私たちが何かを覚えるとき「失敗」はとても強い効果を発揮します。
HONDAの創業者である本田宗一郎の「成功は99%の失敗に支えられた1%」という言葉や、エジソンの「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」という言葉は有名です。
実際、私たちは失敗して気づき反省して新しい学びを得ます。
ですが、昨今では学校のテストの採点方式や業務の細分化により失敗が悪とされ、失敗できる環境が減っています。
ここではそんな環境下においても成長していく方法について解説しています。
失敗を介さずに成長する方法として「経験学習」があります。
経験学習とは、自分が経験したことを振り返りそこから仮説を立て新たに実験(挑戦)をすることで学びを得る方法です。
アメリカの教育理論化 デビッドA.コルブが提唱した言葉で、英語では「Experimental Learning」呼びます。
失敗だけでなく、成功や何気ない行動など「あらゆる行動から学びを得るプロセス」です。
経験学習のプロセスは次の4つのステップから成り立ちます。
まずは「経験」があり、その経験を「振り返り」ます。振り返りで気付いたことを「抽象化し仮説を立てます」。そして、その仮説を元に行動を考え検証します。
そしてそこで得た「経験」を「振り返り」、「抽象化(仮説を立てる)し」、「検証」するというループをくるくる回していきます。
この4つのフローの中で一番重要なのは「振り返り」です。振り返らない事には何も始まりません。
日本資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一の名著「論語とそろばん」の中で「夜寝る前に1日の出来事を振り返る」っていたと言っています。
何気ない日常や業務を振り返って「気づき」を探します。
端から見たり、結果として失敗とはなっていなくても「もっと良くできないか?」「あの対応が最善だったか?」と考えます。
上手くいったのであれば「なぜ上手くいったのか?」を考えます。
「気づき」が見つかったら、そこから仮説を立てます。
例えば、「熱心に売ろうとしなかったのに売れた」という成功体験があった場合に、「もしかして、素直に他社に負けている部分を認めたのがよかった?」という気づきがあったとします。
そこから「なんでもできると言うより、できないことを素直に伝えた方が信頼が獲得できて契約につながりやすい」という仮説を立てます。
仮説を立てたら、具体的にどうやって検証するかを考えます。
例えば、「なんでもできると言うより、できないことを素直に伝えた方が信頼が獲得できて契約につながりやすい」という仮説を立てた場合、検証項目として次を考えます。
そして実際に試します。これが検証です。
検証した結果、新たな経験が生まれます。
この経験に対して、自分の立てた仮説が正しかったのか?新たな気づきはないか?という「振り返り」につなげます。
そして、「抽象化(仮説)」→「検証」→「経験」→「振り返り」というループをグルグルと回します。
米国でリーダーシップを研究している調査会社のロミンガー社が行った調査に「ビジネス界で成功しているリーダーが何によって学びを得ているか」を調べたものがあります。
この結果「70:20:10の法則」が提唱されました。
これは、学びが「70%が経験」「20%が上司からのアドバイス」「10%が研修や書籍」で構成される内容です。
つまり、経験をベースにして学びを得る「体験学習」はかなり実績のある学習方法といえます。
なお、この調査結果には注意点があります。それは経験がほとんどで、研修や書籍は意味ないということではありません。
業務のほとんどが実務に当てれていて、研修や書籍から学ぶ時間がないという逆説的な意味合いも含んでいます。
ただ、経験から学びを得て成功につなげることは十分に可能であることが証明された結果でもあるので、本や研修を上手に活用することで、更なる飛躍的な学びにつながる可能性を秘めています。
ただ慌ただしく毎日を過ごして、業務時間が終わったら「終わりー」と言って何も考えないのでは、せっかくの貴重な経験が無駄になってしまいます。
毎日「時間がない」「忙しい」と感じるのは改善がなく同じ日々を繰り返していることも原因の一つです。
そうではなく、寝る前に1日を振り返るなど、貴重な経験を学びにつなげれば、短い時間で大きな効果を得ることができます。