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【意見が違う人を拒絶してはいけない】周りの人はあなたと違うことを考えているのが普通|偽の合意効果とは何か?

人は1日の中で様々なことを考えています。誰かの行動や意見に対して「こうすればいいのに」「これはダメでしょ」「こうするべき」といった考えを持っています。

そして「そう考えるのが当然でしょ」と思っています。

ですが、ここに大きな落とし穴があります。真実は、私たちが「そう考えるのが当然でしょ」と思っているほど、周りはその意見に同意していないということです。

ここでは、私たちがいかに「自分の考えが当然だ」と思い込んでいるか、そして、それがいかに私たちを不幸に導いてしまうかについてまとめています。


自分の意見が多数派だという思い込み

スタンフォード大学の心理学教授 リー・ロスは、人は自分の意見が多数派だと思い込む傾向があることを次のような実験で示しました。

大学内を歩いている学生に声をかけ、レストランの広告看板を身体にひっかけて30分歩いてくれないかとお願いをします。

同時に「他の学生にもこの依頼をした場合、どのくらいの人が承諾してくれるだろうか?」という質問を投げかけました。

その結果、依頼を受け入れた人は、他の人たちも同じように承諾すのが多数派だと答えました

一方、依頼を断った人は、他の人たちも同じように断るのが多数派だろうと答えました

学生の返事他の学生の承諾率の予想
承諾62%が承諾する。
断る67%が断る。
point

人は周りの多くが自分と同じ考えをするだろうと思い込んでいる。


簡単な確認方法

この心理傾向は自分自身でも簡単に試すことができます。

「便利な都会と自然豊かな地方を比較した場合、どちらの方が好きな人が多いと思いますか?」という質問を自分に投げかけてみてください。

都会が好きな人は「都会に決まっている」と答え、自然が好きな人は「地方に決まっている」と答えます。

このように人は無意識のうちに自分の考えを他人にも当てはめてしまうものです。

「そんなのあり得ない」「それはダメでしょ」という言葉は、まさに、自分の意見が多数派だという思い込みからくるものです。

point

人は、無意識のうちに周りも同じ考えを持っていると決めつけている傾向がある。


偽の合意効果とは何か?

このように人が「周りの大多数の人たちも、自分と同じ考え方を持っている」と考えてしまう心理を「偽の合意効果(ぎのごういこうか)」と呼びます。

「相手も自分に合意しているだろう」と”勝手に”思い込んでしまうため、偽の合意というわけです。


理解を示さない人を否定する

なお、偽の合意効果にはもう一つ重大な側面があります。それは、人は「自分の考えに理解を示さない人を否定する」傾向があるとういことです。

これは、先ほど紹介した心理学者 リー・ロスの実験でも明らかにされています。

レストランの広告看板を身体にひっかけて30分歩いてくことを承諾した学生は、拒否した学生のことを「ユーモアを理解しない頭でっかち」と言って批判しました。

一方、申し出を拒否した人たちは、承諾した学生を「まぬけ」「自分が良い人だと思い込んでいるヤツ」と言って批判しました。

point

「周りの人も自分と同じように考えて当然だ」と思い込んでいる人は、理解を示さない周りの人を否定する。


自意識過剰や過大評価の原因にもなる

「周りの人も自分と同じように考えて当然だ」と考える心理は、自意識過剰や自分の成功の過信や過大評価にもつながります

「自分がいいと思っているのだから、周りの人もいいと思うにちがいない」という強い思い込みをもち、周りの人の意見を聞かずに突っ走り、いつまでも成功しない人は少なくありません。

世の中を見渡せば小さなグループや非営利団体、政党が「自分たちの意見の方がいいです!正しいです!」と声高々に叫び訴え続けています。

これは「周りの人も自分と同じように考えて当然だ」と考える心理によるものです。

同様のことが企業でも起こります「自分たちの商品が一番素晴らしい」と思い込み、そればかりをひたすら押している人たちも少なくありません。

そういう人たちは「なんで世の中にはこの価値がわからないんだ」「世の中の人々はわからんずやばかりだ」というように、自分の考えを疑わず周りを否定します

point

「周りの人も自分と同じように考えて当然だ」と思い込んでいる人ほど、自信過剰で自分自身を過大評価している。そういう人は決して成功しない。


なぜ自分の考えが正しいと思い込んでしまうのか?

現代において「自分の考えが正しい」「周りの大多数も自分と同じ考えをしているに違いない」と思い込んでしまうことは、間違った思考や結論を呼び起こし、人を不幸にします。

では、なぜそのような人にとって不利な本能が私たちに備わっているのでしょうか?

それは、現代の環境が、私たちの本能が適していた環境とあまりにかけ離れてしまったことが原因です。

ヒトという種が99%の時間を過ごしてきたのは厳しく過酷な狩猟採集時代です。自然環境や猛獣などの脅威にさらされ続けていた時代です。

その環境の中で、ヒトにとって最重要だったことは「生き残り子孫を残すこと」でした。そういった環境においては、自分に自信がない人や相手のことばかり思いやっている人よりも、「自分こそが正しい」と力強く生き抜ける人こそが魅力的な人物でした。

つまり、過酷な自然の環境下において、子孫を残す確率を上げるためには、「自分の考えが絶対的に正しい」と強く思い込んでいる人こそが、目的を果たす可能性が高かったのです。


訊いてみなければわからない

狩猟採集時代は「自分の考えが正しい」という強烈な思い込みこそが力でしたが、現代ではそれが幸せな人生を棒に振る勘違いに変わっています。

勘違いしたまま生きて人生を棒に振らないために、私たちが知っておくべき重要なことは次の2つです。

知っておくべき2つの事実
  • 私たちヒトは、周りの人も自分と同じように考えて当然だと思いこむ心理がある。
  • 相手がどう思っているかは、本人に訊いてみないとわからない。

世の中で幸せになり成功していく人というのは「自分の考えが正しい」「自分の考えを理解しない人は間違えている。頭がおかしい」と言って批判することはありません。

その真逆で「人は誰しも自分と同じ考えをしているわけではない」「違う考えの人がいても当然」「あいてがどう思っているかは、相手に訊いてみるべき」という考え方をしています

point

意見が違う人を拒絶してはいけない。じっくりと耳を傾けて、自分の考えと比較し最適解を導き出すことが成功につながる。


参考

この記事の内容はスイスの経営者かつ小説家でもあるロルフ・ドベリの「Think Smart ~間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法~」の一部要約と自分なりの見解を加えたものです。

本書では人々が陥りやすい思考のワナとその対処法が、実例を踏まえてふんだんに紹介されています。

とても分かりやすく、成功したい、幸福になりたい思っている人の必読書です。

この記事に少しでも興味を持たれた方は是非実際の書籍を手に取ってみることをお勧めします。




yuta