地域活性化が叫ばれている昨今です、国や地方の大金が地方再建に使われています。ですが、実際に地域が活性化して活気が蘇った地域というのは稀です。
その原因には地域活性化で実施する事業のテーマそのものの選び方が間違っていることが多くあります。
ここでは、地域活性化の事業テーマ選びで注意すべきポイントを失敗事例を踏まえて解説しています。
地域活性化で実施するテーマを選ぶときに、よく犯しがちな間違いがあります。
ここでは事業を考えるうえで注意すべき8つの勘違いをピックアップしています。
地域活性化のためのテーマ選びで、先進的な地域を視察に行き「ここで上手くいっているなら、うちでもやってみよう」と成功事例を自分の地域にそのまま持ち込むパターンは高い確率で失敗します。
失敗につながる理由は大きく2つあります。
地域毎に持っている自然や都市などの資産、気候・地形、住人の特性などが異なるため、そこで展開する事業も地域に合った内容である必要があります。
このため他地域の成功事例をそのままもってきても、地域に合わず上手く拡大していきません。
成功している事業というのは、地域に根差したり実現してしまえば簡単なことのように見えますが、そこに至るまでには工夫や技術が必要となります。
シンセンのようにITに特化した町作りを目指す場合でも、各情報をIT上で連動させたり、すぐにバグを修正するといった技術が必要になります。
スマホ工場の視察に行って、「成功しているから、自分の町でもスマホを作ろう」と言ってすぐに作れるものではありません。
施策の有効性を検証する上で「実質的な経済効果」が取りざたされることがあります。
「経済効果10億円!」と言われると「すごい効果だ!」と考え、「私たちの地域でもそれをやろう!」となってしまいがちです。
例えば、地域活性化で一時期ゆるキャラがブームになったことがあります。熊本県のくまモンは2013年に「1000億円超えの経済効果」とうたわれました。
この大成功を真似して、他県もゆるキャラ戦争に乗り出しました。
もちろん都道府県をあげて参戦するので、その費用は税金から捻出されます。ですが、どの県でも同様の経済効果があったかというとそうではありません。
既に二番煎じであることはもちろん、最も大きい点は、ゆるキャラにより商品棚からなくなった商品がたくさんあるということです。
ゆるキャラだけの売上で見ればプラスかもしれませんが、その裏にはこれまで収益を上げていた製品の置き換わりによるマイナスがあります。
熊本県も同じです。くまモンにより「1000億円超えの経済効果」がありましたが、その裏には必ずなくなった商品分の損失があります。
地域はその合計で実際の経済効果を判断する必要があります。経済効果とその金額に騙されてはいけません。
地域活性化というと「とにかくたくさん人が来て盛り上がってくれればいい」と考える人がいます。上限がない青天井という考え方です。
ですが、お店、観光地、宿泊施設など必ず上限があります。
大々的なイベントを開催して1万人の人が集まったとして、宿泊施設に3000人のキャパしかなければ、7000人は外へとあふれ出てしまいます。
大人数が押し寄せれば町の人たちは混乱し疲弊します。混乱し疲弊している人から受けたサービスが観光客を満足させることはありません。
一度そういったサービスを提供してしまうと「また来たいね」と思わせるどころか、「もういいかな」と思われてしまいリピーターになってもらうことはできません。
キャパオーバーを続けてしまうことは長期的な目線で大きなマイナスとなります。
宿泊施設や観光地の数に上限もありますが、もちろん人の数、地産の食糧や商品の数にも上限がありあます。
一時的なイベントに合わせて、一時的に大きな投資をしたとしてもブームが去ってしまえば、それらは不要になり、時間と共に維持管理費だけがどんどんと流れ出ていきます。
商品やサービスを売り出すときに、より消費者の多い全国向けに展開しようと考えることがあります。もちろん地域のみで展開するよりも消費者の数はグンと多くなります。
ですが、同様に競合の数も多くなり、投入されている金額も跳ね上がります。
例えば、ゆるキャラは全国規模のキャラクターグッズ販売です。日本全国にはキャラクターグッズを販売しているメーカーがたくさんあります。他県でもゆるキャラの促進に大金を注いでいます。
そこに参加するとなると、いいデザインやいい広告づくりなど資金と労力を大量投資せざるを得なくなります。
いきなり全国区に挑戦するとは、基盤が何もない状態で熾烈な争いに飛び込むのと同じです。
まずは、地域の課題と向き合い、確実にニーズのあるところからスタートし、改善を加えて徐々に全国に進出するというのが本来とるべき戦略です。
地方創生には国や地方自治体が補助金などの予算を割り当てていることが多くあります。
新しい事業を立ち上げるときに、よく犯しがちな誤りは「予算や補助金がつくからやる」という考え方です。
例えば、予算が付きやすいものに「地元の特産品開発」があります。
地元でとれる野菜や果物(原材料)を加工して特産品を作ることができれば、原材料の状態よりも高い価格と利益率で販売することができるため予算が付きやすくなっています。
ですが、スーパーの食品棚を見ればわかるように、日本国内に美味しい食料は山のようにあります。一流の食品メーカーがしのぎを削って日夜研究開発を行っています。
そこにパッと出の特産品で勝負を挑むのはとても難易度が高いことです。そもそも仕入れてすらもらえないこともほとんどです。
実際にニーズがあり売れるのか?という事業の大前提を考慮せずに、予算や補助金がつくという理由だけで開始してしまうと、お金・時間という貴重な労力だけをどんどんと消費して無駄に終わります。
地域で事業を起こすときにまず考えがちなのが「大量にある資源の有効活用」です。
大量にありすぎて有効活用していかないと、災害などのリスクにつながるのであれば対応していく必要があります。
ですが、ただ資源があるから有効活用するというのであれば失敗する可能性が高いです。
なぜなら、そもそもそこに課題やニーズがないからです。作ったものの結局売れないという状態に陥りやすくなります。
もう一つ地域特有の資源で犯しがちな過ちは「自分たちの資源が一番いい」という思い込みです。
例えば、特産品をつくる場合に、自分たちの自慢の原材料が一番おいしいから、これを使えばもっと美味しいものができるという考え方です。
ですが、他の地域に住んでいる人もみんな「自分たちのモノが一番いい」と思っています。
「自分たち」という目線で物事を見ていて、「消費者」の立場に立っていません。
現実問題、自分たちの地域で作っているモノよりも美味しいものがあり、加工に適した原材料が他にある場合がほとんどです。
その点を踏まえて、大量にある資源の有効活用ができるのか?その製品やサービスはニーズがあるのか?課題解決につながるのか?という視点で考えることが大切です。
地域の特産品など「地域ブランド」にすれば売れると考えている人がいますが、決してそんなことはありません。
地域ブランドなしで売れない商品は、地域ブランドをつけたところで売れません。
逆に、地域ブランドで売れている商品は、地域ブランドを外しても売れることがほとんどです。
地域ブランドは購入のきっかけにはなります。そこから本当に売れるかは、そのモノやサービスが本当にいいものである必要があります。
大して良くないモノやサービスを地域ブランドにしてしまうと、SNSなどを通じてマイナスな評価が拡散し、その地域全体の評価を下げることにつながります。
地域活性化や地域特有のブランドを作るときにコンサルタントを入れて検討することがあります。
ですが多くの場合、コンサルタントはその地域に根差した人ではなく、全国どこでも展開できる汎用的なアイディアを、卓越したトークとプレゼン力でそれっぽく提示します。
更に悪いことに、コンサルタントの目的は地域活性化ではなく、補助金をとること、自分の実績を上げることに目が向いている場合がほとんどです。
コンサルタントはそのビジネスに永久的に関わるわけではありません。最初の立ち上げ時に関わり、後は都度契約料を払って、利益をあげるビジネスモデルです。
上手くいかなければ次の依頼の資金を捻出することもできません。予算が終わり儲けがでなくなればコンサルタントも去っていきます。
その事業の損失をコンサルが被ることはありません。被るのあなたや地方自治体です。
コンサルタント頼みで進める事業は絶対に避けるべきです。
地域活性化のためのテーマ選びにやってしまいがちな間違いが多くあることがわかりました。これらを踏まえるとどういったテーマを選ぶべきかの基準がわかりやすくなります。
まずテーマ選びの大前提として、他ではやっていない自分たちの地域に合ったテーマにする必要があります。
どこでもやっているものを取り入れたところで、他の地域でも取り入れられるので新鮮味がなくなく、競合も多く、長期的な成功は難しいためです。
ここでは取り組むべきテーマを選定する際のポイントを5つ紹介しています。
その地域が抱えている課題とは、まさにその地域特有のことです。もちろん似たような課題は他の地域にもあるかもしれませんが、既にその地域にニーズがあるので事業を展開させやすいことは間違いありません。
例えば、薪ストーブの薪づくりは、かなりの肉体労働で年輩の方には難しい、かと言って割ったものを購入するのは高いという課題があったとします。
この課題は日本全国どこでも当てはまるものではありません。薪ストーブを使って生活している地域はごくわずかです。
このように、その地域で住民が抱えている課題にフォーカスすれば、自ずと地域固有のテーマになっていきます。
先進的な地域や成功している地域を参考にせずともテーマを選ぶことはできます。
地域の課題とも被る部分がありますが、その地域が抱えている問題を解決するために作り出したサービスが、購入してくれる消費者に本当にニーズがあるか検証することも大切です。
テーマ選びの時に「自分たちの地域にある資源や課題にのみフォーカス」して消費者のことを考えないのはテーマ選びのよくある間違いの一つです。
事業の流れを「作ってから売りに行く」から「ニーズがあるから作る」に変える必要があります。
このため事業テーマを考える段階で、生産者・加工者・公務員など地元の人たちが集まって考えるのではなく、実際に販売する人と消費する人も巻き込んで話を進めていくことが大切です。
製品価格も同様にして決める必要があります。生産者や加工者側で価格を決めると欲しい利益をできる限り上乗せする形になってしまいがちです。ですがそれでは売れません。
消費者がこの価格帯なら購入してもいいと思える価格設定にし、そこに見合うコストで事業を展開する必要があります。
ついつい忘れてしまいがちですが、販売してくれる人や営業してくれる人の確保ができることは予算の確保よりも重要です。
営業力があればモノやサービスは売れます。その商品がよければリピートされ徐々に財源を確保していくことができます。
最初に予算ありきで初めてしまうと予算の枠に縛られ、かつ、販売してくれる人が見つからず作ったのに売れないという状態が発生します。
営業が先を走り、市場と向き合いながら改善を繰り返し、販売数を増加させていくことが大切です。
商品を販売するにあたって補助金頼みでは必ず失敗します。補助金はあくまで補助でしかなく一時的なものです。
国や地方自治体の政策が変わったり、部署のトップが変われば簡単に打ち切られてしまうものです。
例えば、高すぎると売れないからと言って、販売価格に補助金を割り当て安くしてなんとか売っている場合は完全にNGです。長期的に持続できない体制になっています。
補助金がなくても売れるというのが事業のテーマ選びの重要なポイントの1つです。
ピックアップしたテーマは取り組むことが難しいのがほとんどです。誰もがすぐできないので、今も課題となって残り続けています。
その課題をいきなり解決するウルトラCの事業を思いつく必要はありません。まずは自分たちが持っている人材や資金、割ける時間から、何から取り組むことができるかを考えていきます。
構想や話を大きくしすぎる必要はありません。補助金を当てにせず、例えば、今いる人材3人が10万円ずつ出し合って、週2回集まりスモールスタートできることを選びます。
そうすれば、少ないリスクでトライ&エラーを繰り返し成長することができます。
今では大企業となりアメリカでもたくさんのバイクやクルマを販売しているHONDAも、最初にアメリカに渡った時は1人が乗り込み地道に販売店を開拓していくという流れをとっています。
地味で地道を積み重ねる以外に確固たる成功に近づく方法はありません。
誰もが自分たちが生まれたまちが好きです。そんな大切な場所が廃れていくのを目の当たりにするのは悲しいことです。
地方行政も人とお金を注ぎ込んで頑張ってきました。今も頑張っています。そんな中で浮き彫りになった事業が失敗する理由や成功するための条件大切な資産です。これを生かさない手はありません。
みなさんの地域活性化が進むことを心より願っています。
この記事の内容は経済産業研究所や内閣官房地域活性化伝道師を務めた木下 斉さんの「地方創生大全」の一部を要約しまとめたものです。
本書の中にはより具体的な事例や数値データなど、地域活性化や地方創生のための事業を始める際に知っておくべき内容がたくさん詰まっています。
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