日本は人口減少が社会問題になっています。日本の人口は2004年に1億2千万人というピークを迎え、以降は減り続けています。
2050年には9,500万人、2100年にはピークの半分以下の4,700万人まで下がる試算もでています。
人口が急激に減っていくのは高齢化が進み1940年後半と1970年代前半のベビーブームで生まれた人たちがどんどんと亡くなっていくためです。
結果、地方消滅や日本の衰退へとつながっていきます。
ここでは、日本の人口推移の詳細と、そもそもなぜ人口が減少し始めているのか、また、人口増加と減少中で最適なビジネスモデルがどう変わっていくかについて解説しています。
日本の人口の推移は上のグラフで示したように急激に減少していきます。
人口減少の理由は大きく2つあり、1つ目は高齢化により寿命を迎える人が増えること。2つ目は出生率が低いことです。
この状況はどちらも年代別の人口ピラミッドで見るととてもよくわかります。実情は総務省 統計局の統計ダッシュボードというツールで確認できます。
1940年後半と1970年代前半のベビーブーム頃に生まれた人たちが、70~80歳、40~50歳になっています。
着目すべきは30歳より下の人口が男女ともにとても少なくなっていることです。
25年後経過し、2045年になると人口ピラミッドの形状は逆三角形になります。これ以降年数が経過するごとに人口がどんどんと減少していくことが明らかです。
ピーク時の出生率に比べて、生まれてくる子供の数が半分以下になると予想されています。
なお、1940年代後半の第1次ベビーブームの出生率は驚異の4.32です。女性一人あたり4~5人産むのが普通だった時代です。
1970年代前半の第2時ベビーブームの出生率は2.14です。2020年の出生率は1.34です。
女性1人あたりの子供の数が平均1人、多くて2人という状態です。
勘違いされやすいポイントとして、日本は人口減少が問題視されていますが、世界の人口は増え続けているという事実があります。
世界の人口は2050年時点で生まれてくる子供の方が多い想定になっています。
人口推移も右肩あがりです。2020年の世界の総人口は76億人ですが、2050年には97億人になる想定です。
アメリカ合衆国の2050年の人口ピラミッドは先細らずに同じ数の人口が生まれ続ける想定になっています。
現時点で人口が巨大な人口を抱え経済が大きく成長している、中国、インド、インドネシアも同じような人口ピラミッドになっています。
人口の推移も右肩上がりで増えていく想定です。
増加する世界人口の中でも群を抜いて生まれてくる子が増えていくのがアフリカです。
人口が爆発的に増加していきます。
日本のように人口が減少していく国ももちろんあります。韓国、タイ、シンガポール、イタリアなどです。
ですが、そんな中でも群を抜いて人口減少の幅が大きいのが日本です。
日本は世界の中で少子化&高齢化による人口減少の最前線を走っています。どこも経験したことのない危機を一番最初に迎えようとしています。
一つ勘違いしてはいけない点があります。日本は少子化と高齢化により人口減少が叫ばれているものの、決して人口が少ないわけではありません。
むしろ世界の屈指の人口の多い国でもあります。2020年時点の人口は世界202各国のうち11番目です。上位90%に入っています。
2050年には9,500万人、2100年にはピークの半分以下の4,700万人という数値で見ても現在のヨーロッパや諸国と同等です。
ただし、これまで日本が島国にも関わらず世界各国の中で強力な力を持っていたのは、世界でも類をみないほどの人口爆発があったからです。
そのことから考えると人口減少は大きな衰退を予感させています。
人口減少や出生率の話になると「子供一人あたり教育費がかかる」といったお金の話になります。これが出生率を1.3程度に下げている根本的な原因と思いがちですが、本質は違います。
そもそも日本はつい最近まで人口増加を続けてきました。それが減少に転じたのには、政府の人口抑制政策があります。
そもそも日本は1867年の明治維新のあと人口が爆発的に増えていいきました。
この時代、日本は急増する人口を賄うだけの食糧がないという問題を抱えていました。そのため、現在では考えられないことですが、グアム、ハワイ、ブラジル、アメリカなどの集団移住政策を推進するなど、過剰になりすぎる人口を減らす努力をしてきました。
食料が足りない問題は悪化の一途をたどり、1918年(大正時代)に米騒動が勃発しました。米屋が襲われて米が奪い取られる事件です。
それほどまでに日本は人口に対して食料が足りない状態が続いていました。
このため政府は少子化を推奨していました。今とまったく逆の政策です。
1914年の第1次世界大戦や1945年の第2次世界大戦の時代になると、戦力確保のため厚生労働省が「産めよ増やせよ」というスローガンを打ち出したり、10人以上産んだら表彰するといった制度を設け、子供を産むことを推進していました。
なお、産んだ子供の数の最高記録は長崎県の白戸さんの20年間で16人という記録です。
日本の敗戦後、日本を統括していたGHQは急激な人口増加に危機感を抱いていて「人口を抑制しなければ戦後復興は不可能」と述べました。
これにより、日本は行政と民間が避妊の推進など出産を抑制する運動を行いました。
この時の日本の課題は今とは真逆で出生率を低下させることでした。
特に、農村における人口過剰問題が取りざたされ、多すぎる人口を地方から都心部に移動させることが行われていました。
現在の過疎化や都心一局集中の真逆の状態です。
そして、このときに行った避妊の促進の甲斐もあり出生率はどんどんと下がっていきました。
そして、現在では逆に人口が減りすぎてもっと生まなければ日本が危険という状態になっています。
最近では少子化が危機として叫ばれていますが、過去の歴史を見ると今の日本でのみ人口が問題になっているわけではないことがわかります。
増えすぎた人口を減らすため海外に移住させる(人口増が問題)
↓
戦争の戦力のため人口を増やす(人口減が問題)
↓
増えすぎた人口を減らすため避妊を広める(人口増が問題)
↓
少子高齢化が問題(人口減が問題)
このように、人口は政府の政策により大きく変わるものです。そういう意味では個々人や地方自治体があまりナーバスになりすぎる必要はないのかもしれません。
とはいえ、現在ものすごい勢いで人口が減少しているのは間違いありません。
全国に1,718ある市町村のうち、2040年に52%にあたる896の市区町村が消滅するリスクがある消滅可能都市だといわれています。
下の日本地図で色がついているエリアが消滅可能性都市に該当します。
濃い黒色の地域は人口が1万人未満となり、消滅する可能性が特に高いエリアです。
パットみただけでも、ほとんどのエリアが消滅するリスクに晒されていることがわかります。
消滅する可能性が高い地域は、秋田県、青森県、島根県、山形県、鹿児島県、北海道、和歌山県となっています。
田舎の農村部を中心に消滅するリスクがとても高くなっています。
ですが、それもこのまま現状維持で時代が進んでいけばという仮定における試算です。
日本以外にもヨーロッパを中心に出生率の低下による人口減少が問題となっていた地域があります。ですが、そういった国々は出生率を向上させる施策を行い、出生率が改善しています。
例えば、フランスは1995年は1.7から、2012年には2.01まで回復しています。これは日本の第2次ベビーブームに迫る数値です。
ほかにもスウェーデンやイギリスも2012年に出生率が1.9を上回っています。
フランスは若い人の数が減りますがあくまで若干数にとどまっています。
スウェーデンは出生率の増加により、人口も増加していく想定です。
人口が増加し続けるときと減り続けるときで最適なビジネスモデルも変わっていきます。
人口が増加しているときは、食料や衣料、住む場所などあらゆるモノが不足します。
日本も明治維新以降の人口増加に食料が追い付かず人口を減らす方針がとられてきました、にも関わらず人口は増加し続けました。
それを可能にしたのは、農業の生産性向上や工業化による経済力の向上によりモノが増え、海外から食料を輸入し、結果として1億2千万人もの人に食料がいきわたるまでになりました。
モノや食料がそもそも不足しているので作れば作るだけ売れるという時代です。
製造業以外にサービス業も次から次へと新しい人が押し寄せるので、リピート客を獲得することよりも、人が1回だけきて、それをクルクル回す方が効率よく重要でした。
このため、似たようなサービスや汎用的なサービスがコピーのようにたくさんできても収益化ができる状態でした。
現代のように人口がどんどん減少していく中では、人口が増加していたときの施策は通用しません。
モノを作れば売れるどころか、これまで売ってきたものが有り余っている状態です。デザインやストーリーなど特別な付加価値がないと売れない時代になっています。
サービスも新しい人をクルクルまわすのではなく、一度来ていただいたお客さんに満足してもらってリピーターになってもらうことが重要です。
他と同じではなく、いかに他と違うかを突き詰めていくことが成功のカギです。
明治維新から2004年まで人口が増え続け「人口を減らしましょう」人口抑制が叫ばれる中でも、技術革新や輸入などの大きな変化・改善で課題を乗り越えてきました。
同様に少子化&高齢化で人口減少が叫ばれている今も必要なのは「人口を増やしましょう」という政策ではありません。
AIやロボット、クラウドやITを活用したり、新たなイノベーションを起こして、変化と改善により人口減少に左右されない生産力を確保することが、これからの時代を生き延びていくために重要です。
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