日本のごく一部の人には「昨日〇時間しか寝てないんだぜ」「〇日間徹夜してるよ」と寝てないことを自慢する文化があります。
アメリカでも「ランチは負け犬のもの」「睡眠は子供のもの」として睡眠が邪魔者のように扱われていました。
ですが、睡眠に関する研究が進む中で、寝ることこそが体の機能を回復し、創造性と生産性をもたらすことが明らかになり、周知の事実となっています。
そのような中で、今では「寝てない」=「無知」でカッコ悪いという認識が当たり前になってきています。
「健康」「成功」「幸せ」という誰もが欲しいモノを手に入れるために睡眠は必要不可欠なものです。
このため、8時間寝ていることこそが優秀で成功者の証となっています。
ここでは睡眠の重要性について解説しています。
睡眠をとらないと、体が回復することができません。睡眠が足りないと次のようなことが体に起こります。
睡眠が足りないと食欲を抑制する物質(レプチン)が低下し、食欲を高める(グレリン)が増加するので、「もっと食べたい」という状態になります。
たくさん食べれば血糖値が急上昇し、膵臓(すいぞう)がインスリンを分泌して血糖値を下げようとします。
ですが、あまりに高頻度かつ大量に食事が入ってくると膵臓がキャパオーバーとなり壊れてインスリンを正しく分泌できなくなります。この状態が糖尿病です。
血糖値を下げれず血液がドロドロになってくると、血圧を全身に巡らせるために強い負荷が必要になります。これが高血圧の状態です。
体を回復させる成長ホルモンが分泌されず、からだがどんどんと劣化・老化していきます。
体内に消化できないものが溜まっていき、腸内の善玉菌が減り免疫力が低下します。
こういった症状がそこかしこで発生し、体の臓器があちこちで壊れ、そして短い寿命で死を迎えます。
睡眠不足による内臓の破壊はジワジワと時間をかけて進行するものですが、短期間で発生する症状があります。それは脳機能の低下です。
ハーバード・メディカルスクールのチャールズ・A・ツァイスラーの研究によると、1日の徹夜や4~5時間程度の睡眠によってお酒で酔っている状態と同じだけの機能低下が起こることが発表されています。
また、ドイツのリューベリック大学の研究でも8時間ぐっすり寝た人たちと、睡眠を何度も邪魔された人たちでは、クイズの正解率に2倍の差が出ています。
睡眠が足りないと体の損傷がどんどんと進んでいきます。
「昨日2時間足りなかったから、今日2時間多めに寝る」という考え方がありますが、現実はそれでは足りません。
睡眠が足りないと、回復しきれなかった体は起きている間もいつも以上にダメージを受け続けます。
睡眠が不足した場合に回復に必要になる睡眠時間は雪だるま式に多くなっていきます。
睡眠不足がもたらす結末の例として、マイクロファイナンス社のCEO ジェフの話があります。
ジェフは会社を設立し発展させ、様々な賞を受賞した才能の持ち主です。トライアスロンの選手でもあり体力には自信がある若者でした。
仕事柄世界中を飛び回る生活で、6時間眠れたらいい方という慢性的な睡眠不足でした。
ある日、激しい動機に襲われて目を覚ましました。内臓が一つ壊れ、食べ物を上手く消化できなくなり、血圧が下がり救急治療室に運ばれました。
医者に「1~2年休むか、このまま一生薬に頼って暮らすか?」という選択を迫られた時、それを真に受けず、「2か月休めば回復するだろう」と軽く考えました。
ですが、2か月間の休暇で何ひとつ回復できずにいました。
結果として、すべての仕事をキャンセルし、自分の会社を辞めました。そのとき「こんなふうに辞めるはずじゃなかった」という言葉を残しています。
ここまで最悪な状況に陥り、好きな仕事を手放さなければいけなくなったのは、「次の仕事が終わったら休もう」「まだなんとかなる」という睡眠の軽視と自分の体力を過信がしたことが原因です。
私たちは「お金」「名誉」「成功」のために一生懸命働きます。それは資産を手に入れ・守るためです。
睡眠も同じく私たちの資産を守る役割をしています。その資産は自分自身です。
「お金」などの外にある資産を生み出す、一番重要な資産を守っているのが「睡眠」です。
睡眠を軽視したことで体を壊し、大好きな仕事を辞めざるを得なくなったジェフは回復した2年半後に次のように述べています。
「自分の資産を守ってください」
これが、苦痛に満ちた大きな犠牲を払って手に入れたシンプルな教訓です。
多くの人がしている勘違いに「休むことは簡単」があります。
ジェフのように体力があり活動的な人にとってはむしろ、自分を酷使し働き続けることは苦痛でも何でもありません。
働き続けることこそ簡単で、働きすぎないように自分を制御することが難しいのです。
働きすぎないように自分を制御するとは「休む」ということです。
ハードワーカーこそ次の挑戦をする必要があります。
自分自身に体力があると思っている人は、休むことや睡眠を軽視して体をでたらめに酷使します。そして徐々に体が蝕まれ、引き返せなくなったところでもうダメだと気付きます。
がむしゃらに走り続ければ燃料切れして一歩も進めなくなります。
私たちに必要なのは、体を戦略的に酷使することです。
1日の中で自分のエネルギーをどう配分して、どのように栄養補給するかを考える必要があります。
「1万時間の法則」の提唱者としても知られるK・アンダース・エリクソン氏が行った、一流のバイオリニストと普通のバイオリニストを調査した研究で次の2つのことが分かっています。
一流のバイオリニストは普通のバイオリニストに比べて約2倍練習していることが明らかになりました。
20歳までの練習量は普通のバイオリニストが平均6,000時間に対して、一流のバイオリニストは平均11,000時間でした。
つまり、持って生まれた才能よりも努力量の方が結果を生み出しているということです。
もう一つの驚くべき事実は、一流のバイオリニストの方が良く寝ているということです。
一流のバイオリニストは平均で8.6時間の睡眠をとっています。加えて、平均2.8時間の昼寝をしています。
普通のバイオリニストより2倍の練習をしているのであれば睡眠時間が削られてそうですが、実はそうではなく、練習したうえで更に長く眠るということです。
意図的(戦略的)に睡眠時間を確保しようとしないとできないことです。
睡眠は脳をリフレッシュさせる働きがあります。寝ている間に膨大な情報の整理と再構築を行い、起きたときには新たな神経のつながりを作ります。
このため、十分な睡眠が脳の機能や創造性を高め、問題解決能力を向上させます。
しっかりと睡眠をとることで集中力が上がるため、1時間あたりの練習効果を最大化することができます。つまり、生産性が上がります。
まとまった睡眠時間を確保できない人は昼寝をするだけでも大きな効果を得ることができます。
レム睡眠が一度でもあれば、脳はバラバラな情報を統合できることがわかっています。
寝始めた瞬間がレム睡眠に当たるため、10~30分程度の昼寝でも脳が回復できるわけです。
睡眠を重視している優秀な成功者と一般人の考え方には次のような違いがあります。
優秀な成功者 | 一般人 |
---|---|
もう1時間眠れば、数時間分の生産性が手に入る | もう1時間睡眠時間を削れば、1時間仕事ができる |
優秀な人は良く寝る | 寝るのは根性無しの落ちこぼれ |
寝ると創造的になる | 寝ると怠け者になる |
睡眠は仕事の効率を高めてくれる | 睡眠のせいで仕事量が減る |
多くの成功者も睡眠を重視しています。
Amazon創業者のジェフ・ベゾスも睡眠について次のように語っています。
「注意力が高まり、思考が明晰になる。8時間眠った日はずっと調子がいい」
実際、毎晩7~8時間の睡眠時間をとっています。
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツは寝る前に1時間の読書をし、平均7時間の睡眠をとっています。
ネットスケープ開発者のマーク・アンドリーセンは、少なくとも7時間寝るようにしています。
「6時間では足りない。5時間だと明らかに支障が出る。4時間の時はゾンビ状態」と語っています。
バークシャー・ハサウェイの筆頭株主で億万長者でもあるウォーレン・バフェットは無類の読書家として知られ最も長い時間を読書に費やし、その次に睡眠を大切にしています。
睡眠は8時間以上眠ることを大切にしています。
既に90歳を超えているウォーレン・バフェットの健康と長生きは睡眠と深く関わりがあると考えられます。
モノと情報の洪水の中で生きている私たちにとって、本当に大事なモノを見分けるためには優先順位付けをすることが必須です。
8割のゴミの中から、本当に価値のある2割を探し続ける必要があります。
睡眠不足は優先順位付けや見極める能力を鈍らせる行為で非常に危険です。
現代社会の中で8時間以上の睡眠時間を確保することは、正しい判断をしていくために必須です。
しっかり寝れば、洞察力と創造力を高め、より少ない時間で最高のパフォーマンスを出すことができます。
この記事はAppleやGoogle、FacebookやTwitterなどの世界的に有名な企業でコンサルティング経験のあるグレッグ・マキューン(Greg・Mckeown)氏の「エッセンシャル思考」という本の一部要約と抜粋です。
世界的ベストセラーになったこの本には他にも人生を成功と幸せに導く格言がたくさん載っています。
興味を持たれた方は是非実際に手に取ってみることをお勧めします。