NIH症候群とは、Not Invented Here 症候群の略で、自分たちや自分たちの所属する組織や国が発明したもの以外に価値を低く見積もる事です。
転じて、自分たちや自分たちの所属する組織や国が発明したものは、他のものよりも優れているという思い込む性質のことを表しています。
正直なところ、NIH症候群は例としてあげるまでもなく至る所で見ることができます。
もしあなたが「これよりも他のものの方が優れてるんじゃないの?」と訊ねたときに、「いやうちの製品の方がいいに決まっている」という回答が返ってきたら、それはNIH症候群に陥っている可能性が高いです。
国家単位では、日本で売れたホビー用のパソコンがイギリスでは全然売れず、イギリスで売れたホビーパソコンが日本では全然売れないということがありました。
研究や冒険の世界では発見した人が他のどんな人たちよりも称賛されます。そしてその人たちが属する国やその国の人々が、あたかも自分たちが一番優れているかのように自慢します。これも一種のNIH症候群です。
NIH症候群は誰にでも起こりうるものです。
アメリカの心理学者 ダン・アリエリーはNIH症候群がどの程度の割合で発生するかを調べるため次のような実験を行いました。
その結果、全く同じ解決策に至ったにも関わらず、自分で単語を並べて解決策を作り出した人は、自分のアイディアを過大評価する傾向が見られました。
なぜ人がNIH症候群に陥るかというと、それは人が、自分の価値を周りに認めて欲しいという、本能的な強い承認欲求を持っているためです。
このため、自分や自分たちはすごいと見せたがり、思い込みたがります。
誰しも、自分や自分たちは劣っていると思い込みたくないものです。
日常生活の中で自分のアイディアや成果物を過大評価することに大きな問題はありません。自分が心から素晴らしいと思うモノに囲まれて暮らすことができるので幸せです。
ですが、企業で自分以外の人を相手に商品やサービスを売っている場合は、NIH症候群に注意しなければいけません。
あなたや、あなたの会社の人たちがどんなに良いものだと思っても、それを使う人たちが「微妙だ」と思っていたら、市場で価値を生むことはできません。
「他社製品よりも自社製品が優位にあるのは具体的にどの部分か?」「ユーザーはしょうがなく使っていないか?」「誰かが他社製品を勧めたら、簡単に乗り換えてしまわないか?」といった質問を問い続ける必要があります。
NIH症候群を避けるもう一つの方法は目的意識をはっきりさせることです。
「自分のアイディアを通すことではなく、最適解を出すことが目的」と理解しておくことが重要です。
例えば、会議などの議論の場でも、自分の意見を出すのは自分の意見を通すためではなく、それをたたき台にしたり可能性を検討することで、よりよい案を導き出すためだという意識を持ちながら発言します。
最適解を出すことが目的だと理解していれば、議論や他人からの反論は思考を深める材料になり、ウェルカムなものになります。
この記事の内容はスイスの経営者かつ小説家でもあるロルフ・ドベリの「Think Smart ~間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法~」の一部要約と自分なりの見解を加えたものです。
本書では人々が陥りやすい思考のワナとその対処法が、実例を踏まえてふんだんに紹介されています。
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