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【変わったのは環境】ヒトの脳と体は何万年も前から変わっていない(現代社会にどう適応すべきか?)

私たちは生きている中でたくさんの判断ミスを犯しています。

合理的でない行動をし、余計な手間を発生させ時間とエネルギーを消費したり、他人と揉め事になって精神を摩耗したり、投資やギャンブルに賭けて大金を失ったり、誰もがミスを積み重ねています。

ニュースを見れば誰かがつるし上げられたり、謝罪しているものを簡単に見つけることができます。

美味しい食品や甘いモノを食べ過ぎて糖尿病やガンになったり、体に良いことが無いことが証明されているお酒やタバコで自分自身の身体にダメージを与え続けている人もいます。

仕事や学業で成果を出すために睡眠時間を削った結果、精神障害を患う人もいます。

なぜ私たちはこれほどまでにミスを犯すのでしょうか?頭が悪いからからでしょうか?

いえ、有名大学を卒業した世界の本の数%足らずの賢い人たちですらミスを犯します。

実はその原因は頭の良さではなく、もっと別のところにあります。

この記事では私たちヒトがなぜミスばかり起こしてしまうのかについて解説しています。

変わったのは環境。ヒトは変わっていない。

結論から言うと「私たちヒトの脳や体は変わっていないのに、環境が激変してしまったから」です。

私たちの思考や行動にミスがあるのではなく、そもそも私たちの思考や行動の性質に現代の環境が合っていないのです。


ヒトの歴史

人類の祖先が誕生したのは約500年前、人の祖先であるホモ属が誕生したのは約200年前、そして直接的な祖先であるホモサピエンスが誕生したのは約20万年前だと言われています。

1万2千年前までの約500万年は狩猟採集の時代でした。

1万2千年前にようやく世界の一部で農耕や牧畜、稲作が始まりました。

そして約200年前に産業革命が起き、20年前にインターネットが普及し始めました。

狩猟採集時代に比べると、産業革命が起こってからの期間が人類史の0.004%、インターネットが普及してからはたったの0.0004%にすぎません。

つまり、私たちヒトにとっての歴史は99.996%(ほぼ100%)は狩猟採集時代です。

マンモスなどの野生動物を追いかけて、電気がない中で太陽光や月の明かりで暮らしていたのです。

狩猟採集時代という今とは比較にならないほど過酷な環境を生き延びてきたのがヒトで、私たちはその子孫ということです

point

私たちの脳や体は狩猟採集時代に適合するようにできている。


5万年前のヒトを連れてくる

仮にタイムマシンで5万年前に行って、ヒトを連れて現代社会に帰ってきたとします。

そのヒトの髪型や爪をきれいに整え、現代の洋服を着せれば、私たちとなんら変わらなくなります

もちろん、言語を覚えたり、食料や車など新しいモノを知り覚えることは必要ですが、それは私たちが赤ちゃんの頃から少しづつ学んできたことなので、同じように学べば習得できます。

同じくように私たちが5万年前に行ったとしても現地人と同じ格好をして、石器の使い方や火の起こし方、コミュニケーションの方法を覚えれば、ヒトとして生活できることでしょう。

point

私たちヒトの仕組みは変わっていない。変わったのは環境




日本人は逃げ回った臆病者の子孫

ヒトの歴史という観点でみると「日本人は逃げ回った臆病者の子孫」といえます。

そもそも、私たちヒトは動物が逃げているのを見たら、何も考えずに一緒に逃げるようにプログラムされています。

狩猟採集時代はそれが最善策で、早く逃げた動物が生存確率を上げれました。

つまり、ヒトは逃げ回っている動物の後をおいかけて逃げ回っていた動物です。

その中でも日本人は大陸での暮らしになじめず、わざわざ海を渡って島国に移り住んだ人たちです。

つまり、馴染むのが苦手で逃げた臆病な人たちこそが私たち日本人の祖先ということです。

ちなみにですが「逃げる」や「臆病」は悪いことではありません。ヒトは「逃げて」「臆病」だったからこそ、何万年間もの間生き延び続けることができたのです。

ヒトよりも攻撃的で肉食で体が大きい動物たちの多くは絶滅しています。


必要な思考の違い

狩猟採集時代と現代では成果を生み出すための「思考方法」が全く異なります。具体的には「直感的な思考」と「意識的な思考」という違いです。

直感的な思考

狩猟採集時代に重要だったのは「直感的な思考」です。

食料を見つけたらすぐに手に入れる。危険な動物を目にしたらサッと逃げる。

仲間や動物が走って逃げているのを目にしたら何も考えずに一目散に逃げるのが生存するために重要でした。

「いったい何が起こっているんだろう?」と考え立ち止まっていたら、すぐにやれれて死んでしまいます。

そういった意識的に思考する人たちは生存競争の過程で死んでしまい子孫を残せません。

本能や過去の体験からパッと思考することが生き延びるためにとても重要だったということです。

私たちはそういった短絡的で直感的な思考が得意だった動物の子孫ということです。

point

狩猟採集時代に重要なのは「直感的な思考」だった。


意識的な思考

一方、産業革命が起こりインターネットが発展し、資本主義で回る現代社会では「直感的な思考」よりも、立ち止まって考える「意識的な思考」が重要性になっています。

なぜなら企業や政府などあらゆる人たちが、私たちの「直感的な思考」を上手に活用したワナを張り巡らしているからです。

「欲しい」→「買う」、「目の前の食糧」→「食べる」という直感的な思考をしていたら、たちまちお金や健康を失っていきます

「株価が上がっているからできる限り買った方がいい」「土地の価格が上がっているから買った方がいい」という言葉を聞いて、大損を被った人たちは数えきれません。

「牛乳には牛の絵が描かれているから、牛の絵が描かれたパッケージは全て牛乳だ」という直感的な考えをしていると間違いだらけになります。

そして間違った考えをベースに行動すれば、間違った結果ばかりが起こります。しかも本人はそれに気づかないことがほとんどです。

point

現代社会で賢く生きるために必要なのは「意識的な思考」


直感的な思考の目的は「子孫繁栄」

私たちの本能である「直感的な思考」が何を目的としているかといえば、それは「子孫繁栄」です。

いかに生き残り、体にエネルギーを蓄え、子孫を残すかという目的のために思考が働きます

現代社会で重要な「本質は何か?」「未来に利益が出る選択は何か?」という目的が考慮されることはありません。

現代社会で豊かに幸せに暮らすためには直感ばかりに任せていてはダメで、自ら意図的に思考しなければいけないといことです。


「意図的な思考」の問題点

「意図的な思考」には大きな問題があります。それは、考えることで時間と多量のエネルギーを消費するということです。

このため、何かあるたびに立ち止まって考えていては、時間とエネルギーばかりが消耗していきます。

あれこれと不安なことばかりを考えている人は、そのことで時間とエネルギーを消耗し、決してし幸せになることはありません。

一方、「直感的な思考」はエネルギーを消費しないので非常に楽で早いです。思考の結果導き出された行動が間違っていなければ「直感的な思考」は優れものです。



現代社会で賢く生きるにはどうすべきか?

「意識的な思考」が重要だけどそればかりではダメ。となると、どのように生きるのが賢い生き方なのでしょうか?

それは「直感的な思考のクセ」を理解することです。ただし、どれだけ詳細に理解したとしても判断ミスを防げるわけではありません。失敗は必ず発生します。

そうではなく、間違っても大して問題にならないときは「直感的な思考」を使い、間違うと大きな損失を被るかもしれない場合は「意識的な思考」を使うことです。

例えば、今日家族で出かける場所をどこにするか、レストランはどこにするか、ルートはどうするか、時間配分はどうするかと入念に調べ上げてギチギチに決めないということです。

直感に任せて判断をミスったところで、大した損失にはなりません。

車を買う時にHONDAにするかTOYOTAにするかも直感に任せて問題ありません。どちらも問題なく動き、車としての機能を十分に果たします。

パートナーを選ぶ時も同じです。100%自分の理想に合う人は存在しません。みんなどこかが優れどこかが劣っています。100%を探していては永遠に結婚することはできません。結婚したとしてもその相手に満足し幸せを感じることもできません。「直感的な思考」に頼り、人は幸福を生み出せるという人間の性質を上手に使った方が幸せになれます。

「意識的な思考」が必要なときは大きな損失を被るかもしれないときです。大金をかけるとき、それが正しい判断なのか?リスクは少ないのか?を考慮する必要があります

そういったときは陥りやすい思考のワナを網羅したチェックリスを使うなど、直感に頼らない工夫をし、意識的に考えることを徹底することが重要です。


参考

この記事の内容はスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。

人が陥りがちな思考の罠がとてもわかりやすくまとまっています。この記事の内容以外にも全部で52個の人の性質がわかりやすい具体例で解説されています。

この記事の内容でハッとした部分が一つでもあった方は是非手に取ってご覧になられることをお勧めします。

あなたの人生をより賢く豊かにしてくれることは間違いありません。



yuta