突出効果とは、私たちヒトが持つ心理の一つで、パッと見で目に入る目立つもので、対象の印象を決めてしまうことを指します。
例えば、片足がない人を見ると「不幸でかわいそう」と思ってしまったり、服装がだらしない人を見ると「頭が悪い」と思ってしまう心理のことです。
目立つものに引きづられて、相手や物事の印象を決めてしまうことは非常に危険です。なぜなら、正しい評価を下せなくなるためです。
例えば、あなたの知り合いに、酒飲みの人がいたとします。あなたは親切心から「そんなにお酒を飲んだら、危ないよ」とかねがね忠告していました。
そして、あるときその人が大きな交通事故を起こしました。あなたの頭は次のような考えが浮かびます。
「だから、お酒をあんなに飲むなって言ったのに。お酒は本当に危ない」
しかし、これこそが突出効果による勘違いです。
その人は事故を起こしましたが、それがお酒のせいとは限りません。寝不足、よそ見、車体の整備不良、発作、あるいは相手の車が突っ込んできたのかもしれません。考えうる原因は様々です。
お酒が原因とは限らないのに「酒飲み」という目立った特徴だけに目がいって、それが原因だと決めつけが発生しています。
突出効果による決めつけはあちこちで頻繁に起こっています。特に目にする機会が多いのがニュースや噂話です。
ある東大出身のベンチャー企業のCEOが、イノベーティブな新規商品を生み出し大成功を収めたとします。
すると、ニュースやその噂を聞いた人たちは「東大生だから」「やっぱり東大生はすごい」といった、評価を下します。
ですが、その人の成功と、出身大学は重要な関係性とは限りません。
なぜなら、東大卒で成功していない起業家はたくさんいますし、東大以外の大学を卒業していても成功している起業家は山のようにいるからです。なんなら、小卒、中卒という経歴で大成功を収めている起業家もいます。
本来、事業での成功と学歴は関係ないのに「東大というブランド名が目立つ」というたった一つの特徴から、理由付けを行っています。
本当は、もっと他に成功を導いた理由があるはずです。
ニュースや噂を耳にしたときには突出効果のワナに注意が必要です。
なお、突出効果が悪いわけではありません。突出効果は人の心理現象の一つで、自然発生的に起こる強力なものなので、人である以上仕方のないものです。
重要なことは、私たちがパッと見で目立つ情報で、印象を決定づける傾向があることを知っておくことです。
「あっ、今突出効果で印象を下した」ということに気づければ、「突出したところではなく、それ以外の本質的な理由は何だろうか?」という問いを自分に投げげかけることができます。
例えば、美しくて成功している女性を見たときに「この人は美しいから成功しているに違いない」と、決めつけるのではなく、「美しさ以外で、この人を成功に導いている理由は何だろう?」と自問することです。
そうすると、物事をより適切な目で見ることができます。
突出効果により勘違いした発言の一つ「~なのに」という言葉があります。これは、突出する一つの特徴で無意識のうちに決めつけを行っている証拠です。
例えば「若いのに、賢い」は、「若い」という一つの特徴的な要素から「劣っている」といった決めつけたために出てくる発言です。
「チャラそうなのに、まじめだね」も、相手の髪型やピアス、服装の一つの突出した特徴から「チャラチャラしてる」と決めつけたために出てくる発言です。
他にも「中国人なのに」「ベトナム人なのに」「黒人なのに」といった言葉を口にする人もいます。
「~なのに」は偏見や差別に他なりません。
「~なのに」と同じく突出効果による勘違いを表す言葉に「~だから」もあります。「中国人だから、しょうがない」といったものです。
この言葉は相手が中国人であるというたった一つの特徴から、相手の印象を決めつけたものです。
日本人の中にもとても悪い人がいるように、中国人の中にもとても親切で優しく賢い人もいます。
他にも「若いから」「地方出身だから」といったものがあります。
このように、何か一つの突出した特徴で相手を決めつけることは差別につながります。
突出効果は無意識的に発生する強力な心理なので、偏見を持ったり差別をしないためにも「目立つ特徴以外で、この人がそういった行動をとった原因は何だろう?」と自分に問いかけることが真実への道を開きます。
ある一つの目立つ特徴からその人の評価を下すことを「突出効果」以外に、「ハロー効果」と呼んだりもします。
どちらも似ているものですが、「突出効果」は「足がない」「黒人」「赤い」といった実態のある特徴から、相手の評価を下すときに使う傾向があります。
「ハロー効果」は「経歴」「学歴」「有名人」「大臣」といった実態のない特徴から、相手の評価を下すときに使う傾向があります。
なお、どちらもプラスの評価にも、マイナスの評価にも使います。
この記事の内容はスイスの経営者かつ小説家でもあるロルフ・ドベリの「Think Smart ~間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法~」の一部要約と自分なりの見解を加えたものです。
本書では人々が陥りやすい思考のワナとその対処法が、実例を踏まえてふんだんに紹介されています。
とても分かりやすく、成功したい、幸福になりたい思っている人の必読書です。
この記事に少しでも興味を持たれた方は是非実際の書籍を手に取ってみることをお勧めします。