少子化や過疎化による人口減少や地方消滅が取りざたされる中、いかに地方を創生するかに注目が集まっています。
メディアで地域の心温まるストーリーが放送されたり、国や地方自治体などの行政が補助金や交付金をつぎ込んで新たな事業を起こしています。
ですが、現実は上手くいっていない事業の方が多い状況です。
ここでは、メディアで放映される内容や行政主体の事業の嘘や勘違いについて7つの問題点をまとめています。
メディアは田舎の若者やシニア奮闘記にフォーカスといった社会的弱者が新しい挑戦をするストーリーばかりを取り上げます。
人の性質上、弱点のある普通の人が新たな挑戦をして成長していく姿は、自分と重ねやすく心が動きます。
メディアは人の性質を上手く利用して都市が期待する心温まるストーリーばかりをピックアップして放映しています。
ですが、地方で新規事業を行うことはキレイごとだけではありません。
その裏には新たな取り組みに反対する地元の有力者や成功に妬みを持つ住民、成功に乗じて実績をあげるために予算をつけて売りつける役人など様々な欲望が渦巻いています。
同様にメディアも視聴率を上げて広告費を稼ぐという目的があるため、地方創生を食い物と考えフィクション化しているところも少なくありません。
地方創生など成功する事業は、一瞬だけ脚光を浴び成功するよりも、長期間持続できるかが重要です。
プロジェクトが計画通りに行くことはなく、絶対的な成功もありません。そのため、失敗と成功を繰り返しながら徐々に成長していう以外に成功に通ずる道はありません。
非常に地味で継続な努力を必要とします。
このように地道な努力を重ね真に成功している事業には、感動的なドラマや意外性がないのでニュースやメディアも取り上げることはありません。
コロナ以前もそうですが、特にコロナが来てからというもの、メディアは地方移住こそが都市部の人たちが理想とする暮らしで、地方移住がトレンドとして発信をしています。
ですが、減り続ける日本の総人口の中で住んでいる人が増えている地域は依然として東京、神奈川などの首都圏です。
他にも千葉、埼玉などの首都圏も人口は増加し続けています。
秋田や鹿児島などの地方は人口が減少が大きく、将来消滅するだろうと予想されている市町村の数も多いです。
別荘地として人気の高い北海道や長野県も人口は減り続けています。
このように本質は「地方からどんどん人がいなくなっている」「トレンドは依然として首都圏への一局集中」が正しく、メディアなどで放送されていることはウソになっています。
そもそもメディアは日常ではなく、ごく一部で発生した珍しい事象を取り上げないと視聴率が稼げないので、こういった構造になってしまうのは仕方がないことです。
また、「地方に魅力がなく人が都心部に集中している」という事実は多くの人が言い出しにくいと感じていることです。
こういった言い出しにくいと感じていることこそが問題の原因になっていることがほとんどです。
グラフは総務省統計局の統計Dashboardから引用しています。
https://dashboard.e-stat.go.jp/graph?screenCode=00010®ionalRank=3®ionCode=13000®ionLevel=3&cycle=3&isSeasonalAdjustment=1
地域活性化として地元の地方自治体や商工団体が取り組むテーマも適切でなく、活性化に至っていないことがほとんどです。
なぜそうなってしまうかというと、事業を考える人たちが消費者目線ではなく、自分たち目線で物事を考えているからです。
例えば、地域の食材を使った特産品を作るときも、生産者や販売者側の都合で余っているものを組み合わせ、それぞれが利益を欲しいだけ乗せた商品を開発します。
現在の日本はスーパーのようにおいしい食品が安く簡単に手に入る状況です。それらの競合となる食材と、味、価格、差別化などどう勝負するかがしっかりと議論されていないことがほとんどです。
他にも地域の食材を使わないB級グルメを販売する場合は、粗利を確保するのみで地元に波及効果すらもたらしません。
各都道府県にある道の駅などは、観光客が立ち寄り、地元の野菜を販売しているので、一見地域のためになっているように見えます。
ですが、ただ数百円の野菜や果物を売るために何千万円もするコンクリートの設備は過剰で、その多くは初期投資を回収できず、さらに税金で運営される赤字経営になっているところがほとんどです。
競合に対して差別化されていて競争力があるモノやサービスを作るには、消費者目線に立って商品開発をすることが必要となります。
少子化・高齢化で人口が減少する中、地方では誰でもいいからとにかく人がたくさん来てくれればいいという考え方をしてる場合があります。
この考え方では地方を豊かにする長期的な利益を生み出すことができません。
補助金などで一時的に人が移り住んできたとしても定住しなければ意味がありません。
定住できない理由の多くは、その地域独特の区費や入会費といった余計な費用がかかったり、仕事がないというお金の問題がほとんどです。
移住者が定住するには、都心部よりもメリットのある価格設定や安定した雇用が必要です。
市町村などの地方自治体ではなく区レベルで見直しが必要です。
また、地域で提供できる仕事は限られています。雇用をベースとする以上、誰でもいいから移住してくればいいわけではなく、そのエリアの職種に合った人が来る必要があります。
地域経済の活性化という面では、地方に移住してくる人口よりも、観光客が消費してくれるお金の方が重要になります。
だからといって、とにかくたくさんの人が来てくれればいいわけではありません。
例えば、広告に予算をつぎ込んで大々的なイベントを実施すると、イベントの期間たくさんの人が押し寄せます。
一見すると地方が賑わっているように見えますが、その盛り上がりは一過性です。
更に悪いことに、地域で提供できる食事施設や宿泊施設の数は限られているため、あまりに多くの人が来たところで地域のプラスにはなりません。
提供できるサービスの量を超えて人が押し寄せれば地元は混乱します。混乱している状態ではきめ細かなサービスは提供できません。
結果として、一度訪れてくれた観光客のマインドは「また行きたい」ではなく「もういい」になってしまい、未来の集客の種を潰してしまいます。
人口が減り続けている日本では、お金を消費してくれる観光客がリピーターになってくれるモノやサービスを提供することが必要です。
地元の商業団体や地方自治体など、地方活性化の新しい事業をするうえで必ず必要となる「お金」につい勘違いしていることがほとんどです。
具体的にいくらの費用がかかり、毎年いくらの利益が出て、何年間の返済期間を経て、いつから黒字化に至れるかという経済的な視点が欠けています。
その一番の理由や補助金や交付金などの行政から出る支援金です。多くの場合事業を立ち上げるときに補助金ありきで考えてしまいます。
むしろ、補助金がなければやらないことばかりです。
自分たちで銀行などを駆け回り融資してもらう場合と異なり、補助金の場合はしっかりとした下調べや返済計画を必要としません。
結果として、見切り発車で事業がスタートしてしまうことがほとんどです。
行政主導の場合は身銭を切る人がおらず、明確に責任をとる人が決まっていません。事業が潰れたところで痛いのは国の税金で、誰もいたくもかゆくもない状態です。
結果、「人が集まり、雇用が増え、地域が活性化する」という美しく楽天的なストーリーを過信して事業がスタートしてしまいます。
市長など責任を負うといっても辞任するのみです。また、責任逃れのために、事業が失敗していることがわかっても、追加費用を投入して自分の任期の間はひた隠しにしようとするのが普通です。
このため、誰にもどうしようもなくなったときにようやく失敗が明るみになりますが、その時には追加で大量の資金投入もしており、他にできた対策もできない状況に陥っていることがほとんどです。
このように、採算の取れないモデルでは地方自治体の活性化事業をやればやるほど赤字がかさみます。
補助金に頼らず、責任の所在を明確にして、きちんとした返済計画を立てて事業を行うことが最も成功に近い方法です。
行政が行う地方活性化の進め方自体がそもそも長期的に成功する事業を生み出せる構造になっていません。
最初に計画を立て、予算を割り当て、目的に合わせて人を動かす方法です(計画経済といいます)。
この方法は、決められたことを決められたとおりにやるだけです。
挑戦や失敗は計画から外れたことでやってはいけない愚かな事とみなされます。
言われたことをやらされているだけで、自分たちが関与して推進しているという気持ちがないので「もっとやろう」「ここを改善しよう」という気持ちにつながりません。
途中に変化や報酬などの刺激もなく、計画を実行する人のモチベーションはとても低い状態にあります。
「さっさと作業を終わらせて家に帰りたい」を考えながら事業を実行することにつながります。
新しい事業を立ち上げることは多くの人の前向きなエネルギーを必要とするのに、実際に働く人たちがそのようなマインドでは事業が上手くいかなくて当然です。
地域活性化のために斬新で新しいアイディアが必要と考え、アイディア出しの会議を頻繁に開催するグループがあります。
アイディアを出し合うこと自体が悪いことではありませんが、その多くは「いいアイディアがあればやってもいい」というスタンスになっています。
明確な動機や期限がないため、アイディアだけ出して実際にそれを実行に移さないのが基本です。
目的や集まる人、明確な期限がなくただ話し合うだけのアイディア出しは時間の無駄でしかありません。
特に無駄なのが、地元で奮闘している有力な人材がその無駄なアイディア出しに巻き込まれ時間を浪費してしまうことです。これは損失でしかありません。
「とりあえず気軽にアイディアを出し合いましょう」というお気楽なアイディアマンは大したアイディアを持っていない人がほとんどです。
そして、そのような人の周りに集まるのも大したアイディアを持っていない人ばかりです。
自ら行動したことのある人は少なく、どこかで耳にしたパクリのようなアイディアを出し合います。
そして内輪で盛り上がり、「いつかやりましょう」と言ってなにも行動が始まらないまま終わっていきます。
そういった実行力や意志の無い人たちが、「自分たちが損するのは嫌だ」「人のお金でやって失敗してもいいならやる」という無責任な発想で、国や地方自治体の補助金を申請し、日本の財政を食いつぶしていきます。
予算依存の事業は持続性がなく成果が生まれません。
参加した人たちも自分は身銭を切らず、他人のお金を使っているので反省や次回につなげるといった意識はありません。
ダメだと感づいたら1人、また1人と去っていくだけです。
そして次のような言葉とともに、事業とお金が消えていきます。
もちろん、大きな震災や世界的な変化、革命など本当に立ちいかなくなってしまう場合もあります。ですが、そこの判断に至るまでの考察が足りない場合がほとんどです。
本当にやるべきアイディア出しは、事業を推進する上で大きな障害になっているボトルネックを取り除くためのアイディア出しです。
多くの場合、とても地道な方法しか解決策がないことがほとんどです。
その地道な積み重ねを少しでも負担を軽くできいる方法が無いかを検討し合い、それが見つからなければ覚悟を決めて地道に挑むアイディア出しこそが意味のあるアイディア出しです。
アイディア出しをするときに1時間と区切りそれを積み重ね「これだけ時間をかけた」という人がいます。
ですが、アイディア出しに時間は関係ありません。
1時間、2時間やり続けなければいけないものでもありません。10分、15分で閃く場合もあります。1週間かかることもあるかもしれません。
有効なアイディアが出るまでやるのが基本です。
10人が1週間かけて考えだしたアイディアと、1人が10分で考えだしたアイディアが同じであれば、そこに差はありません。
むしろ、550時間損したことになります。(10人 × 8時間 × 7日 – 10分)
大切なのはかけた時間ではなく中身です。
この記事の内容は経済産業研究所や内閣官房地域活性化伝道師を務めた木下 斉さんの「地方創生大全」の一部を要約しまとめたものです。
本書の中にはより具体的な事例や数値データなど、地域活性化や地方創生のための事業を始める際に知っておくべき内容がたくさん詰まっています。
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