人事面接では「あなたは過去にどんな難問にぶつかりましたか?」「あなたが達成できなかったことは何ですか?」といったように、その人ができたことではなく、できなかったことに注目して質問をすることがあります。
失敗やできなかったことを訪ねていったい面接官は何がしたいんだろう?と疑問に思った方も少なくないでしょう。
ですが、こういった質問をするのは相手の本質を知るためにとても重要だからです。
ここでは人が無意識のうちに行っている心理 チェリーピッキングについてまとめています。
チェリーピッキングとは「自分にとって都合のいいことだけを並べ立てる」ことです。
チェリーはサクランボ、ピッキングは摘むという意味で、熟れたサクランボだけを摘み取る行為からこの名称がつけられました。
チェリーピッキングの問題点は、それを私たちが無意識にやってしまうことです。そもそも世の中に溢れている大部分がチェリーピッキングにより、都合のいい面だけをピックアップしたものです。
企業のHPや商品カタログを見ると、そこには素敵な写真と、いかに素晴らしいかを説明する文章が溢れかえっています。
レストランのメニューに使われている写真はどれもおいしそうです。
自動車のカタログに写っている車はどれもピカピカです。汚れや鳥の糞は一切ついていません。傷や凹みもありません。
「売り物なんだから当たり前でしょ」「それが普通」「わざわざイメージを悪くするようなものを載せないよ」というのがみんなの共通意見です。
このようにチェリーピックはみんなの共通認識として当たり前に行われています。
社内における社員から上司への報告や、企業から投資家への報告、履歴書にもチェリーピックが当たり前のように行われています。
あなたが報告する立場だったらこう思うはずです。「わざわざ自分の失敗を並べ立てる人はいないよ」
まさにその通りで、報告書では誰しもが当たり前のよう良いことだけを並べ立てています。悪いことでも必死に良く見せようと努力します。
ここで重要な点はそれを読む側は提出されたものだけがすべてと思い込んでしまうことです。
たくさんの良いことと、少しの悪いことが書いてあると、「少し残念な部分はあるけど、概ねいいんじゃないか」と思います。
ですが、それすらもチェリーピックされた文章です。本当はその裏に書かれていないたくさんのできていないことがあります。
なお、非営利団体や慈善団体でもチェリーピッキングは当たり前のように行われています。
いいことだけが主だって書かれている報告書や履歴書だけを見て判断すれば、間違った結果になるのは当然です。
このような間違いを避け、真実を知るためには上手く行っていないことやできなかったことを質問する必要があります。
具体的には、何か報告を受けたときには次のような質問を必ずします。
何か報告をするとき人は良い情報だけを伝えようとします。そういった情報がエピソードや物語で語られるときは特に注意が必要です。
というのも、人は統計的な数値データより、エピソードや物語を信じ込む性質があるためです。
例えば、市場調査をしたところ、自社製品のデザイン性が悪く満足度が低いという結果が出たとします。
そのことについて会議で話し合ったところ、ある社員が「ですが、私の隣人はこのデザインをとても気に入っています」という、良い報告をしてきたとします。
それは事実でしょう。かといって、その意見はごく少数の意見でしかないということを理解し、取り入れないように排除する必要があります。
データではなくエピソードで語られた情報のため、感情が動きもっともらしく聞こえているという事実を受け止めなければなりません。
このため、優秀な経営者の多くは「で、そのエビデンスは?」と事実確認をすることを習慣化しています。
エピソード以外にもう一つ注意すべきことは「独自に設定された目標」です。
多くの人たちが、自分たちの良い面だけを取り立てて、悪い面には一切言及しないようにします。
このため、元々あった目標が達成困難なときに、その代替案として「より適切な独自目標を設定しました」といって理由を並べ立てる人たちがいます。
聞いていると適切な尺度のような気もしますが、この目標には注意しなければいけません。
というのも、その目標は達成可能であることを前提に立てられた可能性が高いからです。
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