お金持ちになり高級車に乗ったり、豪華な家を建てたり、高級住宅地に引っ越したり、高い給料を得ることを夢見ている人は少なくありません。
皆求めていることは同じです。それを手に入れたら幸せになれると思っているからです。
ですが最近の人間心理の研究によって「人が幸せを味わえる期間は限られている」ことがわかっています。
ここでは幸福に関する人の心理と、どうすれば長期的な幸福を得られるかについて解説しています。
突然ですがあなたの買った宝くじが偶然にも1当になり、あなたの口座に10億円振り込まれたとします。
通帳の預金残高の桁が見たことがない数字に跳ね上がります。
これまでに見たこともない数字を見たあなたは驚き思います「これで一生遊んで暮らせる。幸せだ」と。
ではその幸せは本当に一生続くのでしょうか?
アメリカで数々の賞を受賞している著名な社会心理学者 ダン・ギルバートの研究により、「何かを得た時に感じることができる幸福は平均して3か月間しか続かない」ということが明らかになっています。
宝くじで10億円当たっても、高級車を購入しても、豪邸を建てても、かわいい彼女を手に入れても、かっこいい彼氏を手に入れても、昇給や転職でいい給与を得たとしても、その幸せは平均してたったの3か月間しか続かないということです。
あなたの将来を次の2つのパターンで想像してみてください。
どちらが幸せでしょうか?
考えるまでもありません。即答でAです。
ですが、実際にそうなった人たちが感じているのは、私たちが抱いたイメージとは全く異なります。
1年後にそれぞれの人に現在感じている幸福度を尋ねたところ、どちらの場合もほぼ同じだけの幸福度を答えました。
何かを得て感じる幸せの持続率も平均3か月です。同時に、何か悪い出来事があって感じる不幸の持続率も平均3か月です。
半身不随だけでなく、大きな損失、大失敗、大好きな人に振られたなど、最初の1、2か月間は悩み苦しみますが、平均して3か月すれば忘れてしまうということです。(「共有する人がいない」など特殊な理由によりPTSDになった人は別です)
「人は感情の予測ができない」という言葉をよく耳にしますが、なぜこれほどまでに私たちが思い描く感情のイメージと実感は異なるのでしょうか?
それは私たちの脳に理由があります。
私たちヒトは200万年もの長い年月の中で色々と進化してきました。特に脳の大きさが3倍にもなりました。
その脳の中でも顕著に発達したのが「前頭前野」です。前頭前野はイメージを司る脳です。
私たちは実際に経験しなくても、想像することで疑似的に体験をすることができます。
未来予測や新商品の開発など、まだ存在していないものをシミュレーションして、高い精度で生み出すことができます。
「前頭前野」のイメージ力はあくまで、その人がこれまでに体験したものや見たものに紐づいています。
このため、私たちが「今」感じている感覚を増大してイメージしてしまうのです。
宝くじで10億円が当たれば直近の感覚は最高です。この最高さをベースに未来予測をするので、ずっと最高な状態が続くと勘違いします。
半身不随になれば直近の感覚は最悪です。この最悪さをベースに未来を予測するので、ずっと最悪な状態が続くと勘違いします。
何かを得て感じることができる幸せが3か月間しか続かないとすると、私たちは永遠に幸せになれないということでしょうか?
これに関しても答えが出ています。
それは「幸せには2種類ある」ということです。
1つは「人工的な幸せ」、もう一つは「生み出す幸せ」です。
私たちのほとんどは宝くじの10億円のように、何かを得ることで幸福を感じます。これが「人工的な幸せ」です。
世間ではあまり知られていませんが、私たちの本能にはものすごい機能が備わっています。それは「幸せを生み出せる」ということです。これを「生み出す幸せ」といいます。
重要なポイントは「人工的な幸せ」の持続期間は平均して3か月程度なのに対し、「生み出す幸せ」は何十年にも渡り続くということです。
社会心理学者 ダン・ギルバートは人が生み出す幸せについて次のような実験を行いました。
被験者となる学生に6枚の絵を渡し、気に入った順に並べてもらいます。そして次のように伝えます。
「3番と4番の絵は在庫があるから、どちらか一つ選んでいいよ」
学生は迷います。1,2番は欲しいですが、3,4は大して欲しくないからです。とはいえ3番の絵を選びます。
半月ごや1か月後など期間を置いてから再度同じ学生に同じ絵を、好きな順番に並び替えてもらいます。
すると面白いことが起きます。
前回3番目だった絵は2番目に繰り上がります。一方、前回4番目だった絵は5番目に繰り下がります。
ここで何が起こっているかというと「自分が選んだ絵は価値が上がった」ということです。つまり「自分は価値あるものを持っている」と考えるようになったということです。
もう一方の絵については「自分がいらないと判断したものは価値が低い」と考えるようになりました。
自ら選び取捨選択したことで「自分の持っているものに幸せを生み出した」ということです。
自分で選択したことで幸福感を生み出すのは、記憶や頭で考えているわけではありません。
ダン・ギルバートは同様の実験を記憶障害を持つ人で行いました。
暴飲暴食などにより精神障害を負い、過去の記憶はあるものの、ある時点より先を記憶できない人たちです。
彼らに6枚の絵を見せ好きな順に並べてもらいました。
そして「3番と4番の絵は在庫があるので、どちらか好きな方を差し上げます」と伝え、選んでもらいます。
「また後日発送しますね」と伝えて部屋を出ます。
30分後に再度訪問します。すると患者は「すみません私は記憶障害で、あなたが誰かわからないのです」といいます。
この状態で同じく並べ替えてもらったところ、記憶の健常な人と同じく、前回3番目だった絵は評価が上がり2番目に、前回4番目だった絵は評価が下がり5番目になりました。
つまり、自分で選択したことで幸せが生み出されたということです。
長期的に持続する幸せを自分の中で生み出すためには、1つ重要な条件があります。それは「他の選択肢がない」ということです。
幸せが生まれるのは、2枚の絵から1枚の絵を選んだ後で絵を交換できない場合です。
逆に「あとでいつでも交換していいよ」と言われていると幸せは生み出されないことがわかっています。
重要なのは自ら他の選択肢はないと確信することです。
後から「あれもできた」「これの方がいい」「あっちの方がよかった」という迷いが生じる状態では幸せが生み出されません。
つまり、「自分にはこれしかないんだ」と心から思った瞬間に長期的な幸せが生み出されるということです。
「人工的な幸せ」と「生み出す幸せ」には重要なポイントがあります。
それは、2つはトレードオフの関係にあり、どちらか一方しか成り立たないということです。
何かを得ることで生まれる「人工的な幸せ」を選択した場合は、「生み出す幸せ」を感じることはないということです。
つまり、長期的な幸せを得るには「何かを得ることで生まれる、人工的な幸せ」自ら捨てる必要があるということです。
高い給与や高級車、豪邸、ブランド品、魅力的な異性などの数ある選択肢捨てて、何か一つだけに絞るということです。
自ら選び抜き「私はこれに決めたから」と心底いえる状態になって初めて、長期的な幸せを感じることができます。
とはいえ、モノや情報、選択肢で溢れかえっている現代で一つに決めることはなかなか難しいものです。
そういった人には次の3つのステップがお勧めです。
「お金じゃない」という言葉は、幸福になるためには非常に的を射る言葉です。
この記事の内容はスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。
人が陥りがちな思考の罠がとてもわかりやすくまとまっています。この記事の内容以外にも全部で52個の人の性質がわかりやすい具体例で解説されています。
この記事の内容でハッとした部分が一つでもあった方は是非手に取ってご覧になられることをお勧めします。
あなたの人生をより賢く豊かにしてくれることは間違いありません。