インターネットが当たり前になり、誰もがスマホやPCを手にしている現代では、私たちは情報の洪水の中にいます。
ひとたび情報の洪水に飲まれてしまうと時間とエネルギーが無くなっていきます。
こんな時代の中で成功と幸せを手に入れるには、たくさんの情報の中から本質をつかみ取る洞察力が必要不可欠となります。
ここでは、物事の本質をつかみ取る洞察力の付け方について解説しています。
そもそも、洞察力とは本質を見抜く力のことです。本質とはそのものが持っている本来の姿です。
洞察力が求められる職業は探偵やジャーナリストが代表的です。一流の探偵やジャーナリストは、たくさんの些細な情報の中から本当に重要な事実を見つけ出します。
例えば、徳川家康の時代に質のいい小判を作るため、金の彫り師の後藤徳乗に仕事を任せました。
後藤氏には橋本庄三郎という腕利きの職人がいました。しかし、橋本庄三郎は後藤家でただの使用人としていいように使われていました。
ある時、後藤氏から橋本庄三郎が仕事を引き継いだ時、徳川家康が訪れたことがありました。そして橋本庄三郎の作った小判を見て「いい仕事だ」と褒めました。
これに対して橋本庄三郎は「めっそうもございません。私などまだまだ未熟です」と謙遜しました。
これに対して家康は「嘘をつくな。後藤ではなく俺に任せればもっといいモノを作ってみせるとずっと思っていたのであろう」と言いました。
これに対して橋本庄三郎は内心「バレたか。。」と思い、正直に「その通りです」と言いました。
相手が発した言葉ではなく、相手の立場や性格から、相手が考えている本来の姿(本質)を見抜きました。
優れたジャーナリストはあらゆる事実に隠れている本質を見つけ出す人です。
情報の断片を調べ、関係性を見つけ出し、バラバラの情報から全体像を作り上げ、誰もが瞬間的に理解できる意味付けを行います。
単に誰かが言った言葉の一部を引用するだけなら誰にでもできます。そうではなく、ジャーナリストの仕事はそういった言葉から本質を見抜くことです。
本質を見るためには細部に目を配るのではなく、物事の全体を見渡すことが必要です。
些細な情報に目や思考が行き過ぎると、大事なポイントを見失います。
「全体を俯瞰してみることが重要」と言われればその通りだと思いますが、実際はできていない人がほとんどです。
その結果、重大な欠陥を引き起こしています。
1972年にアメリカのイースタン航空401便が100名以上の死者を出す大事故を起こしました。その原因は些細なことに気を取られ、大局を見失ったことが原因でした。
飛行機が目的地のマイアミ航空に着陸しようとしたとき、前輪が下りたことを示す表示灯が点灯しない事態が発生しました。
単純にランプの球が切れただけでした。ですが、操縦士の皆がランプ交換に気をとられたため、自動操縦の高度保持機能が解除されていることに気付かず、飛行機は高度を下げ墜落事故を起こしました。
球切れのランプという些細なことに気を取られたせいで、高度保持機能や着陸というより重要なことから意識が逸れたことが原因です。
ここまでの大事故にならずとも、私たちは日常で同じような重大な欠陥を繰り返しています。
多くの人が「忙しすぎる」「幸せでない」と感じながら、毎日を仕事・子育て・家事などに追われ過ごしています。
ですが、本来時間をかけるべきは「余裕を持つにはどうすべきか?」「幸せになるために何をすべきか」という自分自身の本質を見抜くことです。
にもかかわらず、些細な電話やメールの返信、皿洗いや掃除といったどうでもいいことに気を取られて、本当に大事なことから注意が逸れています。
洞察力があり物事の本質を見抜ける人は「全ての情報に注意を向けることは不可能」だと知っています。
このため誰かが喋るたくさんの情報や、舞い込んでくるたくさんのニュース全てにいちいち反応しようとはしません。
耳を傾け目で見ることはします。あらゆる情報に反応するのではなく、本質を読み解くことに神経を使い、本質に近づいたと思ったところで反応をして掘り下げます。
時には相手が言っていることではなく、言っていない事に神経を集中させることもあります。
一方、普通の人はあらゆる情報に耳を傾けます。そして、いつも何かを言う準備をしています。
無関係な些細な情報にこだわってしまったり、声の大きな人の意見や目立つ情報に気を取られ意味を取り違えます。
洞察力を身に付けるために重要な4つのがあります。
日記をつけることのメリットは大局が見れることです。
人は忘れやすい生き物です。せっかく体験したことも片っ端から忘れていきます。毎日たくさんのことをこなし、あれこれと考えているにも関わらずです。
例えば、先々週の水曜日の昼食が何だったか、先々週の木曜日にどんなミーティングに出席していたかを覚えている人はほぼいません。
自分の記憶力に頼っている限り大局を見ることはできません。
ですが、日記をつけ2~3か月に一度読み返すと簡単に大局を把握することができます。
日々の小さな変化は感じにくいものですが、数か月単位で見ると大きな違いに気付くことができます。
日記をつけるときのポイントは書きすぎないことです。初日に張り切って書きすぎれば、2日目は気が重くなり、3日目には投げ出してしまいます。
日記を継続するには、情報量を減らし要点だけを書くことが必要です。
特に、マッキンゼーに努める赤羽雄二さんの「ゼロ秒思考」がおすすめです。
タイトルを15文字以内で書き、その横に「yyyy-mm-dd」の形で日付を書く。そしてその下に、気になった要点や感じたことだけを3行以内で書く。
書いた後はクリアファイルに入れていく。そして半年に一度ザっと見返す。これだけで、あなたの人生で起こっている出来事の流れ(大局)を簡単につかむことができます。
本質を見抜くには「自分の足で現場を見る」ことが大切です。
スタンフォード大学で行われた保育器のプロジェクトで、1台200万円以上する保育器の値段を2万円以下まで下げるというものがありました。
この地球では毎年400万人もの未熟児が、安定した体温を保つことができず生後28日以内に亡くなっているためです。
プロジェクトチームが実際にネパールに足を運んでみると新生児の8割が病院ではなく、自宅で生まれているという事実がわかりました。
ネパールの村には電気が通っていないため保育器の価格をいくら安くしたところで状況は改善しないことがわかりました。
現地を視察したことで、プロジェクトの目的は価格を下げることではなく、電気を必要としない保育器を開発することに変わりました。
現地に足を運んで自分で調べ尽くすことは、与えられた情報では決して得られない本質に近い情報を得ることができます。
本質を見抜くためには大局を掴むことが必要です。大局を掴むにはその話題に関する知識をつけることが欠かせません。
関連する情報をどん欲に得て、そこから大きなストーリーを組み立てる。そして、そのストーリーの中から普通ではない部分を見抜くことが本質を見抜くことです。
このためには、組み立てたストーリーを別の視点で見るというテクニックが必要になります。自分の主観ではなく、他の人の立場に立って見てみると事態の新たな側面を見ることができます。
多方面から見た結果、どの方面から見ても成り立つ事実こそが本質になります。
本質を見抜くために最も重要なことは「今何が問題なのかを明確にすること」です。
例えば、会社の方向性を決める重要な会議で、時間をとって重要な人たちが集まったとしても、それぞれが思いついたことをただ話しているのでは、話は前に進みません。
ある人は問題Aについて、他の人は問題Bについて話していたら「そんなことよりも、こっちの方が重要」「そっちを優先したらこっちができなくなる」となって衝突が発生します。
無駄な衝突を回避して建設的に議論をするためには「そもそも今、何の問題を考えているのか?」を明確にして、全員が共通認識を持って話を進める必要があります。
本質を見抜ける人と一般人の思考には次のような違いがあります。
本質を見抜ける人 | 一般人 |
---|---|
いちいち反応せずノイズの中の要点を探す | 声の大きな意見に反応する |
何を言っていないかに耳を傾ける | 話の全てを聞こうとする |
大局を見る | 些細な情報に注意を向ける |
情報の本質をつかみ取る | 情報の渦に飲み込まれる |
本質を見るためには「全ての情報に注意を向けることは不可能」であることを理解し「準備する」ことが必要です。
そもそも今何の問題を考えているのか?を明確にし、関連する知識をどん欲に得て、現場を見て、些細な情報に気を取られず、大局を把握する。
そして、自分以外の他の人の立場に立って違う側面からストーリーを眺めてみる、そうすれば自ずと本質は見えてきます。