現在に不満がある、幸福と感じられない、自分はもっとできるはずなのに、現状を変えたい。そんな様々な思いを持った人は少なくないと思います。
中国3,000年の歴史書として有名な史記には、賢く生きるためのヒントがたくさん詰まっています。「人」の性質を知り、より豊かに、より幸せに生きるために知っておくべきことが満載です。
そんな生きるためのヒントをシリーズで紹介します。
敵に攻め入られる時に、その前に上手く逃げて生きながらえられる人がいる。
それができるのは、敵が攻めることを画策した時に、教えてくれる人がいるからに他ならない。
時代の流れの中で、実力や軍事力で劣ってもいても覇者になる者が出てくるのは。助けてくれるものがたくさんいるから。
晋の統治者になった文公(元の名を重耳)は、父や弟に命を狙われていたことがあったが、その度に、そのことを教えてくれる人がいて、いち早く対策を打ち生き延びることができた。
これは、文公に人徳があり人を助けることを常としてきたから。
大事なのは与えてから、取ること。最初にたくさん与えていれば、自然とその元は取れてくる。
つまり、本当に大事なのは「自ら進んで与えること」
自ら進んで与えるから栄える。自ら進んで与えないから栄えない。
相手が困っていたら助けるのは当然のこと!と言って頭ごなしに教育されている昨今だが、相手が困っている時に助けることにはきちんとメリットがある。
相手が困窮して助けを求めてきた時に、手を差し伸べる。
将来的に、自分が同じ立場に陥って助けを求めた時に、その相手は要求を突っぱねて、あなたを滅ぼそうとしてくるかもしれない。それでも、相手を助けることには意味がある。
それは、あなたと相手の2者間がどうなるかではなく、その周りがどう思うか。
困っている者に手を差し伸べる人を周りは信頼する。ああいう人に上に立ってもらいたい。ああいう人が国を治めていくべきだと思う。
逆に、一時助けられたのに、相手を見放した人を見て、今後、もし自分が助けてあげたとしても、自分も同じように裏切られるだろうと考えるようになる。
1対1の関係では、自分は身銭を切ったのに、相手は何も返さず損をしたことになる。だが、未来を見渡せば、自分には10の味方が増え。相手は10の味方を失ったのと同じ。
つまり、相手を助けるのは相手に恩を得るためでも、相手から見返りを求めるためでもない。その行為が、将来、自分の立場を優位にしてくれるからなのだ。
逆に、自分が助けず、かつ裏切った側の者ならば、未来の自分の立場はどんどん貧弱になっていく。
相手に与えること、そして相手が裏切ること、この2つの条件が揃って、優位になる状況が発動する。2年や3年、いや、もしかしたら10年先。そこを見据えた投資が人を助けるということ。
相手から無礼講でいいですよ。と言ってきたときは、気楽でラッキーと思うのではなく、そういう時こそ礼儀を尽くすのが得策。
通常の状態で礼儀を尽くした時以上に相手そして、周りからも、「あの人は礼儀正しく、信頼できる人だ」と強く印象づけることができる。
斉の王 桓公は力を増し、周王室よりも権力が強まっていった。その中で、周王室から下賜(身分の高いものから低いものにものをあげること)があった時に、周王室は作法抜きでいいと申し出た。
桓公も自分のおかげで周王室が権力を保てていることを分かっていたため、そのくらい当然だと思っていた。
しかし、有能な側近の管仲から、次のように諌められた。
「そんな態度をとったら周りから見限られるでしょう。周王室の流れを組む人たちもいるので、いくら作法抜きでいいと言われても、相手を上に立てて礼儀をもって接するべきです。」
これに習って、礼儀をもってせっした結果、周りからの評価が大きく上がった。
三国志でも、曹操が漢の君子をないがしろにした時、君子を敬う物たちが怒りを覚え、結託して曹操暗殺を企てたこともある。
この時に臣下の例をとっていればまた変わっただろう。
自分が明らかに上な時に、下手に出て礼儀を持って相手を敬うことの効果はとても大きい。
世の中には自分の翌のために近づいてくるものがたくさんいる。その中でも、自分が気に入られるために家族や親族を蔑ろにする人、気に入られるためにあらゆる手を尽くして近寄ってくる人を信頼して側に置いてはいけない。
国を支え発展させてきた 優秀な政治家 管仲が、死ぬ間際に遺言として王に伝えた言葉がある。
それは、どういう人間を側に置いてはいけないか。
料理人だった易牙(えきが)は、あなたが一度、人間を食べてみたいと言った時に、自分の子供を殺してまであなたの機嫌を取り始めた。
これは人間の情に背きます。こういう人間を選んではいけません。
開方(かいほう)はもともと他の国の貴族の子でありながら、あなたに気に入られるために家族・親戚を捨てました。
これも人間の情に背く行為です。近づけてはいけません。
豎刁(じゅちょう)はあなたに気に入られるために、去勢(男の大事な部分を切り落とすこと)して重要な役職に付き、あなたがお気に入りの女性たちの力を借りて、あなたに近づきました。
このような人間を信任してはいけません。
この3人は、王のご機嫌を取るのが上手く、今では寵臣(お気に入りの部下)であった。
この3人は王に権力があるうちは自分も美味しい思いができるのでゴマをする。王も都合がいいので結局、管仲の言葉には従わなかった。
王が生きている間はよかったが、死んだ後が悲惨になった。
3人は自分の地位をより優位にするために、いうことを聞く無能な王の子に後を継がせようと策略した。
その結果、派閥ができ内部争いが絶えず、最終的にその国は見る影もないほどに衰えていった。
また、死んで権力の亡くなった王に利用価値がなくなり、3人はその死体を10カ月間放置し、死体はうじがわき、一代を築いた王の最後は惨めなものになった。
残念ながら、この王には自分の死後の世界を見通す能力がなかった。(長期的な視野がなかった)
この世には目先の気持ちよさ、都合の良さがたくさん転がっている。それを拾うも捨てるも本人の自由。
目先の感情には気持ちいい・楽というメリットがあるが、裏には、長続きしないというデメリットがある。
大局を見た選択には目先の気持ちいい・楽しいというデメリットがあるが、長期的により安泰になり発展していくというメリットがある。
後者の方が、常に夢や目標に向かって成長していけるため、心の充実度が明らかに高い。
誰かを遠ざけたいと思った時に、門が立たないようにするには、遠くの地で難しい仕事を作り出し任命すればいい。
「この仕事はとても難しい。誰もができることではない。私には頼れるのはあなただけだ。私はあなたなら成し遂げられると信じている」
そう伝えれば言われた方も悪い気もせず、喜んで遠ざかっていく。
晋という国の統治者 献公(けんこう)は自分の愛人との子を後継にしたいと考えたが、既にみんなから認められた優秀な3人の子がいた。
献公にとって、この3人は邪魔だったので、「国境に重要な地域がある。信頼のできるお前たちが守ってくれれば安心だ。その地に赴くことを命じる。」と言って、辺境の地に上手く追いやった。
多くの者が一国よ統治者になりたがり、血を血で洗う争いを続けてきた。
その中で、歴史にも大成功例として名があがる晋の統治者になった文公は、自分が統治者になりたいと思っていたわけではなく、むしろ、いくども権力争いから逃げ続けてきた。
なのに、その逃げ続けた者が、最後には統治者となり、国を安泰にして歴史にも名を残した。
文公は統治者になるためには何をしてきたのか?成功の秘訣は何なのか?
それは、上に立つ権利(血筋)を持っていたことと、困っている人を助け、家臣や家族をたちを大切にしてきたこと。
その結果、本人は統治者にもなりたくない、今の暮らしに満足している、ここから動きたくないと言っているにも関わらず、
「このようなお方をこんなところに埋もらせてはいけない」「私を殺して大業が成就するなら喜んで死にましょう。あなたは、一国のみならず多くの国の上に立つお方です。」「私はあなたをこのまま終わらせたくありません。それが嫌なら私の首をはねてくだはい。」
周りにそうまで言われて、動き出し、そして最終的に統治者になった。
自分の意識なんかではなく、周りの意思。周りがその器量を心底認めていたから統治者になれた。
もし、力技で周りを押さえつけ上に立ったとしても、そこに反発する者がたくさんいて、機会があればその地位から引きずり下ろされるだけ。その時は難を乗り越えても、その危機を常に意識しながら生きていかなくてはいけない。
力で認めさせた地位に安定はない。
今の時代、グループの中でも、会社でも、誰もが血筋に関係なく上に立つ権利を持っている。安定して上に立つには、周りがこの人に上に立ってほしいと認めること。そのためにできることは、自分の実力を見せつけることではなく、周りを助けること。周りを大切にすること。
この内容は、「横山光輝(よこやまみつてる)」さんの、「史記(しき)」で書かれている内容です。
史記?中国の歴史所でしょ?なんか古臭くて、お固くて、現代人には必要ないね。時代遅れ。なんて思わないでください。
絵はシンプルで、とにかく読みやすくて、人間模様がありありと書かれています。
内容は、人が死ぬときは死ぬ、陰謀が成功するときは成功する、才能ある人も時代の流れにあわなければ滅びる、時代の流れに合えば悪いやつも成功する。そんな歴史上の事実がそのまま描かれています。
脚色されすぎたり、大人の都合で大幅カットされているわけではないので、学びも多いです。
この諺の内容はたったの数ページ(全体の0.05%)。また、記事は厳密さよりも、「わかりやすく興味を持てること」を重視しているため、もっと詳しくしりたい!と思った人はぜひ手にとってみることをお勧めします。
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