私たちは学校で平均を多用してきました。クラスの平均点、平均体重、平均身長など、目安を出すのに平均をよく使います。
平均はとても便利な概念ですが、1つ注意しなければいけないことがあります。それは、飛びぬけた数値を含む場合、平均は全く意味をなさなくなるということです。
平均が意味を成すのはクラスの平均点、平均体重、平均身長など、上限と下限の幅がそこまでないときです。
クラスの平均点は0~100点の範囲です。平均体重は40~100㎏程度です。平均身長は130~190程度です。
このような限られた範囲で、かつ身長のように1m30cmや2mの人はほとんど存在せず、だいたい160cm±20cmといった中央に分布が固まっている場合、平均値はとてもいい目安になります。
一方、飛びぬけた値が一つでも入ってくると平均値は一切意味をなさなくなります。
仮に、20人の平均身長が160cmのクラスがあるとします。そこに、身長10mの人が一人入ってきました。すると、平均身長は2mになります。
たった一人とびぬけた人がいるだけで、平均を見ると全員がものすごく背が高いクラスになってしまいます。
身長10mはまずありえませんが、現実世界では、ごく一部の人や数値が飛びぬけた状態が頻繁に発生するようになっています。
例えば、お金に関していえば、世界のトップ62人の大富豪が、全人類の下位半分(36億人)と同額の資産を持っている状態です。その資産総額は180兆円です。
バスに10人乗っていて、その人たちの平均資産(貯金)が1000万円だとします。そこに、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツが乗り込んできました。彼の資産は約9兆1億円です。
すると、バスに乗っている11人の平均資産は約8100億円になります。平均値だけ見るとバスに乗っている人たちは飛びぬけて金持ちな集団に見えますが、実際に大金を持っているのはビル・ゲイツだけです。
世界の総資産額あたりの人口や、売上高に対する商品数の関係のように、ごく一部の商品や人たちだけが飛びぬけた値になっている状態を「べき乗則」といいます。
べき乗則はグラフ化すると次のようになります。
このグラフが当てはまるものに平均値を適用しても一切意味をなしません。
グラフを描くとべき乗則になるため、平均値を適用してはいけないデータには次のようなものがあります。
グローバル化やIT化の影響もあり、世界中の人たちがつながったため、平均値を適用できない対象は増加しています。
値がピンキリのものに平均値を適用しないよう気を付ける必要があります。
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