確証バイアスとは人が持つ性質の一つで「自分が正しいと思うことを裏付ける情報ばかり集める」ことです。
これは、自分の考えを否定する情報は無視することと同じです。
家庭の財布の権利をパートナーが持っているとします。あなたが何か欲しいモノがあるときはパートナーにお願いするしかありません。
そのときあなたは、その商品に関するいい情報を集めてパートナーに伝えます。
それを手にしたことにより発生するマイナス要因は決して目を向けません。無意識的あるいは意図的に無視します。
結果として自分にとって都合のいい情報ばかりを集めて理論武装して、自分自身でも「これが一番いい」「今の私にはこれが必要」と思い込みます。
これが確証バイアスです。
自分の考えを否定することが好きな人はいません。自分の考えを否定ばかりしていたらうつ病など精神的におかしくなってしまいます。このため、確証バイアスは誰もが持っている性質でもあります。しかし、その反面、大きな危険をはらんでいます。
確証バイアスはマーケティングでもよく使われます。
例えば「奇跡の水」という水があったときに、それを飲むと健康が回復しますとうたっています。
すると「奇跡の水」のパンフレットには水を飲んで健康になった人の情報だけが並びます。10人飲んで、健康になった人が2人だけなら、その2人だけがパンフレットに乗ります。残りの8人は無視されます。
その二人が、同時期に食事を改善したり運動を始めたという他の事実は無視されます。
自分の製品を良く言い悪く言わないのは普通だと感じますが、それは確証バイアスがあまりにも普通になっていることを示しています。
自分が考えた来季の戦略を上司や経営陣に報告するとき、その資料に並ぶのは成功を裏付けるデータばかりです。
「過去に類似した成功例がある」「上手くいく理由はこれ」といったように成功を裏付ける理由ばかりが所狭しと並びます。
失敗する可能性はほとんど記載されません。経営コンサルタントが提案する戦略も「これをやれば上手くいく」ということばかりが書いてあります。
ですが、実際はその戦略で成功した事例よりも失敗した事例の方が多いかもしれません。成功を裏付ける理由以上に、危険に晒す理由が隠れているかもしれません。
宗教を深く信じている人は確証バイアスが酷い人でもあります。
例えば「神はいる」と信じている人はことあるごとにあらゆる出来事を神の存在証明に使おうとします。
大雨が降れば「神が怒っている」と言い、穀物が豊かに育てば「神の恵みじゃ」と言います。不幸な出来事があれば「行いが悪くばちが当たった」と言います。
ですがその裏には真実があります。その真実を受け入れない限り正しい改善や対策をすることはできません。
確証バイアスとは「真実から目を背ける行為」です。
確証バイアスが強いと思い込みや固定観念が激しくなります。柔軟性が無くなり他の人や思想を受け入れることができなくなります。
イギリスの作家 オルダス・ハスクリーは次のように述べています。
目を背けても、真実はなくならない。
自分の考えを裏付ける情報を集め、自分の正しさを嚙み締めることは気持ちいいことでもありますが、それは自分から罠の中に深く入り込んでいる行為と同じです。
私たちは意識することで確証バイアスの罠を避けることができます。
まずは私たちに「確証バイアス」という思考の性質があることを知る(受け入れる)ことから始まります。
私たちは自分の意見を肯定する情報ばかりを集めようとします。このため、真実を知るためには自分の意見と対立する情報を意識的に集める必要があります。
進化論で有名なチャールズ・ダーウィンは自分の予想に反することに注目していました。
「こうあるべきだ」と考えている事柄に対して、それと違うことがあると必ずそれをメモ帳に書き込んでいました。
特に記録をとることが重要です。人は自分の意見と異なる証拠を見ても30分後には忘れてしまうという性質を持っています。
一般的な人が行う自分の考えを裏付ける情報だけを集めることの真逆の行動です。
私たちが「こうあるべき」「これが正しい」と思っていることを「それは違うよ」と言って否定されると怒りの感情がわきます。
ですが真実は「自分とは違う意見の人がいる」です。そこにはきっと裏付ける証拠もあるはずです。
あなたが思い込んでいることが100%ではないという事実に着目するべきです。
頭ごなしに否定するのではなく、相手の論拠を考えます。その上で自分の意見とどちらが正しいのかを考えることが確証バイアスの罠を避け、真実へとつながっていきます。
「お気に入り」「大好き」という感情は偏り(バイアス)です。
「お気に入りだから〇〇する」「大好きだから〇〇する」となりますが、本当にそれが最善の策なのでしょうか?
真実を見極めるには、自分が大好きだと思っていることこそ「本当にそうか?」と疑ってみる必要があります。
「シャーシンクの夜に」や「グリーンマイル」を手掛けた映画界の巨匠 スティーブン・キングは自分の大好きなキャラクターが本当に話を面白くしているのかをはっきりさせる手法を次のように語っています。
大好きなものを殺すんだ。書き手のちっぽけなエゴに満ちた胸が張り裂けたとしても。
「大好き」「お気に入り」は執着です。真実を見つけるためには「お気に入りの考え」を消し去る必要があります。
チャールズ・ダーウィンのように賢い人ほど 「自分の誤りを証明すること」に着目します。
「こうなるだろう」と考えていることを「ほんとうにそうだろうか?」と検証しようとします。
ある授業で規則性を見つけ出すテストが行われました。
「2,4,6」という数字から規則性を見つけ出すというテストです。ルールを見つけるために生徒は先生に他の数字がルールに則っているか質問することができます。
先生は「はい」か「いいえ」しか答えません。質問は何回でもできます。
多くの生徒が「2ずつ増える」と予測しました。そして、「8」「10」「12」と質問をしました。先生は「はい」と答えました。
ですが、この答えは「2づつ増える」ではありません。
一人の賢い生徒は「『2ずつ増える』が本当にそうか?」と考えました。そこで「7」と質問すると「はい」と言う答えが返ってきました。
次に「-4」だと「いいえ」、「3」だと「はい」と言う答えが返ってきました。他にもいくつかの数字を試して、最終的に「前の数字よりも大きい」という答えに行きつきました。
占いや予想が当たる理由は、人が言われたことに合う情報を自ら選び取るためです。
そもそも自分の貴重な時間を使いお金を払って占い師のところに行く時点で、その人は占いを信じています。占いを信じていない人は占いに行きません。
占い師に「来年、思いもよらないいい出来事が起こります」と言われると、翌年その人は普通に生活する中で何かいいことがあると「占いが当たった」と考えるようになります。
これは「思いもよらないいい出来事が起こる」を証明する情報を無意識に探してしまうからです。
占いや予想は基本的にとても曖昧です。「来年、良いことが起こる」「冬に素敵な出会いがある」といったように限定されていません。
「来年の〇月〇日〇時〇分に△△といういいことが起こります」と予言する人はいません。その予想を裏付ける情報を集める期間が短すぎるからです。
政治家も曖昧な言い回しを上手に使います。例えば「低所得者層の生活を豊かにします」と公言すれば、あまり効果がでていないことでも少しやれば改善したと言い張れます。
現代はインターネットやSNSの普及で自分と同じ意見を持つ人を簡単に見つけることができます。
自分が「これが正しい」と思うことがあったら、それが正しいと言っている情報はブログなどで簡単に見つけることができます。
そんな時代だからこそ「本当に正しいのか?」と疑ってみて、自分の意見に対立する意見を見てみることが真実に向かうカギとなります。
「本当に正しいのか?」と疑った結果、本当に正しければそれが真実です。
この記事の内容はスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。
人が陥りがちな思考の罠がとてもわかりやすくまとまっています。この記事の内容以外にも全部で52個の人の性質がわかりやすい具体例で解説されています。
この記事の内容でハッとした部分が一つでもあった方は是非手に取ってご覧になられることをお勧めします。
あなたの人生をより賢く豊かにしてくれることは間違いありません。