私たちの文明は大きく進化してとても便利になりました。スマホ、PC、インターネット、Wi-Fi、様々な食糧品、外食チェーン店などなど、とても豊かで幸せな状態と言っても過言ではありません。
ですが、現実はその文明の進化についていけず、たくさんのストレスを抱え、 肥満、高血圧、不眠、だるさ、慢性的な疲れ、集中力不足、うつなど様々な慢性病に悩まされています。
これらの悩ましいストレスや病気は、薬を飲んだり病院に行って治療を受けて個別に治せるものではありません。
生活環境と人体のミスマッチが原因で起こっているので、意志の力でどうにかできるものでもありません。
根本的な原因である生活環境を改善することが唯一の治療法です。ここでは、私たちの体にあった環境の整え方について解説しています。
最強の環境を作る方法の前に、なぜ環境を整えることが大切なのかについて興味深い実験結果があります。
Googleがオフィスの環境設計によって人の行動がどれだけ変わるかを調査したものです。
実験の内容はドリンクバーの近くにスナック菓子を置いた場合と、離れて置いたときに、社員がどれぐらいのスナックを食べたか?という簡単な実験です。
結果はドリンクバーの傍にスナック菓子を置いておくと、ドリンクを取りに来たほとんどの社員がついでにスナックもとっていきました。
同様に食堂で、通り道にサラダバーを置いた場合と、ちょっと遠いところにサラダバーを置いた場合に社員のサラダの摂取量がどれだけ変化したかを調べたところ、
通り道にサラダバーを置いておいた方が社員のサラダの摂取量が増えました。
この実験内容と結果を聞けば「それはそうでしょ」と思う人がほとんどです。なぜならすぐ傍にあるものを取るのはとても簡単で、遠くにあるものを取りに行くのはめんどくさいからです。
これはどんな人でも当てはまる人の習性です。つまり、この習性を利用すれば簡単に行動を変えることができます。
意志の力で頑張ってラーメンを食べるのを我慢したり、ゲームをしないように我慢する方法は続きません。意志の力を使うことで判断力を失っていきます。我慢しているのでストレスも溜まります。
ですが、環境作りを正しくしておけば、悪い習慣は勝手に遠ざかっていきます。
意志の力を使って我慢する必要がなくなります。だから長期間続けることができ習慣化にできるのです。
しかも上の2つの例のように、やることは悪いものを遠くにおいて、いいものを近くにおくだけです。環境設計とは実はとても簡単なことです。
環境を整える大切さがわかったら、次はいよいよ様々な慢性的な病気を改善し、最高のパフォーマンスを発揮するための環境の整え方です。
整えるべき環境には体の内側と外側の2つの側面があります。
ここでは、体の外側の環境を整える方法について解説しています。ストレスを取り除き、回復力を高め、最高のパフォーマンスを引き出すために重要なのは次の4つの環境と習慣です。
なお、体の内側の環境を整えるには特に「腸」の環境を整えることが大切です。腸内環境を整える方法については下記をご参考ください。
自然は心を癒してくれるということはみんな知っていることです。実際に自然には人を癒す効果があります。
にも関わらず、私たちの身の回りには自然があまりにも足りていないのが実情です。
私たちの体に起こっている慢性的な病気は文化の進化と私たちの体のミスマッチによるものです。特に、急速な文明の発達で私たちの周りから姿を消してしまったものが自然です。
狩猟採集を行っていた時代は人は自然の中にいて、とても近い関係でした。何万年も自然の中で暮らしてきた私たちの体は、自然に適合するようにできています。
自然は私たちの体に様々ないい効果をもたらします。特に大きな効果が副交感神経を活性化させることです。
副交感神経は私たちをリラックスさせる効果があります。
自然のリラックス効果を知る方法はとても簡単です。自然が全くない環境を想像するだけです。
窓の無い四角くて何もない部屋に誘導されて、その中でずっと過ごしている自分を想像してみてください。まったくリラックスすることができません。
ドアから出ると、緑色の草原と青い空、白い雲が広がり爽やかな風が吹く環境が広がっていることを想像してみてください。とてもリラックスできたのではないでしょうか?
これが自然がもたらす効果です。
自然に感情への癒し効果を理解する前に、そもそも私たちの感情は何でできているかを知る必要があります。
私たちには喜怒哀楽、恐れ、驚き、嫌悪など様々な感情がありますが、大きくわけると次の3つに分類することができます。
興奮や快楽を感じると脳内でドーパミンが分泌されます。
満足感や安心感を感じると脳内でオキシトシンが分泌されます。
脅威や警戒心など、不安や緊張、恐怖をを感じると脳内でアドレナリンが分泌されます。とてもストレスフルな状態です。そしてアドレナリンを抑えるためにコルチゾールが分泌されます。
3つの感情の中で、現代人に足りていないのはもちろん、満足や安心をもたらすオキシトシンです。
常に、快楽か警戒のどちらかの状態になっている人がほとんどです。
ゲームや動画、街に出たり、友達と遊んでドーパミンをドバドバだし、家に帰ると「お金がなくなったらどうしよう」「私の人生はこのままでいいのだろうか」「仕事が終わっていない」という不安にさいなまれたり、SNSを見て「あのヤロー!」「羨ましい!」「ズルい!」という戦いのアドレナリンが分泌されている状態です。
「リラックスするな~」「落ち着くな~」という感情が抜け落ちています。
自然はリラックスを司る副交感神経を高めてオキシトシンを分泌します。
だから自然と触れ合ったり、自然を想像するだけで私たちの感情は満足や安心を感じた状態になります。
もちろん自然がすぐ身近にあるのがベストですが、そんなにすぐに自然と触れ合える環境にいないという人も多いです。
その場合は応急処置として、画像や動画を見る、あるいは音を聞く方法もあります。
先ほどの想像の例のように画像や動画で自然を見るだけでもオキシトシンが分泌されます。
鳥の鳴き声や川のせせらぎ、波の音といった自然の環境音を聞くだけでも脳が自然をイメージしオキシトシンを分泌します。
応急処置ができたら、仕事終わりに近くの公園に行ってオキシトシンを分泌させます。
そして休日はアウトドアやキャンプに行ってセロトニンを十分に分泌します。
これだけやってようやく、日ごろから私たちがため込んでいる興奮(快楽)や脅威(警戒)を和らげ、安心や満足を感じた状態を得ることができます。
ストレスの無い環境を手に入れるためには家族と少数の友人の存在がとても重要です。
友人を作るというと「人見知りで」「知らない人と話すのは苦手」と言う人はたくさんいます。これは特別なことではなく誰もが人見知りです。
人は何十万年もの間、家族を中心とする小集団で生活をしてきました。多くの不特定多数の人とつながることはない環境でした。
このため、そもそも人は知らない人と仲良くなるようにはできていないからです。
あまりに多すぎる人間関係は逆にストレスになることが多いです。
ではどのくらいの関係性がいいかというと、家族と親友5人ぐらいが落ち着く普通の人間関係と言われています。
たくさんの人間関係を作るよりも身近に深い関係の人がいる方が、ストレスが減り穏やかに暮らすことができます。
友人と呼べる人がいないという人も安心してください。人の特性を使えば友人は比較的簡単に作れます。
友人を作るポイントは次の3つです。もちろん、友人を作る以外にも家族の関係性を深めるためにも使えます。
深い人間関係を作るための基本はまず、一緒にいる時間(接触時間)を長くすることです。
人は初めての人と急に仲良くなれないようにできていますが、一緒に長い時間過ごす人とは仲良くなりやすいようにできています。
いわゆる「慣れる」という状態です。
一緒にいる時間は相手と「同じ行動をする」ようにします。キャンプに行くのであれば一緒に行く。映画を見に行くのであれば一緒に見に行くようにします。
相手はキャンプに行って、私は家で映画を見ているという別々の行動をしていては関係は深まりません。
一緒に時間を過ごして、同じ行動をした人がみんな友人など深い関係になるわけではありません。
一緒に行動することで相手の特徴や性格がわかってきます。その中で「この人は私を裏切らない」「この人は私にウソをつかない」と言う人を見つけます。それが友人です。
決して、「お金を持っている」「才能がある」「一緒にいると得をする」という基準で選ばないことです。
深い関係を持つ人を選ぶベースは「信頼」です。そのためには、まずあなたが相手を信じて誠実であることから始める必要があります。
「私はお金がないけどあなたを裏切らない」「私は才能があるわけじゃないけどあなたにウソをつかない」というメッセージを伝える必要があります。
そのようにして信頼の置ける人を周りに置くことが、満足感や安心感をもたらすオキシトシンを分泌し、ストレスを取り除いてくれます。
自然に触れて、信頼のおけるか家族や友人を身の回りに置くだけでもストレスがかなり和らぎます。
ですが、これはストレスの緩和であって体や精神の回復ではありません。体を回復させるためには睡眠が重要です。
現代人が抱えている慢性的なストレスは、恐怖や不安を感じたときに分泌されたアドレナリンを抑えて緊張を和らげるコルチゾールを無効化することがわかっています。
つまり、慢性的なストレスを緩和していかないと常に恐怖や不安を感じる状態になってしまいます。
この慢性的なストレスを緩和するのが睡眠です。
睡眠が足りないと体の損傷がどんどんと進んでいきます。そして、その睡眠に関してよくある勘違いが「昨日2時間足りなかったから、今日2時間多めに寝る」という考え方です。
睡眠が1時間不足したら、1時間多く寝ればいいという1:1の関係をイメージしています。実際はそうではありません。
睡眠が足りないと、回復しきれなかった体は起きている間もいつも以上にダメージを受け続けます。
睡眠が不足した場合に必要になる睡眠時間は雪だるま式に多くなっていきます。
更に怖いことに、睡眠負債には自覚症状がありません。だからこそ、睡眠負債が危険なのです。
特に、次のような言葉を言っているひとは特に注意が必要です。
「昨日はよく寝たから、今日は夜更かししても大丈夫」
「週末に寝だめしてるんで大丈夫です!」
睡眠負債が溜まっているか、自分の睡眠の質が高いものかは自分ではなかなかわからないものです。
良質な睡眠がとれているかは次の5つの質問で簡単にチェックすることができます。
具体的に何時間寝ればいいかというと7~9時間です。睡眠時間が7~9時間であれば人は寝ているといえます。逆に、6時間以下の場合は睡眠時間が足りていません。
他にも、
このような人は睡眠の質が悪く改善する必要があります。
特にお酒を飲んでいる人は改善が必要です。お酒は良質な睡眠を破壊する一番の原因です。
睡眠の質を高めるポイントはいくつかありますが、特に重要なのがメラトニンを生成することです。
メラトニンは体内時計を調整する役割を担っています。日中元気で、夜に眠くなって寝れるのはメラトニンのおかげです。
メラトニンは私たちが古来から受け継いできた非常に強力な武器です。メラトニンの生成条件は次の2つです。
「光」とどう接するかがとても重要です。
日中にあまり外に出ず、夜遅くまで蛍光灯やスマホ、PCなど光を浴びている場合はメラトニンはほとんど生成されず、睡眠の質は悪くなります。
また、日中に浴びるべき光は「太陽光」です。蛍光灯の光と違って、太陽光にはさまざまな波長の光が含まれています。これがメラトニンを分泌するために重要です。
外が曇っている日や、あまりにカンカン照りだと日焼けが嫌だと言う人もいます。ですが、曇っていたり日陰でも、太陽の光は吸収できるので問題ありません。
ストレスを軽減するためには運動も大切な要素です。
ですが、高級ジムでパーソナルトレーナーと契約する必要も、フットサルやバスケを定期的にやる必要も、毎日5km走る必要もありません。
ただ、早歩きするだけです。誰でも無料で簡単にできます。しかも時間はたったの12分です。
通勤・通学で十分にまかなえる量です。
最新医学と最先端の知識と頭のいい研究者たちが集まって導き出した回答を簡潔にまとめると、
超普通のことばかりです。そして誰もが「そんなの知ってるよ」と言うことばかりです。
その知ってる普通のことができていないから、あなたの体と精神はボロボロになっているのです。
でもその超普通なことができないのはあなたのせいではありません。文明があまりに進化しすぎてしまったことが原因です。
意志や努力の力ではなく、環境を整えて、あなたの体調が回復し、最高の人生を送れるよう心より願っています。