「一利を興すは、一害を除くにしかず」の意味は、何か利益を得るには、新しいことを追加でやろうとするよりも、生涯になっていることを取り除く方がいいという意味です。
「一利を興すは、一害を除くにしかず」の由来は、チンギス・ハン率いるモンゴル帝国の中でも、政策のトップを務めた耶律楚材(やりつそざい)という人物が常々口にしていた言葉です。
日本人の私たちは、モンゴル帝国やチンギス・ハンと聞くと元寇や神風を思いうかべてしまい、モンゴル帝国は日本から去っていったじゃんと若干バカにしてしまいがちですが、侮ってはいけません。
モンゴル帝国は、世界史の中でも大英帝国の次に大きな領土を築いた国です。その領土たるや広大で、中国からヨーロッパまでを含みます。
それだけの偉業を成し遂げた国の政策のトップが言う言葉です。これほどに重みのある言葉はなかなかないでしょう。
例えば、工場で製品の生産性を上げるというと「より多くたくさんのことをこなす」「作業効率を上げる」という考え方をする人がいますが、これは「一利を興すは、一害を除くにしかず」の真逆です。
「一利を興すは、一害を除くにしかず」は、現在最も流れをとめていることを突き止めそれを解消することこそが効果を発揮するという考え方です。
なお、不具合の原因になっている事柄をボトルネックといいます。
ボトルネックとはビン(ボトル)の飲み口(ネック)のように細くなった部分です。ボトルネックのように細くなったところが1ヵ所でもあると、そこで全ての作業や流れが制限されてしまいます。
つまり、「一利を興すは、一害を除くにしかず」は「ボトルネックを取り除く」とも言い換えることができます。
生徒や部下の学習意欲をあげるときも「一利を興すは、一害を除くにしかず」の考え方はとても重要です。
学習に対するモチベーションが低い人に対して、外からモチベーションを与えようとしても空回りすることがほとんどです。
例えば、上司が「私はとても熱心に教えるいい上司だ」と自負して、部下に夢を語り次から次へと新しいことを熱心に教え込もうとしても、それが部下のモチベーションにつながるとは限りません。
むしろ「もう疲れた。いい加減にしてくれよ」「この人熱くてうっとおしいな」と思ってモチベーションは低下するかもしれません。
そういったときは、外からモチベーションを与えようとするよりも、その人のモチベーションを下げているものを取り去る方がよほど効果を発揮します。
仮に疲れがたまっていることが原因であれば「今日は疲れてそうだから、早めに終わってゆっくり寝て」と伝えたり「疲れてそうだから、これ飲むといいよ」といって差し入れを上げる方がモチベーションの回復に効果を発揮します。
「一利を興すは、一害を除くにしかず」は「ボトルネックを取り除く」といった類似の意味をもち、問題を取り除くことの重要性を教えてくれる諺です。