人が毎日使い、人間関係や人生を左右するほどの重大な力を持っているものの一つに「話し方」があります。
話し方は就職、仕事、友達づくり、恋愛など、いうまくいくかどうかを左右する大きな要素です。
話し方によって人から嫌われたり、好かれたり、恋人ができたり、フラれたり、就職できたり、落とされたりします。
「いい話し方」「人の心を動かく話し方」「人を傷つける話し方」「人に嫌われる話し方」など、何をするとどういう結果になるかが決まっています。
ですが、学校や家で適切で効果的な話し方を教えてもらうことはほとんどありません。むしろ、それはいけません、こうしなさいと言われたことが人に不快感を与えたり、嫌われることである場合があります。
それを教える先生や親自身が人に好かれるように話す方法を知らないということも多くあります。
ここでは、これほどまでに大切な話し方をどうすれば効果的に使えるか、好かれるかを解説しています。
最初に結論から言うと、共感がすべてです。
人に教えようとする「教官」型から、聞き手の気持ちに寄り添う「共感」型に変える必要があります。
大切なのは、何を言うかではなく、聞いた人をどんな気持ちにさせるかです。
話をするうえで、覚えておくべき人の性質があります。
それは、人は相手が何を言ったのかほぼ忘れるという事実です。
日常での会話、仕事の話やメールなど、相手が言ったことを事細かに覚えている人はほとんどいません。
例えば、
と言われると、パッと思いつく人はほとんどいません。
自分もそうであるように、相手もあなたの話を覚えていないのが普通です。
ですが、その時に言われたことで、どんな気持ちになったかは覚えているものです。
「この前友達とランチして、すっごい楽しかった」
「夕飯の時に言われたことですごくイライラした」
「あの先輩と居酒屋に行ったけど、すごく苦痛な時間だった」
好きな人と話すときに大切なのは、あなたが何を話すかではありません。相手があなたの話を聞いて嬉しく・楽しくなり、また話したい!と思うかどうかです。
また、就職の面接で話すときに大切なのは、あなたが何を話すかではありません。相手があなたの話を聞いて、「この人ならわが社でやっていけそうだ。ぜひうちに来て欲しい」と感じたかどうかです。
つまり、意識すべき最も重要なことは、何を話すかではなく、その話を聞いた相手の気持ちがどうなるかです。
コミュニケーションのゴールは相手にいい気持ちになってもらうことです。
フォーカスするのは「私」ではなく「相手」の気持ちがどうなったかです。
自分の気持ちが相手に伝わらず上手くいかないのには原因があります。
1つ目のありがちな悪い例は、自分が何を言うかで頭がいっぱいになっている状態です。
「明日のプレゼンで何を話そう」
「彼女になんて伝えよう」
「面接で何を話そう」
どれも、主語は私です。「私は何を話そう」ということばかり考えて、相手のことを一切考えていません。
2つ目のよくありがちな悪い例は、話し手が「私の話に共感して欲しい」や「お願いだから共感して」と思っている状態です。
この感情を持った状態で話を始めると、相手は共感してくれません。
あなた
「今日は私の好きな〇〇の話をします」
「みんなにとっても、とてもいい話だと思うので絶対に聞き逃さないでください」
相手
「えー、なんで〇〇の話なの」
「私、〇〇嫌い」
「聞くか聞かないかは、こっちの勝手でしょー」
話すときに考えているのは「私」ばっかりです。相手の気持ちをまったく考えていません。
それどころか、「私がいいことを教えてあげる」という相手の上に立った教官型の話し方になっています。これでは、相手が好感を抱くことはありません。
なお、この話し方をしてしまっている人が悪いわけではありません。日本の学校で教わる話し方のほとんどがこの悪い例だからです。
このような授業を、ほぼ毎日何年間も継続して受け続けるわけです。なので、日本ではこの話し方をしてしまうのが普通なのです。
大切なのは人生を改善しようと思ったら、自分で学ぶしか方法がないのです。
3つ目のよくありがちな悪い例は、自分のすごいところをアピールしようとすることです。
もしあなたが聞き手だとした場合に、
「私はあなたたちとは違います。今日はそんな私からあなたたちに教えてあげます」
と言われたらイラッとします。相手はあなたより上に立ち、あなたを見下しています。嫌な気持ちになって当然です。
自分のすごいところアピールもこれと同じです。「私はあなたたちとは違う。私の方がすごい」というのを相手に伝える行為です。
自分のすごいとろころアピールしようとする人は、相手の気持ちを考えていません。頭の中は「私が」でいっぱいになっています。
4つ目のよくありがちな悪い例は、情報を詰め込めばいいと思っていることです。
「こんなことがありました。あんなことがありました。あれはああです。これはこうです。」
というように、情報をマシンガンのように打ち続けてしまうことです。
その情報を伝えたことで相手がどう感じるかを一切考えないとても自分勝手な行為です。
そして、情報には「感情」が乗っていないので、相手の感情はもちろん動きません。
あなたの言葉を聞いて、最後に相手の心に残るのは「ふーん」です。それで終わりです。
5つ目のよくありがちな悪い例は、聞き手を無視して突っ走ってしまうことです。
とくに自分のことで精一杯の人がよくやってしまいます。
「あー緊張する。」
「足が震える、手が震える」
「原稿ちゃんと読めるかな」
「汗っかきなのバレてないかな」
「赤面症なのバレないかな」
「途中で噛まないかな」
「話飛ばないかな」
「声が上ずってるのバレないかな」
などなど、、、
どれも、自分・自分・自分です。聞き手のことを一切考えていません。原稿しか見ておらず、周りの人を全く見ていません。
このため、聞き手がよくわからずにポカーンとしていたり、明らかに興味ない素振りを見せていても、それに気づかず突っ走ってしまいます。
6つ目のよくありがちな悪い例は、遠くの1点だけを見つめることです。
緊張している人に対して、相手の額を見るといいとか、遠くの1点だけを見るといいと言ったアドバイスを耳にすることがありますが、そのアドバイスは完全に間違っています。
相手の目や反応から目を逸らし、相手をいないものとして扱っていては、話す目的である「聞き手に気持ちよくなってもらう」ということを達成できません。
同様に、ずーっとホワイトボードに下記ながら話す人、原稿に目を落としてたまにしか前を向かない人というのはダメです。
身近なところでは学校の先生がやりがちです。親でもきちんと目を見て反応を見ながら話してくれる人も少ないです。
私たちの身近には、そいういうできていない人の方が多く、そういう教育を受け続けているのが実情です。
このような悪い話し方を、相手の心を動かすいい話し方に変えるには「感情」「論理」「技術」の3つの側面を理解することが大切です。
「感情」という言葉を聞いたときに多くの人が思い浮かべるのは「自分」です。私の話に共感して欲しいという思いです。
あなたが共感するべきは、自分の思いではありません、共感するのは聞き手の気持ちです。
相手の気持ちに共感するためのいいテクニックの一つに、主語を「私」から「私たち」「僕たち」に変える方法があります。
このポイントは、主語を「私たち」にしたことで、話し手のマインドが変わるということです。相手に寄り添おうという意識が生まれます。
「私」を使うと、往々にして、私とあなたたちは違う。優れた私から、劣ったあなたたちに教えてあげるという教官型のメッセージになってしまいがちです。これでは嫌われて、上手くいかなくなって当然です。
「私は」「みんなは」という自分と相手を区別する話し方を使ってはいけません。
主語を「私たち」にすると、自分と聞き手を同じ立場にすることができます。
NG「今日は私の好きな〇〇の話をします」(自分の気持ちに共感)
OK「聞き手のみなさんこんなことを考えていませんか?」(相手の気持ちに共感)
「そうですよね」「そうなんですよね」
「だから、〇〇なんですよ」
NG「みんなは朝起きるの苦手ですよね」(私と他の人を区別・見下している)
OK「私たちは朝早く起きるの苦手ですよね」(自分も相手と同じ立場にいる)
大切なのは、「ダメなのはあなたたちだけじゃやない。私もダメ。私もできない」「私も失敗してきた」というように、相手と同じ立場に立って話すことです。
私はできないという自尊心がなかったり、相手を上にあげて自分を下げる行為はよくありませんが、
自分を下げて相手と同じ立場に立つことは、聞き手に共感してもらう上で必須です。
目的は自分を立てることではなく、相手に好感を与え人生を好転させることであることを忘れないようにしてください。
相手に共感する上でもう一つ大事なことは、「わかります」「大丈夫」という言葉を多用することです。
主語を私たちにし、聞き手の気持ちに寄り添い、道案内をするように一緒に歩いていくのがこの言葉です。
具体的には、「そんな状況だったらビビりますよね。わかります。でも、大丈夫です」という発言です。
この言葉を言えるということが、「私に共感して欲しい」から「相手に共感する」に切り替わったことを示します。
話すゴールは聞き手の感情を動かして「 相手にいい気持ちになってもらうこと 」です。
そのために絶対にやってはいけないことは情報を詰め込むことです。あれも、これも、それも、どれもという話し方は相手の心に全く寄り添っていません。相手からしたら「ふーん」で終わってしまいます。
情報よりも物語の方が伝わるというのは、あなた自身も実体験でわかっているはずです。
情報満載の教科書や辞書を読み始めたら、感情がまったく動かず、眠くなり他のことをしたくなります。その時間は苦痛でしかありません。
つまり、情報を詰め込んで話すということは、相手に苦痛を与えているのと同じです。
一方、ドラマやマンガを読み始めると、続きがきになって仕方ありません。もう夜遅いしやめなきゃと思っても読みたい気持ちが湧き出てしまうものです。ワクワクやドキドキが止まりません。
途中でストップするには強力な意志を必要とします。
つまり、物語は超強力で、物語で伝えることは相手の気持ちをワクワク・ドキドキさせるということです。
情報が好きと言う人はほとんどいませんが、物語が好きと言う人はたくさんいます。
情報ではなく物語を話すというと、自分の人生なんて平々凡々で、なにも面白いことなんてなくて、人に語れる話なんてないと思い込んでいる人がいます。
ですが、そんなことは決してありません。それは勘違いです。
全員の物語は誰かにとってとても面白いものです。ただ伝え方を知らないだけです。
物語の作り方のポイントは3つだけです。
「Before + After + 気づき」これだけで、あなたの話は絶対に面白い物語になります。
この3つの要素の中でも特にBeforeはとても重要です。例えば次の例でBeforeがある場合とない場合を比較してみます。
BeforeとAfterがあることで、無意識に比較が生まれます。その比較が「どうしてそうなったの!?」という興味につながります。
Beforeがないと、ただの自慢話です。これを聞いた人は「上から目線で自慢しやがってムカつく」という嫌悪感を抱きます。
このように、Beforeがあるかないかで、相手の興味を引き立てるのか、嫌悪感を抱かせるのかという大きな違いが生じます。
BeforeとAfterを伝えると、相手は興味を抱きます。「どうしてそうなったの!?」「その話聞きたい」となります。
そういった相手の気持ちに答えるのが「気づき」です。気づきを語ることで、相手の興味を更にグッと引き付けることができます。
このように言われると、「この人から株式投資の話を聞きたい」という強い感情が相手の心のなかに芽生えます。
気になって仕方なく、途中でストップボタンを押すのが難しい状態です。まさに、物語と同じ効果です。
つまり、物語とは「Before + After + 気づき」なのです。
ここでもポイントとなるのはBeforeです。
Beforeがないと、聞き手は「どうせあなただから成功できたんでしょ」「私には無理」「運がよかったんでしょ」という気持ちになり、共感することができません。
Beforeこそが共感で超大切であることはわかりました。だからといって、Beforeを長々と喋ってはいけません。
Beforeは「私は」という情報です。情報を詰め込みすぎは人に苦痛を与えます。基本の時間は30秒です。
もちろん、10分や30分話すこともあるかと思いますが、まずはそれをギューっと凝縮した30秒バージョンが物語の大本となります。
「30秒」と言われると「短い!無理!」と思う人が多くいますが、それは勘違いです。30秒は長いです。
入社や、新しいコミュニティーに入った時に、「はい、30秒自己紹介してください」と言われると、たいてい30秒もつことはありません。
例えば、30秒ぐらいのストーリーは次のような長さです。
①Before
「私は幼少期の頃、親の都合で転校を繰り返していたため、人付き合いがとても苦手でした」
「転校先の学校では仲間外れにされたり、いじめられたこともあり、そのせいでしゃべることに苦手意識を強く抱いていました」
「人と話すときに緊張して頭が真っ白なり、思ってもいないことがつい口から出るという酷い状況でした」
②After
「でも、今では会社で全社員の前で自分の意見を言ったり、講演会で登壇者として人に話すことができます。」
③気づき
「ある時気づいたんです。自分が日常でしていることは、自ら話す場を遠ざけたり、話す練習を避けたり、むしろ、話すときに緊張する練習をしていたということに」
30秒あればこれだけしっかりと自分の情報を伝えることができます。
そして、この気づきの後に、「だから〇〇です」や「そのために〇〇をしました」というストーリーが続いても全く違和感はありません。
更に応用編として、このBefore + After + 気づきのストーリーをたくさん用意しておくことです。
そして、30秒の話で聞き手の反応がよかったら、その話を膨らませていきます。
ここまでで、情報よりも物語で伝えること。物語の作り方がわかりました。
あとは実際に話し始めるだけですが、ここで重要なのは何のために話すのか?というゴールです。
ゴールは「相手にいい気持ちになってもらうこと」です。
そのためには、共感が重要です。共感を得る際に絶対にやってはいけないことがあります。それは、突っ走ることです。
話している途中に聞き手のリアクションを確認する必要があります。
話し手が注意を向けるべきなのは、リアクションの反応です。
聞き手のリアクションを確認するというのは、具体的には「あ行」と「は行」を貰うことです。これを、「あはを貰う」といいます。
「あ~」
「いいですね」
「うんうん」
「えー」
「お~」
芸人さんでもボケた後にやるべきことに笑い待ちという技術があります。お客さんのボケに対する反応を見る時間を作るということがとても大切なのです。
相手の「あ~」「えー」「お~」という反応を待たずにしゃべり続けると、お客さんを置いてけぼりにしたスピーキングロボットになります。
そうなってしまうと、相手の言葉を待てるSiriやAmazon ECHOの方がよほど話し上手になってしまいます。
「は~」(納得)
「ひぃー」(恐怖)
「ふーん」(不満)
「へ~」(興味)
「ほー」(関心)
は行の反応もとても短いですが、その反応から聞き手がどう感じているかというのがわかります。
話すとき、リアクションを確認するときに最も大事なことは相手の目を見ることです。アイコンタクトです。
よくあるやってはいけないことに、相手の額を見る、ネクタイを見る、遠くの1点を見つめるというものがあります。これは聞き手をいない存在にして無視する行為です。
話す目的は聞き手に気持ちよくなってもらうことです。そのためには、相手を無視していないものと扱っていてはいけません。
相手の目を見て、
「あ、伝わってないかな」
「ちょっと置いていきそうかな。じゃあもうちょっと説明しよう」
と相手に寄り添って話を進めることが大切です。
むしろ、相手の目を見ないと、早めたり、遅めにしたり、繰り返したりということができません。
聞き手がたくさんいるときは、誰かひとりを見るのではなく、ひとりひとりを見ます。
「誰の目を見ればいいんですか?100人いるんですよ!?」という声が聞こえてきますが、その場合ひとりひとりの目を見ます。
目は2つしかありません。そして2つの目で同じ方向を見ます。2つの目で100人全員と目を合わせることは不可能です。ひとりひとり見ていく以外に方法がありません。
相手が目の前にいるときは、比較的目を合わせやすいです。最近注意すべきなのはビデオ会議の時です。
ビデオ会議の時には、あはを貰うために間を空けるだけでは不十分です。相手が目が合って反応を見てくれていると思ってもらえるようにする必要があります。
PCのカメラの位置に注意する必要があります。特に、ディスプレイを使って、そちらにビデオ会議を投影している場合は注意が必要です。
あなたはしっかりと画面を見て相手の顔を見ているつもりでも、相手からすると明後日の方向を見たり、横を見ながら話しているように見えてしまいます。
いや、そういわれても、相手の顔を見るのがどうしても苦手、、という人がいます。それはその人が自分のことしか考えていないからです。
「相手にこう思われたらどうしよう」
「相手に嫌われたらどうしよう」
「私見た目がよくないから」
「今日は化粧のノリが良くないから」
「今日は髪型のセットがイマイチだから」
どれもこれも自分ばかりです。
話すことのゴールは相手に気持ちよくなってもらうことです。このゴールを本気で達成しようと思ったら、相手の目を見て反応を確認する以外に方法がありません。
どうしても相手の目を見るのが苦手、、と言う人がいたら、一度立ち止まって、なんのために話すのか?という目的を確認してみるのがいいかもしれません。
ここでは、聞き手の感情を動かすために基本となる心構えを解説してきました。
より具体的に、話す内容をどうしたらいいか?という「論理」とどうやって喋ると効果的か?という「偽技術」については、下記をご参考ください。
結論は先に言うべきか後に言うべき?人を惹きつけるタイトルの付け方とその理由