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【心理学】ホメオスタシスとは何か?変わりたくない本能と社会の矛盾|現代では要らない心理

ホメオスタシスとは何か?

ホメオスタシスの本来の由来

ホメオスタシスとは、動物が体温などの「生態環境を一定に保ち続けようとすること」です。

例えば、人の体温は通常36度前後です。暑ければ汗を出して暑いことを伝え、体を冷やそうとします。寒ければ体温が下がらないように体を温めようとします。

体温以外でも血圧など様々な体内環境が一定であろうとします。

外からの影響により元に戻ろうとする働きを「負のフィードバック作用」といいます。

なおホメオスタシスという用語は1859年に生理学者のクロード・ベルナールによって提唱されました。


心理学的なホメオスタシス

ホメオスタシスは心理学でも使われます。心理学で使う場合のホメオスタシスとは、人が「変化を拒んで同じ状態でいようとする心理」のことです。

仕事などでこれまで使っていた機械やサービスを新しいものに入れ替えようとしたときに「大変」「イヤだ」「めんどくさい」「今までのままがいい」という不満がホメオスタシスです。

「現状維持バイアス」や「損失回避」という言葉でも表されます。


変わりたくないのが普通

ヒトという存在にホメオスタシスが本能的に備わっている以上、「変わりたくない」「現状を維持したい」と感じることは普通のことです。

よく年輩やお年寄りの人に対して「新しいものを拒んでばっかりいる!」と文句を言っている人がいますが、それはこれまで培ってきた現状が長いためしょうがないことです。嫌がらせや困らせたいという思いではなく、生物学上そういうものなのです。

point

変化を拒むのは、悪いことではなく、人として普通の反応。


変わらないと生きていけない

しかし、現在の世の中はインターネットの登場など、新しい商品やサービスが次から次へと出てくるため、人は変わり続けていかない限り成長や稼ぎ続けていくことができません

学ぶことや変わることを辞めた人たちは、時代から取り残され、経済的な弱者、あるいは組織のお荷物となっていきます

本能は変わらないことを求めているのに、現実は変わり続けていかなければいけないという非常に矛盾した状態になっています。

point

「変わりたくない」のに「変わらなければいけない」矛盾した世の中に生きている。


心理的なホメオスタシスは必要性は低い

そもそも、なぜ人に心理学的なホメオスタシスが備わっているのかといえば、人類が最も長い期間を過ごした狩猟採集時代など、過酷な環境下で現状を維持できないことは死を意味していました。

急激な変化に襲われたり、怪我をしたりすれば、それは生き延びることができない致命傷です。このため人には、何かを得る喜びよりも、何かを失う恐怖をより強く感じる本能が備わっているわけです

そして、私たちヒトの祖先はその本能が他の種族よりも強かったために、現在まで生き残ることができました。

つまり、私たちは強烈なホメオスタシスを持つ人種の子孫ということです。そこに良いも悪いもありません。ただそういうものなのです。

ところが、現代の環境は狩猟採集時代とは大きく変わっています。

現代において人が命を失うほどの危険に晒されることはほとんどありません。医療も発達し、骨折などの怪我をしても致命傷になるどころか、数か月あれば完治します

つまり、現代を生きている私たちにとって、心理的なホメオスタシスは、もはやほとんど必要がないものになっています。

逆に、心理的なホメオスタシスに捉われていると、変化についていけず、社会的な弱者となり、絶望的な人生を歩むことになります

point

現代では心理的なホメオスタシスに捉われている人は、社会的弱者になる。


思考の力で克服できる

無意識のうちに自然に発生してしまう心理的なホメオスタシスには太刀打ちできないのか?といえばそうではありません。

思考の力を使えば十分に克服することができます。

私たちヒトのすごいところは、本能的に無意識に発生した感情や衝動を、思考で落ち着かせたり取り除いたりできるということです。

どうすればいいかというと、「変化はいやだ」「新しいものはめんどくさい」という気持ちが自分の中に発生したら、心理的なホメオスタシスが発生していることを認識することです。

あっ変化をすごく嫌がっている自分がいる。新しいものをめんどくさがっている自分がいる。

これは心理的なホメオスタシスによる人の本能的な反応だ。現代社会ではもうこの本能はほとんど意味ないどころか、その本能に従っていると、私は社会的弱者になってしまう。

少し、回りくどいかもしれませんが、このように思考することで心理的なホメオスタシスを回避することができます。


克服している人の力を使う

自分一人で心理的なホメオスタシスを回避することが難しければ、既にそれを回避して新しいものを取り入れている人の傍にいったり、話を聞くことが非常に効果的です。

人には、自分と同程度の能力で似た環境に育っている人がやっていることを見ると、私にもできると思う本能も備わっています

例えば、大人が「こんなの無理できない」と思っていることを、小学2年生がやっていたら「なんだ、あの子でもできるなら、私もできる」と思うようになります。

この本能は非常に強力なので有効活用しない手はありません

なお、自分よりもあまりに優秀な人だと「自分とは違う」「あの人は特別」という意識が芽生えてしまうので効果がありません。あくまで似た環境の人を探してください。


コーチの力を使う

自分と似た環境に心理的なホメオスタシスを克服している人がいないという人は、コーチの力を使うことが非常に効果的です。

コーチとは、あなた以上にあなたの可能性を信じ、あなたの中から可能性を引き出し、新しい挑戦をする気持ちを湧き起こしてくれる人のことです。

人は「きっとできる」「あなたなら大丈夫」と信頼してもらえれば、勇気が出るものです。

yuta