この世の中にはたくさんの専門家が溢れています。自分の人生の全てをその研究に捧げ、ノーベル物理学賞を受賞するような本物の専門家や、人から聞いたり、本で読み少しかじっただけの自称専門家などそのレベルは様々です。
お金や仕事、評価欲しさに、本当はやったことがないことや知らないことを「できます」「知ってます」と言う人も少なくありません。
信頼してお金を払ったのに結果が全然ついてこないということもあります。
ここでは本物と偽物の人の見分け方と、本物である人が知っている「能力の輪」について解説しています。
人のレベルはここからここまでが「本物」それ以外は「偽物」というように明確に線引きされているわけではありません。
グラデーションになっています。ある分野では本物の人が、別の分野では偽物ということはよくあることです。
本物と偽物を見分けるためには、そもそもその違いについて明確に知っておく必要があります。
本物とは「見せかけでなく実質を備えていること」です。
「できます」と言ったときに本当に知っている人、「知っています」と言ったときに本当に知っている人が本物です。
偽物とは「本物に似せて作ったもの」のことです。
見た目は本物のように見えますが、中身はスカスカで表面だけが似ている、あるいは中身の一部だけ本物に見えるものが偽物です。
相手が本物か偽物か見分ける方法は簡単です。
それは相手にたくさんの質問をしてみることです。
本物の人は自分が知らないことには「知らない」といいます。自分ができないことは「できない」と言います。
本物の人は自分がどこまで知っていて、どこからが知らないかを知っています。
本物の人は自分がどこまでできて、どこからができないかを知っています。
偽物の人は自分が知らないことに「知らない」とは言いません。知ったかぶりをします。自分が偽物でないことがバレないようにウソをつきます。
偽物の人は自分ができないことを「できません」とは言いません。できる風を装います。 自分が偽物でないことがバレないように繕います。
偽物の人は本物の人がどこまで知っていて、どこまでならできるかがわかりません。だから「知ってる」「できる」と答えます。
1918年にノーベル物理学賞を受賞したドイツの物理学者 マックス・プランクに関して面白い逸話があります。
ノーベル賞受賞後マックス・プランクは公演をするために、専門の運転手つきの車で全国を回りました。
運転手はマックス・プランクと一緒に全国を巡るうちに、マックス・プランクの話の内容を暗記してしまいました。そこでマックス・プランクにこんな話を持ち掛けます。
「毎回同じことを話すのは疲れたでしょう。次の講演では私が話すので、あなたは運転手のふりをして最前列で休んでいてください」
マックス・プランクは面白がって話に乗りました。
次の講演で運転手は見事に発表を成し遂げました。最後に会場にいたある物理学者から質問がきました。
そのとき運転手は次の用に答えました。
「このような進歩的な街でこんなに簡単な質問を受けるとは考えてもみませんでした。私の運転手に答えてもらいましょう」
この話からも分かるように、本物そっくりに似せた偽物(運転手)は決して「わかりません」とは言いません。
偽物はわかるふりをして上手に質問を交わします。
世の中にはわかるふりをする以外にも、話を逸らしたり、「そんな簡単な質問をするな」と急に怒り出す人もいます。
そういう人には偽物が多い傾向があります。
なぜ本物は「知らない」「できない」と言うことができるのでしょうか?その理由は世界長者番付の常連で世界屈指の投資家であるウォーレン・バフェットが「能力の輪」という言葉で示しています。
人には「ここまでは知っている」「ここまではできる」という能力があります。
一般的には「知っていること」や「できることが」多ければ多いほどいいと考えがちですが、ウォーレン・バフェットはそうは言いません。
それよりも自分自身が「どこまで知っているか」「どこまでできるか」を明確にすることが大切だと語っています。
そのことを、自分自身の「能力の輪」の境界線をはっきりさせることだと言っています。
自分の能力の輪がわかっているなら、そこに留まっているのがいい。その輪がどのくらい大きいかはそれほど重要ではない。
しかし、その輪がどこで終わっているかを、正確に知ることはとても大切なことだ。
本物の人たちは自分自身の能力の輪の境界線をはっきりと理解しています。
ノーベル賞を受賞したマックス・プランクもそうですが、本物の専門家は自分が「何ができないか」「何を知らないか」を明確に理解し、それを解明しようとした人たちです。
境界線を明確に理解しているからこそ、未知の解明に取り組み、それがわかったときに「発見した」と言うことができます。
能力の輪は本物の専門家にとって重要なだけではなく、私たちにとってもとても重要なものです。
自分たちが「どこまでできて」「どこまで知っているか」の境界線を明確だからこそ、自分の能力を適切に高めたり、自分の得意なことに集中することができます。
自分の能力の境界線が全く見えておらず「なんでもできる」と勘違いしてしまったり、見当違いのことをすればエネルギーを消耗し疲弊してしまいます。
自分の人生を生きるためには、自分自身が自分に対して本物であることは重要です。
「本物」と「偽物」を区別するときに知っておくべきことがあります。それはこの世の中は「パフォーマンスが上手な人が本物とみなされる」ということです。
人は無口で無表情な人よりも、コミュニケーションが上手で好感の持てる人を本物とみなします。
そして、ほとんどの人がパフォーマンスが上手な人ほどいい結果を出すと信じ込んでいます。
ですが、パフォーマンスの上手さや派手さと、真実や本質を見極めていて成果を出せる本物は違います。
この勘違いは強烈です。無口なトップはダメだという烙印を押されることすらあります。
もちろん派手なパフォーマンスをする人がいけないわけではありません。ただ、派手なパフォーマンスをする人には中身が伴っていない人が多いということです。
論語で有名な孔子の言葉があります。
巧言令色鮮し仁(こうげんれいしょくすくなしじん)
「コミュニケーションが上手で、相手に合わせていい顔をする人に、その人が悪い人とは限らずとも真摯な態度や思いやりのある人は少ない」と言う意味です。
とはいえ、現代では本物と偽物は区別がつきにくくなっています。
日本の高価な食器よりも、中国製の安物の食器の方が、軽くて丈夫で、電子レンジや食洗器にも対応しているということもあります。
ある人からしたら偽物だとしても、別の人にはその偽物の知識で十分なこともあります。
「本物」か「偽物」かを見極めるためには相手にそれを求めるのではなく、自分自身にとって「何ができれば本物か」という本物の基準あることが重要です。
自分自身にとっての本物を突き詰めていけば、周囲も自然と本物だけに絞られていくものです。
この記事の内容はスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。
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