私たちの多くは、学校教育の影響もあり「頭がいい」=「いいこと」だと強く思い込んでいます。そして深く考えるられる能力が優秀の証だと考えています。
ですが、現実社会では深く考えることがいいこととは限りません。
むしろ、考えてしまうと全く動けなくなるという大きなマイナスに至ることも少なくありません。
私たちには考えた方がいいことと、考えずに直感に従った方がいいことの2種類があります。
ここでは、考えすぎるとなぜ動けなくなるのか、そういったときに直感を優先した方がいいのかについてまとめています。
考えすぎると動けなくなることを示したわかりやすい例えに賢いムカデの話があります。
ムカデは種類にもよりますが、多いものでは足が170本あります。
ある賢いムカデは獲物をとるために、自分の足を厳密に計算しました。どの足をどのぐらいの速度で動かしたらどの程度進み、その時に他の足をどう動かせばいいかを入念に検討しました。
足を動かすまでにかなりの時間を費やしたものの、数学を身につけていたムカデは全ての変数を計算し、最適な方法を選び出しました。
そして、一歩踏み出しましたが、あまりに複雑に考えすぎたために足が絡まってしまい、そこから動けなくなり、そのまま餓死してしまいました。
考えすぎた結果失敗に至ることは少なくありません。
プレゼンの場で何を話せばいいか考えすぎた結果、何も話せなくなる。
ゴルフで優勝を決める大事なショットで考えすぎた結果、連続してミスショットを放ち優勝を逃す。
商品を買う時に、あらゆる情報を集めて散々考えた結果、結局決めることができず何も買っていない。
転職に必要なスキルや面接のときに何を話せばいいかを考えすぎて、未だにどの会社にも応募していない。
旅行に行くときに、持ち物や危険性などを考え、完全な旅を目指す結果、未だにどこにも出かけていない。
など、枚挙に暇がありません。
アメリカの心理学者 ティモシー・ウィルソンは思考が直感にどのような影響を及ぼすかについて次のような調査を行いました。
学生を集めて、いくつかのジャムを試食してもらい、ジャムを美味しい順に順位付けしてもらいます。次の実験も、同じジャムを試食してもらい、今度はなぜそれが良いと思ったかの理由を詳細に書き出したうえで順位付けしてもらいます。
つまり、1回目は直感で選び、2回目は思考で選び、結果順位に違いがでるかを調べるという内容です。
その結果、1回目の試食では、学生たちが選んだ結果は、ベテランの試食者が選んだ結果と同じものになりました。
しかし、2回目にその理由を考えてもらったときは全く違うモノになりました。直感的に上位にランクインしたジャムが下位に移動したり、逆に直感でおいしくないと評価されていたものが、上位にランクインしました。
つまり、考えてしまったことで、本当においしいものが何かを見失ってしまったということです。
直感と思考は全く異なる脳の処理に基くため、それぞれ異なった結論を導きます。
直感に頼るべきときは、運動、味覚など感覚に関することです。
タイピングするときに、指の第一関節と第二間接を動かす速度や折り曲げる角度をいちいち考えている人はいません。それを考え始めたら、速度は一気に遅くなります。
そして、何も考えていない時は上手くできたことが、考えたせいで上手にできなくなります。
また、「自分が持っている能力」や「過去に数えきれないほど自問したことがある問」に関しても直感に頼るべきです。
考えすぎると間違った結論が導かれてしまいます。
考えるべきときは、私たちの感情が反応したときです。
私たちには、何かがあると怒り、妬み、喜び、楽しみなどの対応する感情が無意識のうちに発動する本能があります。
例えば「バカ」と言われたら怒る。「すごいですね」と言われたら喜ぶ。同期の給料が自分よりも良かったら妬む、「残り僅か」と言われたら欲しくなる、「失敗するかもしれないよ」と言われたら不安になるなどです。これらは無意識的に発生する自動的な感情です。
私たちの祖先が暮らしていた狩猟採集の時代では、これらの感情は生きるために効果を発揮しました。しかし、安全性が保たれ食料の確保が簡単にできる現代では感情のままに行動する必要はありません。
むしろ、感情のままに行動すると、いい人間関係が築けず社会的にはじき出されたり、詐欺ややらせなどのマーケティングにひっかかることになります。
そういう時は一度立ち止まって、感情を静め「本質は何なのか」を見極めようとする必要があります。
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