私たちは日々の暮らしの中で、たくさんのやりたいことと、やらなければいけないことを抱えて生きています。
学校の宿題やテスト勉強をしなければいけない、でもなかなかやる気がおきない。気づくとマンガを読んだり、ゲームをしたり、動画を見たり、部屋の掃除をしているといった経験は誰しもが持つものです。
先延ばしは多くの人が抱える悩みでもあり、そのため様々な分野で先延ばしに関する研究が行われてきました。
「やりたい」「やらなければいけない」と思っているのに、やる気が出ず、ついつい先延ばしにしてしまう事には原因があり、対処法があります。
ここでは、先延ばしの原因と対処法についてまとめています。
「やらなければいけないこと」を先延ばしにしてしまうのは、それが簡単にはできないためです。
時間とエネルギーがかかるため、気が重く、取り掛かる気がおきないというのが原因です。
こういった先延ばしを防ぐには「何をやらなければいけないかを明確にする」「やるべきことをもっと細かく分割する」という方法があちこちで語られています。
当然、それらは先延ばしを防ぐための重要な手段の一つですが、それ以外に忘れられがちな事実があります。
それは「そもそも、その問題に取り組むエネルギーが足りていない」ということです。
時間がかかり簡単には解決できないことに取り掛かるためには「よし、やってやろう」という内側から湧き出るエネルギーが不可欠です。
1日の中で私たちが持つエネルギーは限られています。何か問題を解いたり、判断を下すことはエネルギーを消費することです。
悩んだり判断を多くすると疲れがたまり、集中力や意志力がどんどんと低下していきます。こういった状況を「判断疲れ」といいます。
Appleの創業者のスティーブ・ジョブズやFacebookの創業者 マーク・ザッカーバーグは判断疲れによる集中力や意志力の欠如を防ぐために、いつも同じ洋服を着ることで、余計な判断をしないようにしているほどです。
アメリカの社会心理学者 ロイ・バウマイスターはエネルギーと集中力や意志力の関係を簡単な実験により表しました。
ある部屋に学生を集め2つのグループに分け、難しい数学の問題に取り組ませます。その際、その部屋に美味しい香りのする焼きたてのクッキーを置きます。
そして、一方のグループには「問題を解く間、好きなときにクッキーを食べてもいい」と告げ、もう一方には「問題を解く間、クッキーを食べてはいけない」と告げます。
この結果、「クッキーを食べてはいけない」と言われた学生たちは、「クッキーを好きな時にたべていい」と言われた学生たちの半分の時間で問題を解くことを諦めました。
美味しそうな香りがするクッキーを食べることを我慢し自制することにエネルギーを使ったことで、問題を解くための意志力と集中力がなくなってしまった結果です。
私たちが持つエネルギーはバッテリーと同じく、バッテリーが減ると集中力、意志力、パワーはどんどんと減っていきます。
先延ばしにしがちな「やらなければいけないこと」や「やりたいこと」に取り組むためのエネルギーをチャージするカギは、リラックスと睡眠、いい言葉です。
温かい日差しの中外でゆっくりとランチを食べたり、仕事が終わって帰宅した後に熱いお風呂に入ってリラックスすることが精神力のチャージにつながります。
そして、なんといってもエネルギーを最も回復するのは「質の高い睡眠」です。
最近では睡眠に関する研究も進み、質の高い睡眠を得るための明確な方法も解明されています。また、睡眠時間は7~8時間がベストであることもわかっており、8時間睡眠は成功のステータスとまで言われるほどです。
あとは日常の中で「いい言葉」に触れることです。普段から「できる」「大丈夫」といった、いい言葉に触れている人は何かをすることに対して希望を抱きます。
一方、普段から「ダメ」「できない」「無理」といった言葉に触れているひとは自尊心を失くし、何かをやる前から諦める思考が働きます。
意図的に悪い言葉を喋る人たちや、メディアを避け、いい言葉に触れる時間を作り出すことも精神力をチャージするための重要な手段です。
アメリカの行動経済学者 ダン・アリエリーは期限の設定方法によって、テストの成績がどう変わるかを調査しました。
研究の結果、最終的に最もいい成績が出るのは、誰かが強制的に締め切りを決めた場合でした。続いて、期限を設定しそれを公言する方法です。
最も成績が悪かったのは、自分で自由に期限を設定し、それを公表しない(第三者が締め切りを設けない)方法でした。
つまり、先延ばしを防ぐためには、誰か他の人に強制的な締め切りを決めてもらう方法です。ただしそれでは締め切り直前までやらないという恐れもあります。
このため、「自分で期限を設定し、それを他者に公表する」という方法も併せて使うと、先延ばしを効果的に防ぐことができます。
「先延ばしを防ぎたい」と考えている人は、期限の設定方法を甘く見ないように注意が必要です。期限を設定しないことは、人間の心理上、先延ばしをして当然です。
自分が「~します」ということを周りに公表することを「パブリック・コミットメント」といいます。
その力はとにかく絶大で、中毒性のある喫煙や飲酒を断ち切る力をも持っています。
パブリック・コミットメントが最も効果を発揮するのは、この人に伝えて守れなかった場合に失望されるのが嫌だという人に、伝えることです。
例えば、親や上司、大好きな彼氏・彼女などがそれにあたります。
心がくじけそうになった時に、「失望されるのが嫌だ」という気持ちや「もう公言してしまったから後には引けない」という気持ちが支えになります。
「やりたい」「やらなければいけない」と思っているのに、やる気が出ず、ついつい先延ばしにしてしまう人は、一度立ち止まって次のようなことがないか自分の状態を考えてみてください。
これらの答えがノーなら、まずは体調と環境を整えることが最優先です。体の中にエネルギーがない状態で何かをしても、十分な成果につながらないか、体や精神が余計にすり減って鬱などの症状に至ってしまいます。
体の中にエネルギーが十分に足りているという人は、上手に期限を設定することを試してみてください。
例えば、身銭を切って資格試験に申し込むなど、第三者によって強制的な締め切りが決められている状態にする。
そして、「私は~をします。そのために今日から試験日まで精一杯努力します」と公表します。
これが、先延ばしの防ぎ方です。
もし、ここまでやって決めたことをやらないのであれば、それはあなたにとって大して重要ではないのかもしれません。
その時は、「自分の一度きりの人生の中で、本当にやるべきことは何か?」という問いを投げかけてみるのがいいでしょう。
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