人は誰しもが独自の経験をし、独自の考え方をしています。ある行動や考え方をする場合は「~だから」という理由を自分の中に持っています。
人にとってそれらは宝物のように感じるはずです。過去の勉強や努力によって培われたものだからです。
ところが一つ悲しい現実があります。それは「これが正しい」と思っていることほど、本当にそれが正しいか疑わしいということです。
というのも、人はとても簡単に自己正当化や思い込みをしてしまう生き物だからです。特にそれらは無意識に起こります。
ここでは、人がいかに自己正当化や思い込みを起こしやすい生き物か、それに気づいていない人たちの特徴についてまとめています。
スウェーデンの心理学者 ペター・ヨハンソンは、人がいかに簡単に思い込みに陥るかを証明するために次のような実験を行いました。
まず、被験者たちに2枚の顔写真を見せます。そして、魅力的だと思う人を選んでもらいます。
ここがポイントですが、その後に、その写真を”別の人物の写真とすり替えて”、その人の前に差し出し、なぜ魅力的だと思ったか?について説明してもらいます。
すると、ほとんどの被験者たちが、実際に比較した写真とは別の写真を見せられているにも関わらず、なぜその人が魅力的だと思ったかについて、疑うこともなく説明をしました。
これは、私たちは「曖昧な物事であっても、自分たちの内側にそれらしい理由を自動的に作ってしまう生き物である」ことを示しています。
なお、この心理を専門用語で「内観の錯覚」といいます。
内観とは、自分自身の精神状態やその動きを内面的に観察することです。それ自体が正しいと思い込んでしまう(錯覚する)ため、内観の錯覚と呼びます。
こうした本能的な思い込みに陥てっいる人たちには、自分の考え方を理解しない人が現れると、次の3つのうちのどれかを相手に当てはめます。
思い込みが強い人の1つ目のパターンは、自分の意見に理解を示さない人に対して「相手がそのことを知らないのだと考える」ことです。
「この人は私が知っている事実を知らないんだな」「この人は私がした経験をしたことがないから、しょうがない」という思考が働きます。
思い込みが強い人の2つ目のパターンは、自分の意見に理解を示さない人に対して「相手は愚かな人だと考える」ことです。
「この人は頭が悪い」「バカなんだな」という、相手を見下す思考が自動的に働きます。
思い込みが強い人の3つ目のパターンは、自分の意見に理解を示さない人に対して「相手に悪意があると考える」ことです。
「この人はわざと知らない振りをしている」「私を騙そうとしている」「自分の利益を得ようとしている」といった、相手に何かたくらみがあるのだと、相手を疑うようになります。
思い込みの強い人が上記のような3つの思考のどれかに陥った結果、次の3つのうちのどれかの行動をとります。
この人は私の言っていることを理解できていないと判断したとき、思い込みの強い人がとる行動の1つ目のパターンは「自分の考え方をこの人に教えてあげなければいけない」という義務感を抱くことです。
そして「そうじゃない」「こうなんだ」というように、相手を否定し、自分の理論を何度も何度も押し付けようとします。
宗教心の強い人が「あなたの考え方は間違っている。本当はこう考えるのが正しいのよ」と諭してくるのがこれに当たります。
この人は私の言っていることを理解できていないと判断したとき、思い込みの強い人がとる行動の2つ目のパターンは「敵対心」を抱くことです。
「こいつは私の敵だ」という認識を強く持ち、批判や否定などで相手を攻撃します。
この人は私の言っていることを理解できていないと判断したとき、思い込みの強い人がとる行動の3つ目のパターンは「相手を見下す」ことです。
「こいつは頭が悪すぎて何を言ってもムダ」「こいつと関わるのは時間のムダ」と考え、軽蔑の眼差しでみたり、何も言わずに去っていきます。
「押し付け」「敵対」「見下し」のどの行動をとっても、相手を傷つける行為になります。
このため、思い込みの強い人は、他人と信頼関係を築くことが苦手で、他人と接することを拒み、一人でいることを好む傾向があります。
「親友が一人もいない」「友達が少ない」「人付き合いが苦手」と言っている人の多くは思い込みが強い人です。
思い込み自体を防ぐことはとても難しいことです。なぜなら、私たちは何かの出来事や経験に対して無意識のうちに意味付けをしてしまうい性質を持っているからです。
気づいたときには既に「こうだろう」「こうあるべきだ」という考え方が生まれています。
このため、自分が納得していることを確信し、それに固執するのは普通の反応でもあります。
ここまで強力な本能の思い込みへの対処法は次の2つです。
本能は無意識のうちに発生してしまうものですが、自分の意志で考えることで打ち破ることができます。
相手が自分の考えに理解を示さないときは、相手を否定・批判するのではなく、まずは相手の言い分にしっかりと耳を傾け、そして、自分自身の考えは本当に正しいだろうかと疑ってみましょう。
そうすれば、人間関係を壊すことなく真実にたどり着くことができます。
この記事の内容はスイスの経営者かつ小説家でもあるロルフ・ドベリの「Think Smart ~間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法~」の一部要約と自分なりの見解を加えたものです。
本書では人々が陥りやすい思考のワナとその対処法が、実例を踏まえてふんだんに紹介されています。
とても分かりやすく、成功したい、幸福になりたい思っている人の必読書です。
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