メディアなどで地球温暖化が叫ばれるようになり、北極の氷が溶けだしているという話を知っている人はたくさんいます。
ただし上昇する気温は過去100年間で0.3~0.6℃、この先100年後でも2℃程度と、数値で見るととても小さいように見えます。
更に自然豊かな日本に住んでいると地球温暖化による直接的な影響は「最近暑くない?」ぐらいに感じている人も少なくありません。
そんな日本でも地球温暖化による被害は影響は明らか大きくなっています。それが超大型台風や洪水です。
一見すると地球温暖化とは関係がないように思えます。
ここでは、地球温暖化により日本に今起こっている直接的な被害について簡単にまとめています。
地球温暖化は台風の力をより強くする影響があります。
実際、2019年には3つの大型台風が相次いで発生したことにより大きな被害が出ています。
台風は夏ごろになると昔から発生するものでした。これまでの台風は沖合で発生し日本に近づくにつれてだんだんと勢力を弱めるものでした。
それが温暖化によって日本上陸まで勢力を維持するようになっています。
台風が強さを保つのは海面水温が温かいことが原因です。具体的には27℃以上である必要といわれています。
近年の海面水温は日本付近でも30℃になっており、30年前と比べて温度上昇が明らかになっています。
日本近海の海面水温の上昇はここ100年の間に1.16℃上昇しました。これは、世界平均の2倍以上になっています。
空気の温度が1℃あがるごとに空気中に含まれる水蒸気の量が7%増えるといわれています。
このため、海面の温度が高ければその上に溜まっている水蒸気の量も増えます。
台風は海面上にある水蒸気をポンプのように上に吸い上げてどんどんと蓄え威力を増していきます。
このため、海面温度が上がれば上がるほど発生する水蒸気の量が更に増えるので台風は強さを増していきます。
空気の温度が1℃あがるごとに空気中に含まれる水蒸気の量が7%増えるのは海上だけではありません。地上も同じです。
このため、気温が上がれば雨雲のパワーも増し降雨量も増えます。
実際に滝のような激しい雨(降雨量50㎜以上)が降る回数は40年前と比較して1.5倍に増えています。
1時間80㎜以上の更に猛烈な豪雨が降る回数は約2倍になっています。
実際、2018年7月に発生した西日本豪雨では膨大な被害が出ています。
被害総額は1兆1580億円と推測されています。
気温と洪水が発生する割合の関係は次のようになっています。
気温が2℃上昇すると降雨量は約1.1倍増加し、川を流れる水の量は1.2倍になり、洪水の頻度が約2倍になるといわれています。
気温が更に+2℃上昇して4℃になると洪水の発生頻度は4倍になるといわれています。
大雨が降ると地盤がゆるみ土砂崩れが発生しやすくなります。毎年夏ごろになると土砂崩れによる悲惨なニュースが飛び込んできます。
土砂崩れを防いでくれるのは山に根を張る木々や草です。
ですが日本は戦後元々生えていた広葉樹を抜いて、4割をスギやヒノキなどの人口林に変えてしまいました。
スギやヒノキなど人口林は加工しやすく、家や家具の材料として重宝する反面、育てるには手間がかかります。
定期的に細い枝を切り落とす間伐が必要です。間伐をしないと十分な日光が得られず補足ひょろひょろとした細い木になったり、病気になって芯が腐ったりします。そして風や雪に弱い木になってしまいます。
台風や大雪が来ると弱った木が倒れ、電線を切断し大規模停電に至ることもあります。
間伐がされていない人口林は地面に太陽光が届かず草が生えません。
このため、大雨が降ると何も覆われていない土が簡単に流され、土砂災害などを引き起こしやすくなります。
1945年以降の戦後から、1970年代の高度経済成長期にかけて国内における森林の需要は非常に高く、スギやヒノキが高く売れました。
このため、お金を儲けるビジネスとして林業が盛んに行われました。ですが、日本の工業が発達し財政が潤ったことと、法改正により木材の輸入が全面自由化になったことで、海外から木材が大量に輸入されるようになり、国内のスギやヒノキの値段がどんどんと下がっていきました。
木材が安く手に入るようになり多くの国民が安く木材製品や家を手に入れられるようになった一方、林業はもうからないビジネスとなり多くの人が林業から、より儲かるビジネスへと鞍替えしていきました。
当然若い人も儲からない林業を継ごうとはせず、都会へと流れていきました。
実際、森を手入れして気を山から切り出してくる費用の方が高くつき、木を伐り出すだけ赤字が増えるという状態も珍しくありません。
更に、頑張って林業を営んでいた人たちの高齢化も進み、手入れが困難になるなど、手入れされない森がどんどんと増え続けています。
日本は森林が多く自然豊かな反面、人工的に手を加えすぎたことが原因で自然災害を招きやすい危険な状況に陥っています。
日本のビジネス的な側面に加え地球温暖化による大雨によって、日本は大きな災害リスクを抱えた国になっています。
地球温暖化が進み気温が上がれば、当然夏の暑さはさらに増します。
最高気温35℃以上の猛暑日の数はここ数年で大幅に増加しています。
▼猛暑日(35℃以上)の日数
国内だけでも2020年に熱中症で救急搬送された人は6万5千人、死者は1,433人に上っています。
▼熱中症による死者数の推移
昔は夏でもクーラーをつけないことがエコだと言われていましたが、最近では熱中症患者数や死者数の急増もあり、クーラーをつけることが推奨されています。
クーラーをつければ電気を使います。気温が暑ければ暑いほど設定温度まで室温を下げるためにクーラーは電力を必要とします。
日本の電力の75%は火力発電なので電気を使えば使うほどCO2を排出します。
CO2を排出すれば地球温暖化は更に進みます。
この悪循環が当たり前のように行われてしまっているのが現状です。
地球温暖化は決して北極の氷が溶けてホッキョクグマが困ったり、どこかのよく知らない土地が浸水するだけではありません。
日本にも大きな被害と死者をもたらしています。そして現状のまま行けば、その割合は更に増えていきます。
我々が少しずつマイナスを積み重ねてきたのと逆で、少しずつCO2を減らすプラスを積み重ねていかない限り現状はよくなりません。
現状のままでも私たちやその次の世代が地球でいきていくことはできるでしょう。
ですが、その次の世代など子供たちにバトンをつなげばつなぐほどより生きにくい世界、あるいは生きることが困難な世界になっていってしまいます。
「自分たちがやったところで中国やアメリカがやらなければ意味ない」と言う人たちがいるのは悲しいことですが、それでは何も変わりません。
歴史はいつも小さな動きがだんだんと大きくなって変わってきました。未来の子供たちのためにも私たちにできることはあります。
私たちは自然に生かされて、そして最後は自然の中に帰っていきます。
これから先の未来にプラスになることを積み上げていく人が少しでも増えることを心から願っています。
この記事は環境省 気候変動対策検討委員の山口豊さんが書いた「再エネ大国日本への挑戦」の内容の一部を引用&参考にしたものです。
本書は他にも再エネの細かい事例や日本で起こっている災害の状況が記されていてとても魅力的な内容となっています。
本記事に少しでも興味を持たれた方は実際に手に取ってみることをお勧めします。