時間に関する哲学書を読んでいる時に「クロノス」と「カイロス」と言う言葉を耳にすることがあります。
どちらもギリシャ神話において時を司る神です。ですが、表している時の内容が異なります。
ここではクロノスとカイロスの違いについて解説しています。
クロノスは白髪の老人の姿で表されます。
時計の針や、スマホが示す時間のように私たちが普段「時間」と呼んでいるものを意味しています。
例えば、2021年10月1日 10時23分54秒がクロノスです。
数値や量として足し合わせたり計算することができます。
カイロスは前髪しかない青年です。
私たちが「今だ」と感じるタイミングのようなものを表しています。
「チャンスの神には前髪しかない」というのはカイロスのことです。「今だ」と思った瞬間につかみ取らないともうそのチャンスを手にすることはできないという意味です。
クロノスが量や客観であるのに対し、カイロスは質や主観を表しています。
私たちは時計であるクロノスを基準にして生きています。
「何時までに学校や会社に行かなければいけない」「5年後にはこうなっていたい」「3年前のあの出来事が忘れられない」といった思考です。
ですが本来私たちの中にはクロノスはありません。あるのは「今がその時だ」「まだ違う」といったカイロスだけです。
私たちの中にはカイロスしかないということは、私たちは「今を生きることしかできない」ということを意味しています。
私たちは未来にも過去にも触れることはできません。
行動を起こせるのは「今」だけです。
ですが、あまりに多くの人が「未来」や「過去」のことばかりに気を配り、「今」を生きていません。
「今」を生きているように見えても、「〇年後には」「いつかは」と言って未来ばかりを見たり、「あの時にああしておけば」「昔はよかったのに」といって過去ばかりを見ています。
心ここにあらずと言う言葉がありますが、多くの人が心ここにあらずの状態で、それが普通になっています。
過去や未来を考えることは自分の持っているエネルギーをここではないどこかに分散させているのと同じです。
「今」しか持っていない私たちにとって、持っているエネルギーを100%「今」に注げないことは致命的です。
最良の未来のためにできることは「今この時に集中すること」です。
そして、最良の過去は、最良の未来のために今この時に集中した結果自然にできるものです。
世界的に有名な禅僧のティック・ナット・ハンは次のように語っています。
生は今この瞬間にある。今この瞬間をないがしろにする人は、日々を十分に生きることができない。
クロノスは便利です。便利ゆえに世界中に溢れかえり私たちの生活を支配しています。
外から与えられるクロノスではなく、私たちが本来持っているカイロスに集中することこそが、未来と過去を切り開く力になっています。
あなたがカイロスに集中して、より良き人生を手にすることを心より願っています。
この記事はAppleやGoogle、FacebookやTwitterなどの世界的に有名な企業でコンサルティング経験のあるグレッグ・マキューン(Greg・Mckeown)氏の「エッセンシャル思考」という本の一部要約と抜粋です。
世界的ベストセラーになったこの本には他にも人生を成功と幸せに導く格言がたくさん載っています。
興味を持たれた方は是非実際に手に取ってみることをお勧めします。