「お金」の価値は誰が手にしても変わりません。100円をAさんが手にしても、Bさんが手にしてもどちらも100円です。
このように共通の価値観があるからこそ、私たちはお金で何かを買ったり、何かを売った代わりにお金を得ることができます。
一見とても当たり前のように思えますが、実は私たちの心理はお金の価値をいつでも同じように捉えているわけではありません。
お金をどのように得たかで、そのお金に対する価値観が大きく変わってしまうのです。
この価値観のズレは非常に危険で、予想外の大損失に至り、人生を台無しにすることもあります。
ここでは、お金の価値のズレがどういったときに発生するかと、損失を防ぐための対処法についてまとめています。
お金の価値のズレは誰にでも発生します。しかも無意識のうちに発生することがほとんどです。
例えば、あなたがある年に、過酷な肉体労働をして300万円稼いだとします。精神的にも肉体的にも本当に辛く何度も逃げ出そうと思いました。
でも、諦めず最後までやりきって稼いだ300万円です。あなたは、この300万円を次の4つの選択肢のうちどのように使いますか?
多くの場合、1、2、3のどれかを選ぶ人がほとんどです。4に使う人はいません。
仮に、あなたが歩道を歩いているときに、道端で宝くじを1枚拾いました。なんとそれが大当たりで300万円が手に入りました。
棚ぼたで手に入ったラッキーな300万円です。あなたは、この300万円を次の4つの選択肢のうちどのように使いますか?
この場合は、3や4を選択する人がほとんどです。1や2を選択する人はほとんどいません。
ただ、ここで一つ注意しなければいけないことがあります。それはどちらも同じ300万円ということです。
貯金しようが、投資しようが、家のリフォームなど、必要性を感じていたが先延ばししていたことに使おうが、豪華旅行に使おうが、あなたが最終的に得られるもののは同じです。
にも関わらず、どのように手に入れたかでそのお金の使い方が簡単に変わってしまいます。
つまり、お金はそれ自体に共通の価値があるだけでなく、その価値には私たちの感情が”無意識のうちに”強力に働いているということです。
どのように手に入れたかで、手に入れたお金に対する価値観が大きく変わってしまうことを専門用語で「ハウスマネー効果」といいます。
ハウスと聞くと家などのマイホームを思い浮かべがちですが、そうではありません。ハウスとは建物という意味で、ここではカジノなどの遊技場を表しています。
カジノで稼いだお金は、そのまま全額次の賭けにまわされることが多いことからこの名前が付きました。
競馬で勝ったお金を「今日は勝ったから、俺のおごりだ!」といって大盤振る舞いするのもハウスマネー効果です。
日本人的には「ハウスマネー効果」よりも「棚ぼたマネー効果」の方がわかりやすいかもしれません。
ハウスマネー効果のワナにハマっている人たちは「お金の価値を理解できていない人たち」です。
全く同じものに2つの見方を持ち込み、それぞれを別々に扱ってしまっている状態です。このような人たちは生涯にわたってお金を上手に使うことができません。
よく、宝くじがあたったり、一躍ブームになってお金を稼いだあと、数年後に全てのお金を失う状況に陥ります。
お金の価値を見失って、大損したり破産しないために重要なのは次の2つです。
お金の価値を見失わないための1つ目の条件は、そもそも私たちの心理が「どのようにお金を得たかで、お金に対する価値観が変わるもの」だということを知ることです。
この心理は私たちが人間である以上、無意識に発生してしまうため避けることができません。
避ける方法は唯一、それを意識することです。
お金の価値を見失わないための2つ目の条件は、「自分にとって本当に必要だと思うことに使う」ことです。
一番やってはいけないのは「贅沢」です。何も戦時中のように「贅沢は敵。質素な生活が全て」と言っているわけではありません。
「贅沢」とは「過剰」「なくてもいい」「ムダ」「余計」な物事です。自分にとって必要がないことに対してお金を使う必要はありません。
また「貯金」こそが最善の策だと考えている人もいますが、それも誤りです。貯金だけしているのでは、お金は何の価値も生み出していません。
お金は自分や他人、未来に投資することで価値を発揮する、ただのツールにすぎません。
人によって何が価値があるかは大きく変わります。人によってはギャンブルこそが人生の楽しみで、一生懸命稼いだお金も、棚ぼたで手に入れたお金も平等にギャンブルにつぎ込む人がいます。その人は、決して、ハウスマネー効果にはまっていません。その人にとって、どのように得たかに関わらずお金の価値は同じです。(ただし、ギャンブル依存症ですが、、)
一生懸命働いて得たお金であろうが、棚ぼたで手に入れたお金であろうが、自分にとって価値のあるものに使う。それが大切です。
お金の価値を正しく認識して、適切に使うためには次の質問が効果的です。
この質問で導き出された答えが、あなたにとって正しいお金の道です。
100万円のところは、1万円でも、1000万円でも構いません。自分が考えるのにちょうどいい額にしてください。
ハウスマネー効果は私たちヒトにとってとても強力な心理です。そのため、企業のマーケティングでも頻繁に活用されています。
銀行やクレジットカード、電子マネーなど新たに契約を結ぶと、500~1000円をプレゼントしてくれる企業が多くあります。中には5000円や1万円といった高額をプレゼントしてくれるサービスもあります。
一見、お金のばらまきに見えますが決してそうではありません。
多くの人が持つハウスマネー効果にもとづいたもので、棚ぼたのお金を渡せば、それ以上の額を大盤振る舞いで使ってくれることを知っているためです。
例えば500円分のポイントを貰った人の買い物は500円では止まりません。それ以上の額の買い物をすることになります。一度使えば、次も使うループにハマり、それが無限にループすれば企業の思惑どおりです。
もちろん、ハウスマネー効果以外にも、使う人がどんどん増えて、ある一定の割合(クリティカルマス)を超えると、大勢の人が「私も、私も」と言って使い始めるといった経済心理現象も加味されています。
この記事の内容はスイスの経営者かつ小説家でもあるロルフ・ドベリの「Think Smart ~間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法~」の一部要約と自分なりの見解を加えたものです。
本書では人々が陥りやすい思考のワナとその対処法が、実例を踏まえてふんだんに紹介されています。
とても分かりやすく、成功したい、幸福になりたい思っている人の必読書です。
この記事に少しでも興味を持たれた方は是非実際の書籍を手に取ってみることをお勧めします。