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【重要】人が大勢いる場所で助けてもらうために知っておくべきこと

私たちが当たり前と思っていることには驚くべき誤解が含まれていることは少なくありません。

その中の一つに「周りに人が多ければ多いほど助けてもらえる確率が上がる」という勘違いがあります。

心理学の研究の結果「周りにいる人の数が増えれば増えるほど助けてもらえる確率が減る」ということがわかっています。

ここでは、周りに人が多いと助けてもらえなくなってしまう例や理由と、人が多い場所で自分自身が緊急事態に見舞われたときにどうすれば助けてもらえるかについて、人の心理面から解説しています。


人が多いと助けてもらえない

都市や観光名所など人が多い場所は安全だと思われがちですが、実はそのような場所でも悲惨な事件は発生しています。

大都市の殺害事件

1964年にアメリカの大都市であるニューヨークの住宅街で悲惨な事件が発生しました。深夜に28歳の女性が一人の男性に30分にわたって暴行を加えられ刺殺された事件です。

女性が襲われているとき、周りに誰もいなかったわけではありませんでした。それどころか近くに住んでいる38人もの住人が女性の叫び声を聞いて、女性が襲われているところを傍観していました

しかし、女性が刺殺されるまで誰一人として警察に電話した人はいませんでした


観光名所での殺害事件

シカゴの有名な観光名所である23歳の若い女子大生が暴行されて殴り殺される事件が発生しました。

犯人は被害者が噴水の近くにいた被害者を襲い、藪の中に引きずり込み暴行をくわえました。

その事件が起こったのは人通りの多い昼間でした。

その後の警察の調査で近くにいた人たちの何人かは女性の叫び声を聞いた人もいました。ある男性は「叫び声を聞いたが、周りの人は誰も気にしていないようなので、自分もそれ以上調べようとは思わなかった」と答えています。


なぜ助けてもらえないのか?

上の二つの事件を聞いて「冷たい人たちだ」「無関心は怖い」と思うでしょうか?

ですが、近くに住んでいた住人や周りに住んでいた人たちは決して冷酷で非道な人ではなく、一人一人は誠実で優しい人たちでした。

なぜこのような悲惨な事態に陥ってしまったかというと、それは周りにいた人が多すぎたからです。

私たちヒトには周りにたくさんの人がいると、次の2つの心理が働きます。

周りに人がいるときに働く心理
  1. 責任の分散:「誰かが助けるだろう」という心理。
  2. 社会的証明の原理:周りが平然としているなら、自分も平然とする心理。

責任の分散

一つ目の理由は「責任の分散」です。もし見ている人が自分しかいなければ、その人を助けられるかどうかは自分一人にかかっています。

ですが、見ている人がたくさんいると責任が分散します。「これだけたくさんの人が見てれば他の人が助けるだろう」「既に他の人が警察に連絡しただろう」という心理が働きます。


社会的証明の原理

二つ目の理由は「社会的証明の原理」です。社会的証明の原理とは、私たちヒトが「他の人たちが何を考えているかを基準にして物事を判断する」ということです。

例えば、あなたが街に買い物に出かけたときに、多くの人が空を見上げているのが目に入ったとします。すると、あなたは何も考えず自動的に周りの人たちと同じように空を見上げます。

社会的証明の原理は特に次の2つの条件下において最も強い力を発揮します。

社会的証明の原理が適用されやすい条件
  1. 答えややるべきことが不確かである。
  2. 行動をしている人たちが類似している

緊急事態というのはぱっと見でわからないものです。例えば、深夜の暗い状態で女性に叫び声が聞こえたとしても、それがいたずらなのか、酔っぱらっているのか、彼氏や旦那とケンカしているのか、死の危機に瀕しているかはわかりません。

つまり、どれぐらい危機的状況なのかが「不確か」ということです。

更に、人は誰しも取り乱したりパニック状態に陥りたくないですし、周りからそう見られたいとは思っていません。

平然とした様子であたりをチラっと見渡したときに周りの人が平然としていれば、みんなが落ち着いているので、自分もそうるべきだと考えます。

結果として、今目の前で行われていることは緊急事態ではないと認識するようになります

point

周りに人がたくさんいるから助かるというのは、完全な誤解。


人数と緊急事態の関係

緊急事態が発生したときに周りにいる人たちの人数でその捉えられ方がいかに変わるかを調べた実験はいくつかあります。

どれも、人数が多くなればなるほど助かる確率が低くなることを示しています

てんかん発作を起こした人は助けてもらえるか?

ビブ・ラタネとジョン・ダーリーはたくさんの人がいればいるほど安全で安心が正しくないことを調べるために、次のような実験を行いました。

それは緊急事態を意図的に発生させ、周囲の人たちの反応を見るという内容です。

一人の学生をおとりとし、周りに人がいるところで、急にてんかんの発作が発生したフリをしてもらいました。

その結果、近くにいた人が一人の場合は85%の人が「大丈夫ですか?」と声をかけ助けようとしてくれたのに対し、5人もの人がいたときは32%の確率でしか助けようとしてくれませんでした

周りにいる人の人数助けてもらえる確率
1人85%
5人32%


異常な煙を火事と判断できるか?

別の実験では、意図的にドアの下から煙を漏れ出させてそれを見た人たちが消防署に通報するかどうかを調べました。

実験は次の3パターンで行われました。

  1. 1人だけで見つける。
  2. 3人が見つける。
  3. 見つけた3人のうち2人はサクラで煙を無視するように指示されている。

その結果は次のようになりました。

条件通報した割合
1人だけで見つける75%
3人が見つける38%
見つけた3人のうち2人はサクラで煙を無視するように指示されている10%

見つけた3人のうち2人はサクラで煙を無視するように指示されていた場合の通報率はたったの10%でした。

人緊急事態とおぼしきことが発生しても、周りの人たちが平然としていたら、自分も平然と振舞おうとする生き物であることがありありとわかります。

poin

周りにいる人が多ければ多いほど、助かる確率は下がる。


周りに人が多いときに助けてもらう方法

人数が多くなればなるほど助けてもらえたり、通報してもらえる確率が減ることを確かめる以外に、人数が多い場所でどうすれば助けてもらえるかを調べた実験も行われています。

あきらかな緊急事態と分かれば助けてもらえる

フロリダで行われた別の実験では、修理作業員が事故にあい怪我を助けを求めたときにどれぐらいの人が助けようとするかが調査されました。

その結果、1人や数人といった人数に関わらず、全員が作業員を助け出そうとしました

なお、パターンを少し変え、作業員を助けるために感電するリスクがある状況でも周りの人は手を差し伸べるかを調べたところ、ほぼ全員(90%)が作業員を助けようとしました。

つまり、多くの人がいるときに助けようとしないのは、その人たちが冷たいからではなく、確信が持てないからです。

point

明らかな緊急事態であることがわかり、助けを求められれば、人はリスクがあっても助けようとする。


指をさして助けを求める

明らかに出血するような怪我をしている場合は緊急事態であることが周りの人にもわかりやすくなります。

しかし、急な発作やめまい、痙攣など、うずくまって動けなくなってしまうような場合は、その人がただ座って休んでいるのか、緊急事態なのかがわかりません。

願っていても助けはこない

「誰かに助けて欲しい」とどんなに願ったところで、ほとんどの人たちは助けてくれないでしょう。

「この人はなにしてるんだろう?」と考えチラリと見ますがそのまま通り過ぎていきます。その様子を見た周りの人も同じようにチラリと見て通り過ぎていきます。


叫ぶだけでは不十分

「わー!」と叫んだり苦しそうなうめき声を上げるのでは、注意を引けるかもしれませんが不十分です。「なんだなんだ」という野次馬が目の前にできるだけです。

周りの人は倒れている人の様子を見ます。そしてそれを見た人たちも同じように様子を見ます。まだ何が起きているか確信が持てないからです。

それに「責任の分散」で「自分以外の誰かが助けるだろうと思っています」


指を出して指示を出す

そんな緊急事態でやるべきことは、次の2つです。

助けを得るためのやるべきこと
  1. 「助けて!」と言って緊急事態であることを伝える。
  2. 一人だけを指さして助けを求め指示を出す。

これだけで、ほぼ100%の確率で手を差し伸べてもらうことができます。


「助けて!」と言って緊急事態であることを伝える

まず初めにすることは、「助けて!」と言って緊急事態であることを伝えることです。

最も避けなければいけないことは、何が起こっているんだろう?と考えている人たちに「これは緊急事態ではない」と判断されてしまうことです。

注意を引き付けるだけでは不十分で「緊急事態が起こっている」ことを明確に伝える必要があります。

大騒ぎするのは周りの人に迷惑だし恥ずかしいことだなどと考えていてはいけません。

本当の緊急事態に直面している人を助けたくないと思っている人はいません。人は自分にできることがあるならなんとかしたいと考える生き物です。

恥ずかしさも一時です。死ぬ苦しみや、一生障害が残ったりすることを考えれば、恥ずかしさは軽いものです。


指をさして指示を出す

「助けて!」と叫んだことで、周りに人が集まってきてくれます。そこに居合わせた人が一人だけなら、その人が手を差し伸べてくれるでしょう。

ですが、人数が多かった場合は「誰かが助けるだろう」「他に適任の人がいるだろう」「既に誰かが救急車を呼んだだろう」という考えが生じて自ら動こうとする人はいません。みな傍観者になってしまいます。

これを防ぐために、大勢の中から一人選び出して次のように伝えます

「助けてください!そこの黒いメガネをかけているあなた。救急車をよんでください」


そうすることで、その人がこの緊急事態を自分事と考え、助けの手を差し伸べてくれるようになります。


まとめ

よくドラマなどで主人公やそのパートナーが倒れて亡くなった時に「なんで誰も助けてくれなかったんだ!」と叫んだりするシーンが描かれますが、それは決して手を差し伸べなかった人たちが、冷徹で無常で無関心だったわけではありません。

群衆心理により、それが緊急事態なのかどうか、自分が手を差し伸べるべきなのかどうかがわからなかっただけです。

自分が群衆側に回った時はよほど意識しない限り、他の人たちと同じ行動をとってしまうものです。なぜならそれは良い悪いではなく、私たちがそういう生き物だからです。

生存確率を上げるには、そういった人の心理を理解し、対応方法を知っておく必要があります。


参考

この記事の内容はアメリカの有名な心理学者 ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」の内容の一部抜粋と要約です。

現代のマーケティングで使われている手法が心理学の面から解き明かされ、たくさんの事例を交えてわかりやすい文章で記されています。

この本の内容を細かく知っているかどうかで、現代の市場に隠されているたくさんのワナにハマりカモになるのか、それを避けて利用する側に回れるのかが大きく分かれます。

気になった方は是非手に取って読んでみることをお勧めします。


yuta