世の中には何か問題を指摘をされたときに素直に受け入れられる人と、頑なに考え方を変えようとせず、指摘を拒む頑固な人がいます。
指摘を素直に受け入れて自分の考え方や行動を柔軟に変えていける人は、人間関係も良好で、失敗を糧にしてスキルなどをどんどん学んで成長していきます。
一方、自分の考え方に固執する頑固な人は、周りの人との人間関係を悪化させ、思考や心が固く変化に適応することができず、成長も遅いという傾向があります。
なぜこのような違いが生まれてしまうかというと、その大きな影響は子供時代の親との関係性です。
親が子供の意見に耳を傾けながら、子供を尊重する形でアドバイスを提示していた場合、その人は人の意見を素直に受け入れやすい傾向があります。
一方、子供の時に「~をしたい」と主張しても親が「ダメだって言ってるでしょ」「いいから〇〇しなさい」といって頑なに自分の意見を否定や拒絶され続けてきた人は、他人の意見を受け入れずく、自分の考えに固執する傾向があります。
子供の頃の体験が「世の中とはこういうものなんだ」「どうせ~なんだ」という思い込みに発展してしまい、それが何十年もの間、頭と体に刻み込まれている状態です。
こうした思考や態度が柔軟か頑なかに関して、本人は気づいていないことが普通です。
なぜならその状態がその人が生まれ育った環境そのもので、当たり前だからです。
このように脳に深く刻み込まれ、無意識のうちにそのように考え行動に至らせる心理を「深層心理」と言います。
深層心理が悪いというわけではありません。私たちヒトは誰しも深層心理を持っています。1から10まで全て理由が明確という人はいません。かならず無意識な行動や発言があるものです。
怒りや反発、拒絶反応といった症状が出る場合、その感情を呼び出す何かしらのトリガーがあります。
親との関係やきょうだいとの関係など、幼少期の経験がトリガーになっていることがほとんどです。
例えば、少し「違うよ」と言われたただけで、強烈な拒否反応を示す人は、親や兄弟から否定されることが多く、自分のアイデンティティを守ることに必死だったという経験があるといったものです。
これは相手だけでなく、もちろん自分自身にも当てはまります。
もし誰かと話しているときや、何かを見かけたときにイラっとするなど、なんらかの感情の起伏があった場合は、何らかのトリガーによって深層心理の影響を受けたと冷静に認識することが重要です。
例えばたばこをポイ捨てする人を見たときに急激な強い怒りが湧いてきたとします。そのときに「トリガーはたばこのポイ捨て」「感情は怒り」であると理解し、「幼少期のときに、母親がたばこのポイ捨てについて強い嫌悪感を示していて、自分もたばこのポイ捨ては悪いことだと思っていたからだ」という深層心理の言語化まで至ることができれば、感情的なイライラを取り去ることができます。
採用面接やパートナー選びなど、相手と深く関わる可能性を吟味する場合、相手の家族との関係や子供の頃の経験に興味を持って訊ねてみることは、相手が指摘を素直に受け入れる素養があるかを確かめる一つの指標になります。
もし、親のことをうっとおしがっていたり、強い嫌悪感を抱いていたり、あの人はダメだといった強い思い込みを抱いている場合は、コーチングが難しい、いわゆるアンコーチャブルな可能性が高いです。
とはいえ、人は経験と努力、動機と行動によって変わることができる存在なので、親やきょうだいとの関係が悪いから、その人はダメだと完全に切り捨ててしまうことは時期尚早です。
あくまで、その人全体を見て人間性を判断することが大切です。
相手を判断するという以外でも、家族との関係や子供の頃の経験を聞いてみることはその人の価値観を理解し、丸ごとの相手を受け入れることにもつながります。
ただし、非常にプライベートな領域なので無理に開示させようとしたり、踏み込んで相手を傷つけることは避ける必要があります。