世の中には商品や資料、試作品など細部にまでこだわる完璧主義者がいます。しかし、変化の速い現在では完璧主義はあまりにも遅すぎます。
完璧主義な人が、お客さんとの打ち合わせで使う資料を毎回1から作り込む場合、いくら時間があっても足りません。
仮に、あれこれ自分で調べたり、ちょとしたデザインにまでこだわって、2週間かかってようやく資料を作成したとします。
一方、自分が何をしなければいけないのかをチームで共有して、それに近しい資料をメンバーからもらい、それをベースにアジェンダとそれぞれの内容を箇条書きで組み立てます。2時間もあればできる作業でしょう。
そして、その箇条書きの資料を持って他のメンバーと話し合います。すると格子やストーリーが固まります。
そこから資料を作成すれば2日あれば終わるでしょう。一人で完璧にやろうとして14日かけたものが、たったの2日で終わるわけです。
完璧主義、一匹オオカミ主義は現在では通用しません。チームの中で働くのであれば、チームワークをい生かせるほうが強いです。
優秀な個人の集まりよりも、強い絆とチームワークで結ばれた集団の方が強さを発揮します。
大企業など組織の構造が、社長ー副社長ー本部長ー部長ー課長ー平社員といったように階層構造になっているところがあります。
こうした組織は、何かの意思決定をするときに、平社員んで揉んで、課長と揉んで、部長と揉んでといったように、一つ一つ上に上がっていかなければいけません。
結果として、平社員が練った案が、課長に却下され、課長と練った案が、部長に却下されといったことが頻繁に発生します。
一つの資料を作るに3か月かかるといったことも少なくありません。
例えば、企業のミッションや行動指針を決める場合、それらはA4半分で足りる程度の文字数のものです。
ところが、社長にまで確認しなければいけないため、完成するまでに3か月ぐらいかかることもザラにあります。
たったA4用紙半分の文言を考えるのに3か月、、これではあまりに遅すぎます。
現在のスピーディな社会に最も合っている組織の形態は完璧主義や階層構造ではありません。
「とりあえず簡単に作って試す」、「ツリー構造」、「随時修正」です。
とりあえず簡単に作って試すとは、お金をかけたり、考えすぎずに、身の回りにあるものや、簡単に手に入るものを使って試作品を作るということです。
例えば、企業のミッションや行動指針を決めるとなったら、頭の中に思い浮かんだことを紙にざっと書き出します。
30分もあれば十分でしょう。これで試作品の作成は完了です。
ツリー構造とは、社長ー部長ー課長ー平社員といった階層構造(ヒエラルキー)ではなく、社長=部長=課長=平社員といったように、みんなが並列に並ぶような構造を指します。
役職が高いほど偉いというのではなく、役職は単純にどんな仕事をこなすか、給料は会社にどれだけのインパクトを与えているかで決まっているかにすぎず、そこに人として偉いとか偉くないといった評価はありません。
平社員が試作品を持ってきたら、みんなで「ベースを作ってくれてありがとう」といい、それが良くなるように意見を出し合って揉んでいきます。
「なんだこれは?」「もっと考えてこい」といわず、みんなの知識を合わせて作り上げるという姿勢です。
2時間も議論すれば、よりいいものが出来上がります。
「とりあえず簡単に作って試す」と「ツリー構造」を用いれば、3か月かかったことがたったの2時間で終わります。
一度作成したからといってそれで終わりにする必要はありません。その後、誰かが気づいたときにアップデートを重ねていくだけでより良いものへと近づいていきます。
WindowsなどのOSやWEB上にある優れたアプリケーションは、8割の主要機能ができあがった時点で世に送り出され、運用しながら改善を積み重ねています。
逆にこのように柔軟に変更できるようにしておかないと、陳腐化してしまい、信頼性を失い、誰もその作ったものに従わなくなります。
より短い時間でより良いパフォーマンスを出す、「とりあえず簡単に作って試す」、「ツリー構造」、「随時修正」は目的を同一にして2人以上の人が集まっているチームだからこそできることです。
個人では、意見を出し合い改善していくという作業ができません。
みんなが意見を出し合ってより良い案に仕上げていった成果物を集合知といいます。
集合知を生み出せることこそが、チームでいるメリットです。
この記事の内容はモルガン・スタンレーやGoogleで人材育成や組織開発を率い、自身も起業家であるピョートル・フェリクス・グジバチさんの著書『世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法』の一部要約に個人的な見解を加えたものです。
本書は現代の組織に求めれているものは何か?それを得るためにはどうすればいいかが具体的かつ論理的に記されています。
使われている用語は専門用語ではなく、誰にでもわかりやすいものになっていて、例も豊富に乗っている非常に実践的な良書です。
会社を率いている人や部署を率いている人、あるいはマネージャーを目指している人の必読書といえます。
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