最強のチームと聞くと、カリスマなリーダーがいて、素晴らしい組織図や規約があり、優秀な人がたくさん集まり、一人一人が超人的に卓越しているチームを思い浮かべる人が多いですが、そのイメージは勘違いです。
最強のチームをつくるには特別な事は一切必要ありません。
誰もができる普通なことで最強のチームを作ることができます。
チームと聞くと、私はどのチームにも属していないと言う人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。
生きている限り必ずどこかのチームに属しています。
あなた以外にもう一人以上集まればそれはチームです。
逆に言うとチームに属していない人はいません。一人で生まれ、一人で育ち、一人で生きているという人はこの世に存在しません。
最強のチームを作るために必要なものは、安心な環境づくりが全てです。
「安心な環境づくり」というと、なんだそんなことかと思ってしまいがちですが、みんなが安心できる環境を作るというのは簡単なことではありません。具体的なノウハウやスキルが必要になります。
初めに結論から言ってしまうと、次の3つの行動をとる中和者がメンバーにいれば、相互に補い合う虹色の最強チームが出来上がります。
(1)妨害者の発言を中和する、(2)愛着心を育てる、(3)発言しやすい環境を作る
中和者がとるべき具体的な行動は次の10個です。
以下では、なぜ中和者が必要か?中和者がいるとなぜ最強のチームになるのかを具体例を交えて解説しています。
最強のチームを作るために必要なものは安心な環境作りです。
安心な環境とは、チームのメンバー1人1人が、「私はこのグループに所属していていいんだ」と感じ、誰にも臆することなく自分の意見を素直に言える環境のことです。
「ここにいるってことは、みんなそう思ってて普通なんじゃないの?」と思った人は、自分の周りを見渡してください。
何かの集まりや会議があったときに「〇〇についてどう思いますか?」と誰かが言ったときに、みんな進んで発言しようとしてるでしょうか?
「私が答えることじゃないし、、」「私の意見なんて、、」「誰かが言ってくれるでしょ、、」こんな風に考えている人はいないでしょうか?
ものすごく大手を振って意見を言っている人もいれば、私なんて意見言える立場じゃないですからと思っている人がいる方が一般的です。世の中の9割はそういう環境です。
とあるベンチャー企業で安心できる環境をつくることがどれだけ成果に影響するかを調べた面白い実験があります。
その会社で会議を開くときに、密かに仕掛け人を送り込みます。
その仕掛人のミッションは「安心な環境づくりを阻害」することです。そして、その阻害方法として次の3つのパターンを行った場合でそれぞれ会議の結果がどうなったかを検証しました。
1つ目の安心な環境づくりの阻害方法は、攻撃的&反抗的な言葉遣いです。
たとえどんなにその人が優秀で凄い実績を残していたとしても、言葉遣いが悪ければその場の安心は崩れます。
「え、何それ。その意見あり得ないでしょ!」
「真面目に考えてその意見!?」
「クソつまんない意見だね。」
「(机をドンドン叩きながら)で、何がいいたいの!?」
「このチームレベル低すぎでしょ」
「あのやり方ダサすぎでしょ」
2つ目の安心な環境づくりの阻害方法は、怠惰な言動をあからさまにとるです。
「(遅刻してきて)ふあ~、ご苦労様でーす。あーあ眠いなー」
「そんなに真面目にやるような会議ですか?」
「まぁまぁ適当に切り上げて飯でも食いに行きましょうよ」
「この前のドラマ見ました~?(雑談を始める)」
3つ目の安心な環境づくりの阻害方法は、愚痴と文句。周りのやる気をそいで暗くする発言をする行動です。
「私なんてこの会議に参加する価値ないですよ」
「この会議をやる意味があるとは思えません」
「それをやって失敗したらどうするんですか?誰が責任をとるんですか?」
「私はそういうの苦手なんで」
「それはやめませんか?」
(1)攻撃的・反抗的な言葉遣い、(2)怠惰な言動、(3)愚痴と文句のうちどれが一番会議のパフォーマンスを下げたかというと、答えはどれも同じぐらいパフォーマンスを下げたです。
つまり、攻撃的&反抗的な態度も、怠惰な言動も、愚痴と文句もどれも約30~40%パフォーマンスを下げたという結果が出ています。
30~40%パフォーマンスの低下と言われるとピンとこないかもしれませんが、これは相当に大きいです。
例えば、急に社長が「わが社の製品を30~40%値下げします!」と言ったらどうでしょうか?
「5%の値下げでも厳しいのに、30~40%ですか!?大丈夫ですか?」となります。黒字が出ていても赤字に転落するところがほとんです。
「いったい私たちの給料はどうなるんだ!?」と不安になります。そして、「もちろん、あなたたちの給料も来月から30~40%下がります」と言われたら絶対に受け入れられないでしょう。
30~40%のパフォーマンス低下はそのぐらい影響が大きいということです。
この結果を受けて改善すべきことは、「怠惰な言動よりも、攻撃的な人の方が悪いでしょ」「反抗するよりも愚痴と文句を言う方が悪いでしょ」という考え方です。
これは、片方が悪いけど、もう片方はやってもいいと思い込んでいる人がいう言葉です。
しかし、現実はどれもやっていけない行為です。
誰か1人でもやってもいいと思っている人がいると、他の人たちを誘発して、その行為をやる人がどんどん増えてき、チームのパフォーマンスがどんどんと下がっていきます。
ガン細胞が体中に広がっていくのと同じです。
最強のチームを作る上で最も重要なことはメンバー選びです。
次の行動のどれかを取る人をチームのメンバーに選んではいけません。
もし、選んでしまったら速やかに取り除かなければいけません。大事なことはいかにスキルや実績があっても取り除く必要があるということです。
チームを作るうえで最も優先すべきことは安心な環境です。才能、スキル、実績を優先してはいけません。
「えっ、でもそれでやっていけるの?」と思うかもしれませんが大丈夫です。チームは安心な環境でこそ最大限のパフォーマンスを発揮します。
仮に、自分がそういう行為をしていた場合は速やかにやめましょう。優秀なチームではそういう行為に目を光らせ、そういう人物は取り除こうとしています。
安心な環境がどれだけ効果を発揮するかを検証する面白い実験に、MBA集団と幼稚園児を戦わせたものがあります。
具体的には、関係性のできていないMBA集団 vs 仲のいい幼稚園児 の対決です。
内容は、パスタの束をセロハンテープで巻いて積み上げて、最後にマシュマロを挿すというチームワークを要求される勝負です。
なんと、この勝負で勝ったのは仲のいい幼稚園児です。
MBA集団は関係性ができておらず自分の意見を主張し、みなが私がリーダーだと主張し合い、協力しなかったことでプロジェクトが前に進みませんでした。
その間に仲のいい幼稚園児は協力しあってプロジェクトを進めていき完成させました。
幼稚園児たちが先にゴールした後にMBA集団がやったことは、誰も自分の失敗と認めず、「あなたのせいで負けた」と言って周りの人に責任を押し付け合うことでした。
チーム戦において大切なのは、個々の能力やプランの優秀さよりもチームワークです。
どのように意見交換し、プランを立て、実行するかの一連の流れがかみ合わないとチーム戦で勝つことはできません。
そして、チームの連携を作り出すには、お互いが認め合い自由な意見交換ができる安全な環境が必要ということです。
安全な環境が重要だから妨害する人をすべて取り除く必要がある。と言われても、実際にそれをやるのは簡単なことではありません。
むしろ、不可能な場合もあるでしょう。その場合にも対策方法があるの安心してください。
先ほどの、ベンチャー企業で会議に (1)攻撃的・反抗的な言葉遣い、(2)怠惰な言動、(3)愚痴と文句 を言う人を送り込んでパフォーマンスを検証した実験には続きがあります。
その中で、こういった妨害者がいてもパフォーマンスを落とさない方法が見つけ出されています。
それは、会議を妨害する発言や態度があった場合に、その場を中和するさりげない言動をする人がいることです。
妨害者「それって、なんか意味ある!?そんあのやる意味ないでしょ!」
中和者「あっ、でも私はけっこういい意見だなと思いました!」
「じゃあ、他の案ある方もどうぞ」
妨害者「あーめんどくさい。こんなの真面目にやったてどうしようもないでしょー」
中和者「いやー、でもこれで上手くいけばけっこう会社の利益もあがりますし、やる意味はありますよ~」
「じゃあ、〇〇さんからお願いします!」
妨害者「この会議をやる意味があるとは思えません」
中和者「確かにそいう意見もあるかもしれませんね。でもやってみないとわからないこともありますし、それに上手くいったら凄い効果を生みますよ~」
「では、会議を始めていきましょう」
この中和者のポイントはその人自身が凄い実績を持っていたり能力が高く優れた意見を持っている必要はないということです。その人の役割は、優れた意見を言う事ではなく、場を和ませることだからです。
すごく優秀だけど攻撃的な人がいれば、優れた意見は出てきます。そして、その攻撃性を中和すれば優れた意見だけが残ります。
中和者がいることでみんなが安心して発言できる環境になります。
まさに、これこそが相互に補い合うチームに他なりません。
悪いものをすべて排除したチームよりも、相互に補い合える虹色のチームの方が最強です。
世の中を見渡した時に、(1)攻撃的・反抗的な言葉遣い、(2)怠惰な言動、(3)愚痴と文句を言う人は山のようにいます。
ですが、中和者はレアな存在です。3大妨害者の割合に比べたらかなり少ないです。
ですが、この中和者がやっていることは特別な才能・スキル・実績が要らないことです。つまり、誰もが中和者になれるのです。
つまり、最強のチームを作るために自分が中和者になればいいのです。
では具体的に中和者になるにはどうしたらいいかというと3つのアプローチをとる必要があります。
1つ目は、先ほどのパフォーマンスの実験の例にあったように、妨害者の発言を中和し場を和ませることです。
方法は言葉だけではありません。表情を緩やかにしたり、発言した人に対してグーサインをだしたり、表情や動きで伝えられることもあります。
2つ目は愛着心を育てることです。自分はそのチームの一員なんだ!チームのために役立ちたい!という意識です。
別の言葉で言うと帰属意識が高い人を育てることでもあります。帰属意識とは自分がそのチームに所属しているという感覚です。
最強のチームとはチームメンバー全員が高い愛着心を持っている集団です。
愛着心を育てる具体的な方法は次の3つです。
アメリカのプロバスケットボールNBAにあるものすごく強いチームがありました。そのチームの監督はミスがあるとすぐカッとなり切れる人でした。いわるゆ攻撃的な妨害者です。
ですが、そのチームはいいパフォーマンスを発揮し勝利を収めていました。
というのも、その監督は短気で怒るだけでなく、とてもコミュニケーション上手という一面も持ち合わせていました。
監督は普段から頻繁に選手と夕ご飯を食べに行って、選手たちと親密に交流する場を自分から作り出していました。
物理的に距離を近める努力をしていたのです。このため、選手たちは厳しく怒られても気持ちが離れることなく、チームの輪は切れず、いい成績を上げ続けることができたのです。
コミュニケーションや一緒にご飯を食べに行くこと、雑談をして親密な交流をすることはバスケのスキルとは何の関係もありません。
ですが、その行動がチームをバスケの常勝集団に育て上げたのです。
このNBAコーチの例からもわかるように親密な交流とは、相手との距離を近くすることです。
相手との距離を近くする有効な手段は次の2つです。
相手との心の距離を近くするためには、まず物理的に近い距離にいるということが大切です。
試合や練習で厳しく接するだけで、それ以外は自分は選手とは別室にいて距離を離すというのでは、心の距離は近くなりません。
食事に誘ったり、話しかけたり、様子を見に行ったりと、物理的に近くに行くことで、心の距離も少しづつ近くなっていきます。
雑談を無駄な行為だと軽視する人がいますが、チームメンバーが安全な環境を作る上で雑談は欠かせない重要な要素です。
チーム内で誰とでも気兼ねなく雑談ができるというのが安全な環境です。
個人を尊重するとは、チームのメンバー1人1人が「ちゃんと私を見てくれてるんだ」と思っている状態です。
メンバーが私は個人として尊重されていると思えるようにする方法があります。それは誰にでもできることです。
まず何よりも大切なことは相手を名前で呼ぶことです。人が最も興味あるものは自分自身です。そして、その代表格が名前です。
ことあるごとに「〇〇さん」と呼ぶことが大切です。
逆に名前を呼ばないと、その人は個人として尊重されていないと感じます。
仮に、あなたがあるクラブに所属したときに1年間一度も名前を呼んでもらえなかったらどうでしょうか?
自分はこのチームのメンバーとして見られていない。空気のような存在としていてもいなくても同じように扱われていると思うのではないでしょうか?
他の人もみんな同じです。
名前を呼ぶことが気恥ずかしいという人もいますが、目的はあなたの恥ずかしさを優先することではなく、最強のチームを作ることです。
自分の恥ずかしさを優先するよりも、相手の名前を呼ぶことを優先することが大切です。
名前を呼んで話しかけたら、次にすることはその人の人となりを知ることです。
人は自分のことをわかってくれて理解してくれる人を好きになります。
「あなたは〇〇で生まれて、そのあとどこどこに進学して、△△に興味があってその道に進んで、努力を重ねて今の仕事についたんですね」と言ってくれる人がいたら、その人のことを好きになります。
更に交流を深めるために次のステップで「相手が喜ぶ行動をとる」を実行する必要がありますが、そのためには相手が何をされれば喜ぶか、何をされると嫌がるかという相手の人となりを知っておく必要があります。
そして、個人を尊重していることを行動で示すために、聞き出した人となりから、相手が喜ぶことします。
例えば、誕生日に細やかな贈り物をするとか、好きなものを差し入れするなどです。
ここまですれば、ようやく相手は何の疑いもなく「ああ、この人私を1個人として見てくれてるんだ」と思うようになります。
これら3つの個人を尊重する行動に特別なスキルは必要ありません。やろうと思えば誰もができることです。
将来を約束するとは、「あなたはこのままでいいよ」「これからも大事にするよ」を言い続けることです。
「あなたを大切にしているのは今だけ」と決して感じさせないことです。
愛着心を育てる3つの行動、(1)親密な交流をする、(2)個人を尊重する、(3)将来を約束するの真逆で、相手の心を深く傷つける言葉があります。
これは、親密な交流をしようとせず、相手を1個人として認めず、将来は約束されていないと伝える代表的な言葉です。
これらの言葉は安心な環境でないどころか、相手の存在意義や自尊心まで傷つけるとても酷い言葉です。
言ってはいけない言葉 | 言い換え |
---|---|
お前の変わりはいくらでもいる。 | あなたしかいない。 |
あなたは特別でも何でもない。 | あなたは特別。 |
あなたに大した価値はない。 | あなたじゃなきゃだめ。 |
あなたはいなくても一緒。 | あなたがいなきゃだめ。 |
あなたが働きかけてメンバー1人1人のチームに対する愛着心を育む以外にもとても重要なことがあります。
それは、あなたがいなかったとしてもメンバー個々人がコミュニケーションを取ったり発言しやすくするための工夫です。
それは物理的な環境を整えることです。
コミュニケーションの量は物理的な距離によって変化するという法則があります。
このため席の配置を工夫すれば自然とコミュニケーションをとる環境を作ることができます。
具体的にはメンバー同士が6m以内に来るようにすることです。
みなさんも学校で経験があると思いますが、これまで全く知らなかった子でも、隣の席になるとよく話して仲良くなるものです。
前の席の2人や後ろの席の2人とも「ねぇねぇ」なんてやり取りして、意識せずとも自然と仲が深まっていくものです。
つまり、物理的に距離が近いというのはもの凄くパワーがあることです。
この逆で、あんなに仲がよかったのに、クラス替えで別のクラスになったり、転校してしまったりすると、最初のうちは頻繁にやり取りをするものですが、だんだんとその量は減っていき、心の距離も自然と離れていくものです。
家族や恋人との関係にももちろんこの法則が当てはまります。
家族や子供と部屋を離して少し喋りずらい場所に自分を置いているか、それとも、常に目に入る場所にいるのかだけでも関係性は大きく変わります。
物理的に距離が近いとコミュニケーションの量が増えるという法則は、会社や学校、クラブだけでなく家族や恋人など2人以上いれば当てはまります。
2つめにするべき工夫は発言権をみんなに与えることです。
一部の優秀なエリートしか発言権がなくなってしまうと、人は強烈に私なんていらないんじゃないかなと思います。
このため、誰でも発言できる割り振りにすることがとても大切になります。
リーダーであれば「〇〇さんはどう思いますか?」と振ります。
リーダーでなければ「私は〇〇さんの意見も聞いてみたいな」と振ります。
相手が「えっ、私も発言していいんですか?」「私何の実績も出していないんですけど、、」「私新参者なんですけど、、」という反応をしたら、
「大丈夫ですよ。聞かせてくださいよー」と言って喋りやすい雰囲気を作ります。
先ほどのベンチャー企業の実験のときに、中和者は妨害者の発言を中和する以外に、もう一つやっていたことがあります。
それは、とにかく質問をしてみんなの意見に感嘆・共感・称賛することです。
「〇〇さんはどう思いますか?」「えー!そうなんですね!!!」
「〇〇さんはどうですか?」「はー!なるほどー!」
これをやり続けることです。
そして、誰かが話している時は決して意見を遮らないようにします。
大切なのは聞く力です。とにかく相手の話を聞きます。
中和者が妨害者の発言を中和し、メンバーの愛着心を育て、発言しやすい環境を作るなら、それはどんなに優秀な人や才能溢れる妨害者をも凌駕するほどチームメンバーに貢献します。
最強のチームを作るときに、カリスマ性溢れるリーダーや優秀なメンバー、優れた戦略や組織図は必要ありません。
必要なのは中和者です。そに特別なスキルは必要ありません。誰もができることです。
中和者がやるべきことは次の3つです。
具体的には、物理的に近くに行き、雑談をする。
そのときにやることは、「〇〇さん」と名前で呼び、その人の人となりを知り、相手が喜ぶ行動をとり、「あなたはあなたのままでいい」「この先もずっと大丈夫」と伝え続けることです。
そして、メンバー同士が発言しやすくなるように、物理的に距離が近くなるよう工夫し、みんなに発言権を割り振り、話を決して遮らないことです。
たったこれだけで、メンバーがお互いを補い合う虹色の最強のチームを作ることができます。