初頭効果とは、人は相手のことを第一印象で判断する傾向があるという人間心理です。
あなたは会社の中澤さんが山田さんのどちらかと二人で出張に行くことになりました。あなたはどちらのこともよく知りません。初対面です。
上司から、それぞれの説明を次のようにうけ、一緒に行く人を選んでいいと言われました。
この場合、ほとんどの人が中澤さんを選びます。なぜなら「知的で勤勉」だからです。一方、山田さんは「嫉妬深く、頑固で、批判的」なため評価は低く敬遠しがちになります。
しかし、両者の説明は全く同じです。ただ伝える順番が変わっただけです。
このように人は、最初に抱いた印象をことさら強く評価する傾向があります。逆にいうと、中間や最後の方の情報は抜け落ちるということです。
「人は見た目が9割」や「第一印象が大事」という言葉をよく耳にしますが、これは私たちが本能的に初頭効果を持っているためです。
見た目が魅力的だったり、清潔感があったり、誠実だと、その人の評価は最初に抱いた印象がその後も強く左右することになります。
逆に、見た目が残念だったり、汚らしく、うさんくさいと、その人の評価はその後も残念な印象をひきづります。
これは、人だけに当てはまるわけではありません。企業や家などの建物、商品なども同じです。
門構えを良くしたり、玄関や見た目を豪華に繕えば、すごいという印象を与え、その印象が全体の中でも強く残ります。
初頭効果は会議での発言にも効果を発揮します。会議の場で一番最初に語られた意見が過大評価される傾向があるということです。
もしあなたが何か意見を持っているなら、大事に大事に胸の中で温めるのではなく、先陣きって最初に言ってしまう方が、みんなへの印象が強くなります。
会議を思い返してみると、誰かに続いて後から意見を言う人たちよりも、いつも最初に口を開く人の印象が強く残っているものです。
初頭効果は私たちヒトにとって本能的なもので自然に発生します。このため避けることが難しいことでもあります。
ある企業では採用面接の場で初頭効果を避けるために、候補者を白いカーテンの向こう側に座らせてあえて見えなくすることで、第一印象で評価が影響を受けてしまうことを避けています。
他にも、最初の面接は電話で音声だけを使って行うといった工夫をしているところもあります。
心理学者でノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンは生徒の採点をするときに、学生ごとにテストを採点していくと、最初に書かれていた回答が素晴らしいと、その印象がその後の採点にも影響を及ぼすことに気付きました。
そこで、初頭効果によるバイアスが入らないように、まずは全生徒の1問目を採点して、続いて全生徒の2問目を採点するといった方法を取り入れていました。
初頭効果と似た心理的性質に親近効果というものがあります。
親近効果とは、最後に与えられた情報に影響を受ける性質のことです。
例えば、2時間の講義に参加したときに、最後に「印象に残ったところはどこですか?」と聞かれると、一番最後に話していた内容がパッと思い浮かぶことが親近効果です。
他には「今週の夕飯で一番おいしかった食べ物は何?」と聞かれたときに、昨晩のおかずしか思い浮かばないのも親近効果です。
初頭効果は最初の情報を過大評価し、親近効果は最後の情報を過大評価するもので、両者は真逆のように見えます。
ですが、それぞれ効果を発揮する状況が異なります。
具体的には、初頭効果は一文の中や即座に決めなければいけない時など、期間が非常に短いときに強く現れます。
一方、親近効果は2時間の講義や、1週間など期間が長いときに強く現れます。
初頭効果は短期記憶が持つ特徴で、親近効果は長期記憶が持つ特徴です。
初頭効果と親近効果が示していることは、私たちは最初と最後の情報を過大評価し、中間の情報は抜け落ちる傾向にあるということです。
お客さんに合う時や、採用面接を受けるときなど、好印象が欲しいときは、最初に与える情報と、最後に与える情報を特に注意する必要があります。
身なりは誠実で清潔にし、挨拶をしっかりする。最後にも再度重要なポイントをアピールする。それだけで相手が受ける印象は大きく変化します。
面接の候補者や商品などを適切に評価したい場合は次の2つを気を付ける必要があります。
初頭効果による影響を避けるために、候補者や商品が見えない状態にしてテストします。
候補者をカーテンの向こう側に座らせたり、アイマスクをした状態で商品を試すと、第一印象による先入観を取り払うことができます。
更に、中間、中間で都度採点を行いメモしておきます。「これはいい」「これは悪い」と感じたことを細かく書き出し、最後にそれを足し上げます。
この2つを行うだけで、初頭効果と親近効果のワナにハマらずに、より確からしい評価を下すことができます。
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