ハイコンテクストとは明確な言葉として伝えなくても伝わる環境のことを指します。
例えば、長年連れ添った夫婦の場合、何も言わなくても相手が何を欲しているのかが理解できる状態があります。これがハイコンテクストな状態です。
何も言わなくても通じる以心伝心状態でなくても、「あれとって」「それちょうだい」という声掛けで「はいはいあれね」と言って伝わる場合はハイコンテクストな状態です。
英語ではhigh-contextと書きます。コンテクスト(context)とは、理解を助けてくれる情報や状態、環境のことです。
highは高いという意味なので、状況や環境を見れば、何がおこっているかを理解できるという意味です。
ハイコンテクストの真逆の意味がローコンテクストです。
ローコンテクストとは明確に言葉にして言わないと伝わらない環境や状態のことです。
例えば、初対面の人に対して「あれとって」「それちょうだい」と言っても「あれって何?」「それってどれ?」というように、何のことを言っているのか理解できません。
あるいは、他の国の人と話すような場合です。習慣や思考が異なっているため「〇〇の△△をXXして」というように細かく説明しないと意思疎通ができません。
このような状態はローコンテクストの状態です。
旧来の日本は非常にハイコンテクストな社会と言われていました。
みんなが同じテレビ番組を見て、似た国民性を持ち、同じようなものを欲しがり、同じような行動をとっていました。
海外の人が日本人はどんな人種かを言い表すときに、「船に乗っているときに、誰かが海に飛び込めば、それに続いて飛び込む人たち」と言ったほどです。
そのぐらい、言葉がなくてもみんなが同じような行動をする人種だったということです。
ところが、現代はインターネットの普及や趣味の多様化の影響によって、異なった考え方をする人が増えてきました。
それは年代によって特に顕著で、50代と20代では思考が雲泥の差です。50代のベテラン上司が20代の新入社員に対して「あれよろしく」と言ってもまず伝わることはありません。
そうではなく「どこどこに〇〇があるから、それをいつまでに△△して」といったように細かく伝える必要があります。
すなわち、日本の社会や組織がローコンテクスト化してきているということです。
企業などの組織やスポーツチームがパフォーマンスを上げるために、重要な要素に心理的安全性あります。
最近ではチームに対する研究が進んだことで、コーチやマネージャーとメンバー、メンバー同士がお互いに心理的に安全で、安心して本音を言い合えるチームが最高のパフォーマンスを発揮しやすいということがわかっています。
すなわち、最高のチームを作り出すためには心理的安全性が必須ということです。
そして、ハイコンテクストなチームより、ローコンテクストなチームの方が心理的安全性が高い環境になりやすい傾向があります。
なぜなら、ハイコンテクストなチームというのは、わざわざ言葉にして伝えなくてもそのぐらいわかるだろうという前提で動いているため、質問するハードルが高く、コミュニケーションがあまり発生しないためです。
想像してみればわかりますが、何かわからないことがあって質問したときに「そのくらいわかるだろう」「自分で考えろよ」とイライラしながら言われたり、そういった雰囲気が伝わってくる組織では、心理的な危険性しか感じません。
一方、ローコンテクストなチームは丁寧に説明することが前提となっているので、気軽に質問できる風土があり、コミュニケーションも活発に行われます。結果として、何か困ったことがあったら訊ねやすく話しやすい環境になります。
つまり、高いパフォーマンスを出せる最高のチームを作るには、ローコンテクストを前提にした、心理的安全性の高い組織作りが重要ということです。
ローコンテクストの方が心理的安全性を作りやすいからといって、なんでもかんでも言語でやりとりをするというのではコミュニケーションコストがかさんでしまいます。
ローコンテクストが前提となり、それが受け入れられている環境をつくることは大切ですが、同時に、言語で伝えなくても誰が何をしているのか、どんな価値観で仕事に向き合っているのかが共有できる仕組みを導入することが心理的安全性を高めるためには欠かせません。
例えば、みんなで共有できるカレンダーを使って、メンバーがいつどこで何をしているのかが分かるようにするといったものです。
そうすれば、あの人はどんな仕事をしている。サボっていないということがわかります。
それ以外にも全体に共有する業務日報や、個々人の取扱説明書など、自動的にコミュニケーションを促進するような仕組みも効果的です。