世の中には占いを信じ込む人がたくさんいます。朝のニュースで「〇〇座の人のラッキーアイテムは△△です」というと、ラッキーアイテムを持っている人は「あーよかった」とホッとし、持っていない人はそれを買いにいきます。
天気占いや星座占いならまだかわいいものですが、占い師に大金をつぎ込んだり、傾倒しきって言いなりになってまい、人生を台無しにする人もいます。
占い師にハマった人たちは必ず「あの人は私のことをなんでも言い当てられる」と言います。
ところが、そういった当たる占い師は、人間心理を巧みに利用したインチキ手法を用いています。
実は占いは誰にでもできるものです。私でさえも、あなたの性格を言い当てることができます。
私の念能力であなたの性格を読み取ったところ、次のような結果が出ました。あなたにどのぐらい当てはまっているか確かめてみてください。
あなたは、周りの人から好かれたいと思っているし、褒められたいと思っている。その反面、自分に批判的な傾向もある。
いくつか弱点もあるが、たいていの場合は上手くカバーできている。あなたにはかなりの才能があるのに、それを活かしきれていない。
しっかりしていて自制心があるように見えるが、本当は臆病で自信がない。自分の決断が正しいか疑問を抱くこともある。
適度な変化を好み、何かを禁じられたり制約を設けられると不満を覚える。
独自の考えに誇りを持っているため、他の人の言う事を根拠もなく受け入れたりはしない。軽々しく他人に心を開くのは賢い選択ではないと思っている。
外交的で気さくにふるまうときもあるが、内向的で懐疑的で控えめになるときもある。
どちらかと言えば非現実な願望を抱くこともある。
いかがでしょうか?なかなか良い線をいっているのではないでしょうか?
これは、1948年にアメリカの心理学者バートラム・フォアラーが行った実験で使用した文章の一部です。
フォアラーは自分の学生たちにこの文章を読ませ、どのぐらい当てはまっているかを0~5点の間で採点してもらいました。
その結果、平均的な点数は4.3でした。これは86%というかなり高い的中率です。
つまり、上記の文章はあなただけでなく、この世に存在するほとんどの人に強く当てはまるということです。
なお、この文章はフォアラーが様々な雑誌の占いコーナーから寄せ集めてきた言葉の組み合わせです。
このように、他の多くの人にも当てはまる心理描写(性格判断)を自分だけに当てはまるように感じてしまう心理のことを、発見者のバートラム・フォアラーにちなんで「フォアラー効果」といいます。
また、アメリカのサーカス団や見せモノを生業にして大成功を収めた興行師 P・T・バーナムの「誰にでも当てはまる要点というものがある」という発言にちなんで「バーナム効果」とも呼ばれます。
フォアラーが使った文章や、P・T・バーナムの「誰にでも当てはまる要点というものがある」発言が示すように、なぜ誰もが”個人的”に当てはまると感じるかには次の3つの条件があるためです。
まず第一に巧妙な占い師は、占いを伝えるときに、誰にでも当てはまる言葉を選びます。
「周りの人から好かれたいと思っているし、褒められたいと思っている」という言葉は誰しもに当てはまる一般論です。
人から嫌われたい、褒められたくないと思っている人はいません。口ではそう言っている人がいても、好かれたり、褒められると内心嬉しいものです。
そういった、表面には表していない内心とぴったりあうから占い師を信じてしまいます。
人には「心地よい言葉を”それが当てはまらないとしても”受け入れる」傾向があります。
「独自の考えに誇りを持っている」「軽々しく他人に心を開くのは賢い選択ではない」という言葉は、「誇りがあり、賢い」ということを示しています。
たとえ、他者から見てどんなに誇りがない人や頭が悪い人でも、自分自身では誇りをもち、賢い面があると思っているものです。
「私は自分の考えに誇りを持っていない」「私は頭が悪く賢くない」と心から誠心誠意言い切る人はいません。
人には「確証バイアスという、自分にとって都合のいい証拠ばかりを集めようとする傾向」があります。
自分の提案を通したり、欲しいものを誰かにかってくれとせがむときに、それが良い理由ばかりを集めてきて、マイナス面の情報は集めようとしない心理です。
フォアラーの文章を読むと、どれも当てはまるものばかりです。このため、わざわざそれを否定する証拠を集めようとしないのが人の心理ということです。
これら3つの心理が働いた結果、誰にでも当てはまる占い師の言葉を、自分にピッタリ当てはまっていると感じるわけです。
フォアラー効果を上手に利用しているのは占い師だけではありません。
私たちの生活の中のいたるところでフォアラー効果を上手にりようしたペテン師たちを見ることができます。
企業の中や政治家、コンサルタントなどの職業の人たちは、フォアラー効果の使い手です。
「今年度の売り上げは減少傾向ではありますが、一部プロダクトでは徐々に伸び始める傾向がみられています」
「状況は一旦悪化してから、徐々に良くなります」
「損益計算書を見れば、コスト削減の余地があるのは明らかです」
「将来的にマーケットシェアを確保し続けるためには、海外進出した方がいいでしょう」
これらのコメントやアドバイスは一見正しそうに聞こえますが、それはあなただけでなく、他の全ての人や企業にもあてはまるただの一般論です。
なお、こういった言葉を使う人たちは、自分たちがペテンをしていると自覚していない人も少なくありません。
この記事の内容はスイスの経営者かつ小説家でもあるロルフ・ドベリの「Think Smart ~間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法~」の一部要約と自分なりの見解を加えたものです。
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