世の中にはポーカーフェイスと言われるように自分の感情をコントロールすることが非常に上手な人がいます。
感情をコントロールできることは、人と関わる環境で生活していく上で非常に大切な能力です。
ですが、感情をコントロールするのが上手い人の中には、自分の本音が知られるのを嫌い、プライベートで人との距離を取ったり、本音を一切打ち明けようとしない人がいます。
こうした人は、表向きは非常に愛想が良かったり、笑顔を見せたり、和を重んじるような言動を取りますが、本音は全く異なっていることがあります。
例えば、笑顔で接していても、実際はものすごく不愉快で相手を恨んでいる。相手の成功を祝っていても、実際は相手の成功が妬ましくて嫉妬しているなどです。
こうした人は、インターネットの掲示板や裏アカなど、裏側で恨みを発散したり、ある時にため込んだ感情が堰を切って流れ出て復讐に至るといった傾向があります。
それまでは仕事ができて、良い人だったのに上のポジションになったとたんに、ワガママになったり、人を見下したりする人は、本音を隠してきた人の典型例です。
もし職場など組織の中に本音を言わない人がいたら非常に大きなリスクをはらんでいます。
ただし、一概に本音を言わない人が悪いわけではありません。むしろ、本音を言わない人が悪いというよりも、環境に原因があることがほとんどです。
例えば、上司が威圧的で本音を言いにくい環境や、私語は一切禁止で、雑談や笑顔も禁止されている環境、本音を言ったら評価を下げられたり理不尽な待遇を迫られる環境で、本音を言い出せないのは当然のことです。
もしかすると現在の環境は本音が比較的言いやすい環境にも関わらず、その人が過去の人生で本音を言う事を抑圧されてきたり、本音を言ったことでひどい仕打ちを受けた経験を持っている場合はそれがトラウマや経験則になって言い出せない場合があります。これも、その人が生まれ育った環境によるものです。
本音を言えない人や言えない環境を改善するためには、本音を言いある環境を作っていく必要があります。
そのためには、その環境にいるリーダーとメンバーやメンバー同士が信頼関係で結ばれることが大切です。
人は「この人に本音を言っても、疎外や拒絶をされることがない。私の言葉にしっかりと耳を傾けてくれる」と信じている状態であれば、相手に本音を打ち明けます。
いわゆる心理的に安全で安心な状態です。
そのような人間関係は急遽作り上げあげられるものではありません。普段から相手のことを気にかけ、配慮した言動を積み重ねることで築き上げられていきます。
相手と信頼関係を作るための鉄則は次の4つです。
この4つを守り切ることができれば、相手との間に自然と信頼関係が生まれます。
本音を言い合える環境とは、そこに所属しているメンバーがそれぞれこの4つの要素を意識し大切にしている環境です。
本音を言い合える環境とは「この人に本音を言っても、疎外や拒絶をされることがない。私の言葉にしっかりと耳を傾けてくれる」と感じている状態、すなわち心理的安全性がある環境です。
心理的安全性は相手の心の中にあるので、外側から見ることはできず数値化や評価が難しい項目です。
ですが、心理的安全性を計る指標の一つに「笑顔」があります。
笑顔が一切ない職場は心理的安全性がない職場といっても過言ではありません。人がふとした笑顔すら見せてはいけないと感じている状態は、心理的に全く安全ではく、心を固い鎧で武装しなければいけないと感じている状態です。
うっかり笑ってしまったときに「何笑ってんだよ」「ふざけんな」と本気で怒られるような環境では萎縮して、自分を出せなくなって当然です。
一方、ちょっとした会話でもフッと笑える状態がある場合は、心理的安全性がゼロではないことがわかります。
ただし、自分の感情をコントロールすることが上手な人や、特に日本人に多い相手に合わせる人には愛想笑いをする人がいます。
「こいつの話全然おもしろくないけど、とりあえず話を合わせとくか」「ここは愛想よくしておいた方が無難」といった心情から行う笑いが愛想笑いです。
一切笑いがないよりは愛想笑いがある方がマシですが、「愛想笑いがある=心理的安全性がある」ではありません。
チームを率いる人たちは、相手が自然と笑っているのか、それともただ合わせて笑っているだけなのかを注意深く見極める必要があります。
相手が自然な本心で笑っているのか、愛想笑いで笑っているのかを見極められない人は、人の上に立つべきではありません。
心理的安全性を計るもう一つのバロメータに「ネガティブな噂話」があります。
「〇〇さんってホント優しいですよね」といった相手に聞かれても問題がないどころか、関係性が良くなるようなポジティブな噂話が飛び交う環境は言うまでもなく心理的安全性が高い環境です。
そうではなく、「〇〇さんってホント酷いよね」といったひそひそ話などがネガティブな噂話がどのように行われているかで心理的安全性を計ることができます。
ネガティブな噂話を一切することができない環境は心理的に全く安全でない環境です。自分の本音を誰かに伝えてはいけないと信じている状態です。
一方、仲のいい人どうしでネガティブな噂話をできる場合は、その人との間には心理的安全性がある程度築かれています。この人になら本音を打ち明けても大丈夫と考えているためです。
最も心理的安全性が高いのはネガティブな噂話を「相手に直接伝えることができる」場合です。
例えば、「マネージャーのAさんのあの発言ってホント酷くない?」というネガティブな噂話を同僚としていたとします。そこにAさんが登場したときに「今ちょうどAさんの話をしていたんですけど、この前のあの発言ちょっと酷くないですか?」と気軽に言える場合は、相手がこちらの話に耳を傾けてくれ拒絶や酷い待遇をしないという信頼がある証拠です。
指摘を受けたAさんも「そう感じさせちゃってた。ごめん」や「あのときはごめんね。~な事情があってさ」と言って謝り、ネガティブな噂話をしていた人たちも「ほんとですよ。次からは気を付けてくださいね」と言って笑い合えるような環境は非常に心理的安全性が高いといえます。
心理的安全性の高さ | ネガティブな噂 |
---|---|
なし | 誰にも言えない |
低い | 親しい人だけに言える |
高い | 相手に直接伝えられる |
いくら心理的安全性が高いとはいえ、ネガティブな噂話が蔓延している環境は健全ではありません。そういった組織は問題を抱えていて、パフォーマンスを上げることができません。
このため、ネガティブな噂話をすること自体が問題だと考えている人がいますが、それは本音の抑え込みでしかありません。
そうではなく、ネガティブな噂話は組織内にある問題の顕在化で、問題を修正するチャンスです。
例えば、あるメンバーが「マネージャーのAさんが酷い」というネガティブな噂話を始めたときに、「そうか、傷ついたことがあったんだね。例えばどんなことが酷かった?」と問いかけをします。すると、「〇〇のときに~したこと」という回答が返ってきます。
そうしたら「なるほどね。あの人はなんでそんな態度をとったと思う?あの人は何が欲しかったのかな?」という問いかけをします。
すると、共感し話を聞いてもらえたことで、ネガティブな噂話をしていた人のマイナスの感情を中和させるとともに、新しい気づきが生まれ自身の成長へとつながります。