表」と答えようが、1/2の確率だから「表」と答えようが、本質的には違いはありません。
ですが、前者の方が思い入れが強くなりすぎる傾向があります。
宝くじも同じです。過去にどの数字が出たかを何年間にわたって調査し、これまでに出ていない数字、あるいは何度も出ている数字を選んだとしても、そこに繋がりはありません。
今回の数字は前回数字を選んだときの影響を受けません。
あなたの予想した数字が何十時間にも及ぶ計算で算出しようが、1秒考えて適当に言った数字であろうが違いはありません。
イタリアとフランスの国境近くにモナコという人口3万人程度の非常に小さい国があります。モナコのモンテカルロはカジノで有名な場所です。
1913年にそのモンテカルロのあるカジノで奇跡的な出来事が起こりました。
それは「ルーレットで20回連続で黒が出た」という出来事です。
多くのギャンブラーが「こんなチャンスはめったにない!次に出るのは赤だ!」と考え赤に大金を賭けました。
しかし、21回目も黒が出ました。「次こそは赤に違いない!」と言ってさらに赤に賭ける人が続出しました。
しかし、22回目も黒でした。結局、26回連続で黒が出ました。27回目に赤を賭けた人だけが大儲けできたわけです。
ですが、そこに行きつくまでに既に多くのギャンブラーが大金を失っていました。
これは、ルーレットの結果が黒になるか赤になるかは、前回の結果の影響を一切受けないのに、関連性があると勘違いしてしまったために起こった失敗です。
モンテカルロのギャンブルの例があまりにも有名なため、人が関連性がないことを関連性があると勘違いしてしまう性質のことを「ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)」と言います。
もちろんコイン投げや宝くじとは違い、今回の結果が前回の影響を受けるものはたくさんあります。
むしろ、人は何かの影響を受けるものなので、人が絡む社会では影響を受ける方が多くあります。
重要なことは「関係性があるかを見極める」ことです。
関係性があるものを「関係性はない」と判断したら大きなチャンスを逃します。関係性がないものに「関係性がある」と判断すると大きな損失を被ります。
この記事のスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。
人が陥りがちな思考の罠がとてもわかりやすくまとまっています。この記事の内容以外にも全部で52個の人の性質がわかりやすい具体例で解説されています。
この記事の内容でハッとした部分が一つでもあった方は是非手に取ってご覧になられることをお勧めします。
あなたの人生をより賢く豊かにしてくれることは間違いありません。