世の中には悩みを持っている人が多くいます。「嫌われる勇気」の元になっている心理学者アルフレッド・アドラーも「人の悩みの9割は人間関係である」と断言しているほどです。
逆に言うと、人間関係を良好にすることができれば悩みの9割はなくなるということです。
そして、人間関係に最も影響するのは言葉です。
「あの人のこと嫌いだわ」「好きになれない」という時、多くの場合、その人の顔や動きよりも、こんなことを言われたという言葉で判断していることがほとんどです。
直接言われただけでなく、LINEやSNSでこんな発言をしていたなど間接的に発している言葉でも人は嫌われることも多くあります。
言葉とは人の好き嫌いを大きく左右してしまうほど強力なツールです。
自分が誰かを嫌いになるのと同様に、誰かもあなたの発言で嫌な思いをし嫌いになっているかもしれません。
ここでは、人が嫌いになる言葉をピックアップし、それを好かれる言葉に言い換える方法について解説しています。
何気なく言ってしまいがちですが、間違いなく人を不快にさせ、人間関係を壊し、悩みを生み出す11個の言葉があります。
とくにこれらの言葉のなかで、「なんで言っちゃいけないの?」「相手への配慮として言ってるよ」と感じたものは要注意です。
無意識に相手を傷つけ、関係性を悪化し、自分自身の人間関係の悩みを増やしている可能性があります。
この言葉を言い換えると次のようになります。
言ってはいけない言葉 | 言い換え |
---|---|
疲れてる? | 久しぶり!元気だった? |
私のこと覚えていますか? | あのときの〇〇です |
私も同じだからわかる | 同じじゃないけどわかる気がする |
言ってくれればよかったのに | 力になりたかった。次は気軽に連絡してね |
自慢じゃないけど | 自慢してもいいですか |
できればやりたいのですが | 都合が悪いのでできません |
仕事はうまくいってる? | 最近どう? |
なぜそういうミスをしたの? | どうしたらミスを防げると思う? |
その話、前にも聞きました | 〇〇の話ですね。面白いですよね |
先日もお伝えしましたが | 説明がわかりにくくて失礼しました |
若いのにしっかりしてるね | しっかりしてるね |
言い換えだけ見れば簡単ですが、なぜ言ってはいけないのか?を、それを言われた人の心理を理解すると、より応用力が高まり、円滑な人間関係を築くことができます。
各言葉がなぜ言ってはいけないのかを解説する前に、私たちが普段使っている言葉に関して知っておくべきことがあります。
私たちは、多くの言葉を駆使して日常を送っていると思い込みがちですが、実際は、習慣化していて、ほぼ決まりきったキーワードが口癖になっています。
わかりやすい例としては、人が誰かのモノマネをしたときに「あー、それわかるー」と感じることです。それは、人の言葉のパターンがとても限られていることを表しています。
限られた少しの言葉をピックアップすれば、その人っぽくなってしまうということです。
これは他人の例ですが、自分自身の言葉も習慣化していて口癖になっているということです。
このため、自分の口癖に言ってはいけない言葉が含まれていないかを確認し、含まれていた場合は改善することがとても大切です。
「疲れてる?」という言葉は、人によって不快に感じなかったり、むしろ、気づいてくれてありがとうと感じる場合もある言葉です。
このため、悪気なく無意識に言ってしまう人が多い言葉でもあります。ですが、この言葉で不快になる人がいるというのが現実です。
この言葉のポイントは、相手が実際に疲れているかどうかは関係ありません。
「疲れている」というマイナスの言葉を相手にぶつけているということが問題です。
「疲れている?」は受け取る人によっては、「調子悪そうに見えるのかな?」「目の下にクマでもできているのかな?」「化粧失敗したかな」「もっと頑張らなければいけないのかな」と感じさせる言葉でもあります。
言われた人がポジティブで元気になることのない言葉です。
多少疲れがあったとしても、「よーし頑張るぞ!」と気合を奮い立たせている人に、「疲れてる?」という言葉をかけたら、その人の腰を折ることにもなります。
相手をネガティブにする言葉は他にもあります。
「疲れてる?」「寝てる?」という言葉は相手のことを心配したり思いやったりしている言葉とも考えられます。
時には、その言葉がけが必要な時もあります。こういった言葉をかけるときは、相手の状態や言葉をかけるタイミングをしっかりと見極めて、相手が不快な気持ちにならないように配慮する必要があります。
相手の服装や髪型、所有物は、相手が誰からの制限もうけずに好んでしているものです。
それに対して自分の価値観に合わないからといって、「あれ、なんかおかしくない?」という間接的な否定をすれば、相手は確実に嫌な気持ちになります。
自分に好きなものがあるように、相手にも好きなものがあります。自分と相手の価値観は違うということを理解しておく必要があります。
「疲れてる?」の言い換えは、「久しぶり元気してた?」とか「調子どう?」です。
「元気」という言葉自体がポジティブでいい言葉です。あるいは「調子」というニュートラルな言葉に置き換えます。
大切なことはマイナスな挨拶をしないということです。
「元気そうだね!」「今日もいいね!」「今日もよろしくね!」という言葉がけをすれば、相手のテンションも上がります。
こちらから「私のこと覚えていますか?」と聞かなければいけないような相手や、相手がこちらに気づいていないような場合は、相手はこちらのことを覚えていません。
そういう人に対して「私のことを覚えていますか?」と聞けば、相手は焦ります。「あれ、この人誰だっけ、、会ったことあるような、ないような、、」と頭の中で色々と考えて、次に発する言葉も気を使います。
これは、自分が言う側ではなく、あれこの人誰だっけという見覚えのない人に「私のこと覚えていますか?」と街中で急に声を掛けられた場合を想像すればわかります。
そして何よりもこの言葉を言ってはいけない一番の理由は、相手も自分も得をしないか、どちらかが高い確率で嫌な気持ちになるということです。
相手が完全に忘れていた場合や、思い出すのに時間がかかると、「あれ、私のこと覚えてないんだ、、そんなにどうでもいい存在なのかな、、」と悲しい気持ちになります。プラスになることはありません。
そして、相手は覚えてなければ「失礼なことをしてしまった、、」と感じます。たとえ覚えていたとしても、「おれ、試されてるのかな、、」という嫌な気持ちを感じることがあります。
相手を試すのではなく、自分から名乗る。それが相手への配慮です。
「あの時お会いした〇〇です。お久しぶりです。」これでいいんです。
逆に、自分から名乗らないというのは相手への配慮の欠けた行為です。嫌われてもしかたありません。
ついつい言ってしまいがちなフレーズの1つに「私も同じだからわかる」という言葉があります。
これを言う側の意図としては、相手の気持ちを理解し共感することが大切という考えがあります。
この言葉のNGなポイントは4つです。
実際のところまったく同じ体験をしている人はいません。同じ体験でもその人の過去や文脈で感じたことも変わります。このため、何か話をしたときに「私も同じだからわかる」と言われると、「ほんとうに同じかな?」と感じます。
今まで、話を聞いてくれて気持ちよく話してたのに、この言葉を言われた瞬間に「いや、同じじゃないし」「この人全然わかってくれてない」という気持ちになります。
相手は、自分に起こった出来事を話すことで、自分の境遇を共感・理解して欲しいと思っています。私に起こった特別な話として話しています。
決して、みんなが経験したことを、同じように私も経験したという気持ちで話していません。
このため、「私も同じ!わかる」と言われたときに、その話しは、自分だけの特別な経験から、他の人も経験しているあるあるへと変わってしまいます。
更に「そんなの、私はとっくに体験してたよ」「何を今更」という相手を見下すようなニュアンスも入ってしまいます。
もしかしたら、あなたは本当に同じ体験を経験済みかもしれません。ですが、相手にとっては初めて直面したことで、衝撃の出来事です。
話を聞くときは、「俺が俺が」「私が私が」ではなく、相手の気持ちを尊重する必要があります。
相手に「本当に同じかな?」「私の話はあるあるなんだ、、」と感じさせた上で更に悪いパターンとして、相手の話を奪があります。
相手が話しているときに「わかりますよ、私もね」と言った時点で、話し手が相手から私に切り替わります。
対人関係の基本は「相手に喋ってもらうこと」です。これを「私、私」というように出しゃばってしまえば、嫌われて関係にヒビが入ってしまいます。
相手の話を奪うという行為は、相手を下げて、マウントをとる行為になることもあります。相手との関係に確実にヒビが入る絶対に言ってはいけない言葉です。
相手が喜んで、「ねえねえ、これよくない」と話しているときに、「その程度で喜んでるの?」「私なんてもっと持ってるよ」「あなたなんてしょぼいよ」「まだまだだね」というメッセージを伝えてしまいます。
これは相手の上に立とうとする自慢マウント行為なので、人間関係をよくしたいと思うのであれば絶対にやってはいけません。(逆に、嫌われたければ、実行するべきことです)
相手の話に「わかる」と同調し、そこから相手のエピソードをマウントする話をしようとするのもNGです。
「あなたの経験なんて取るに足らないこと」「私に比べたらまだまだ」「私の方がもっとすごい経験をしている」というマウント行為です。
「私も同じだからわかる」の言い換えは、「同じじゃないけどわかる気がする」です。
「私も似たような経験をしたことがあるからわかる気がする」でも大丈夫です。
ポイントは、「同じじゃない」「わかる気がする」です。
NG | 同じ | わかる | 主体は「私」。相手を尊重していない |
OK | 同じじゃない | わかる気がする | 主体は「相手」。相手を尊重している |
言葉はほんの少ししか変わっていませんが、相手に与える印象は大きく変わります。
重要なポイントは言葉の主体が、「私も同じ、私もわかる」から、「あなたの気持ちがわかる気がする」という相手の尊重へと変わることです。
「私も同じ、わかる」という言葉にちなんで、カウンセリングで言ってはいけない言葉というものがあります。
なぜ言ってはいけないかの理由がより具体的でわかりやすいので覚えておくと参考になります。
カウンセリングの世界では「私も同じ」「そうだよね、わかる」は言ってはいけない言葉とみなされています。
「同じ」「わかる」といった同調の言葉は、相手との距離を急激に近くすることができることができる強力な言葉です。
この言葉を言われた人は「この人は私のことわかってくれるんだ」という仲間意識が生まれます。
ですが、もし同調できないことがあって「私は違うな」「そうは思わないな」と言った瞬間に、相手は「あれ、このことはわかってくれないんだ」と感じ敵対意識が生じる原因になってしまいます。
カウンセリングで押さえておかなければいけないことは、人は完全に同じ体験をできることはないし、同じ気持ちになれることはない ということです。
このため「同じじゃないけど、わかる気がする」や「そんな事があったんですね」という言葉で相手との距離感を適切に保つことができます。
同調ではなく、相手への共感として「それは悲しいですね」「それは辛いですね」とつい言ってしまいがちですが、実はこれもカウンセリングでは言ってはいけない言葉です。
ある体験をしたときに「悲しい」や「ツライ」など、どういった感情になったかは相手自身が決めることであって、こちらが決めることではありません。
また、仮に、相手が「悲しい」「ツライ」と感じていたとして、ドンピシャに共感できたとしても、「悲しい」「ツライ」というのはネガティブなマイナスワードなので、言われた相手は凹み傷つきます。
私って悲しいんだ、ツラいんだと受け取ってしまいます。
このため、マイナスの単語を含んだ言葉を発してはいけないのです。
言い換えは、「そんな事があったんですね」です。シンプルでいいんです。
NG:「それは悲しいですね」「それはツライですね」「それは最悪ですね」
OK:「そんな事があったんですね」
カウンセリングの先生が言うことではないですが、一般の人がよくやってしまいがちなNGの共感があります。それは相手の感情を上回ることです。
相手は、「彼氏のちょっとかわいいエピソード」として話しているのに、それを、「彼氏はヤバいヤツで別れた方がいい」に変換してしまっています。
相手からしたら、自分の彼氏を否定されて嫌な気持ちになります。
愛おしいペットの失敗ストーリーを笑い話で話しているのに、その愛おしいペットをさげすむ発言をしています。
好きなものを否定されたのと、飼い主の自身が見下された気持ちになります。
この2つの例のように、「ヤバい」「最悪」「バカ」「できていない」などのマイナスワードを共感として使ってはいけません。
いずれも言い換えは、「そんな事があったんですね」です。
「言ってくれればよかったのに」というのは、相手の側に立って、「知ってれば助けたのに」というメッセージとして悪気無くつかっている人も多い言葉です。
ですが、このメッセージから「言ってくれればよかったのに、なんで言わなかったんだよ」というように、責められたように感じてしまう人がいます。
他にも、「それどころじゃなくて言える状態じゃなかった」という場合もあります。
先輩や上司、親などでありがちですが、「なんで言わなかったんだよ。言えよ!」といって怒り出す人がいます。
ですが、相手は苦しんでそれでも言えなかった人です。その人に対して更に怒ると、相手は余計に委縮してしまいます。
過去は変わりません。過去のことに対して怒ってもどうしようもないですし、そこを怒ったことで関係性や現状が改善することはありません。
もう一つ重要なのは、相手がなぜ言わなかったかということです。
相手はその時困っていました。でも言えなかったのです。それは、その時点での、あなたとの関係性がその程度だからです。
あなたに対して、相談するのは悪いなという気兼ねをしていたかもしれません。連絡が疎遠になっていたのかもしれません。
少なくとも、困ったらあなたに相談しようという関係性ではなかったということを理解しておく必要があります。
悪気はなく、むしろ善意で「言ってくれればよかったのに」と言っている人の本心は「力になりたかった」です。
なので、素直に「力になりたかった」と伝えてあげるのが、一番気持ちが伝わります。
そのうえで、「もし同じようなことがあったら、気軽に連絡してね」の一言を付け加えてあげると、相手はとても頼もしく感じ、関係性が良好になります。
「なんで言ってくれなかったの」といっても過去は変わりません。なので、「その時に知ってれば力になりたかった」と過去をそのまま受け止めて、そして、「次は」という未来につなげます。
「自慢じゃないけど」という言葉が出てきた瞬間にみんなが、「あっ、これから自慢話が始まる…」というのがわかります。
「自慢じゃないけど」の一言で、相手の「それ自慢じゃん」という感情を威圧して封じ込めています。
更に、「これが私にとっての普通なんだよね」という、自分が見下されたメッセージになり、嫌みに聞こえます。
それが相手からするとストレスになってしまいます。
だからと言って人に対して自慢してはいけないというわけではありません。自分が頑張った時や表彰されたときなど、周りの人に言いたくなることもあります。それが普通です。
その時に、自分の「言いたい」という気持ちを押し殺すと、自分自身のストレスとなってしまうので、言わないとう選択肢をとってはいけません。
この対処法は、素直に「自慢になっちゃうんですけど」と言うことです。
「ちょっと、自慢しちゃっていいですか」と言って話し出せば相手は、自分の境遇を否定する嫌味だとは決してとりません。
むしろ、素直に「おー、すごいじゃん」という共感をすることができます。
不幸自慢をするときも同じです。私の方がもっと不幸というのを言いたくなったときは、「自慢になってしまうんですが、私の不幸自慢を聞いてください」と素直に言いましょう。
相手に対して自慢話で恐縮ですと事前に伝えておくことが、心の準備をする相手への配慮となります。
「できればやりたいんですが」という言葉は、相手からの依頼を断るときに使う枕言葉です。
「できればやりたいんですが、今回はこうこうこういう理由でお断りさせていただきます」といった感じです。
これを言う側の意図としては、本当は1mmもやりたくないけど相手に気を遣っています。
ですが、この言葉をつけることで相手の心の中に「やりたいんなら、なんとかして日程をあけてくれよ」や「本心はやりたくないんでしょ」という反感や敵対心を生む結果になってしまいます。
また、「できればやりたいんですが、」の後ろに続ける断るための具体例をつけることによって、その用事よりもあなたの依頼は優先度が低いです。ということを明確に伝えることになります。
「できれば行きたいんですが、会社の後輩との約束があるので」と言えば、会社の後輩よりあなたの約束は下ですというメッセージになり、相手に無意識に比較しているということを伝えてしまいます。
「できればやりたいんですが、~」の言い換えは、「都合が悪いのでできません」 です。
具体的に言う必要は一切ありません。
断る時点で相手は少なからず傷つきます。そこで更に具体的に理由を説明して傷をえぐる必要はありません。ストレートに短くはっきりと断るのが最善の策です。
「できればやりたいのですが、」「本当は行きたいのですが、」といった相手への配慮を示す社交辞令の注意点はバレてはいけないということです。
社交辞令は社交辞令だとバレないからプラスの効果を生み出すのです。
社交辞令だと相手が感づいたとき、相手は嫌な気持ちになります。そして関係性に悪化し距離が生まれます。
なので、無理に社交辞令を言うぐらいなら、シンプルにできない。行けないという事実を伝えることが一番賢い選択になります。
「仕事はうまくいってる?」の問題点は、話ずらい話題に対して、相手にYESかNOの回答を迫っているということです。
「仕事はうまくいってる?」 の言い換えは「最近どう?」です。
漠然としていて、あまりいい質問のように見えませんが、一番最初に質問をするときなどは逆に、相手が答えやすいいい質問です。
部下や社員などついつい誰かが失敗をしてそのことを報告したときに、開口一番に言ってしまいがちなのが「なぜそんなミスをしたの?」です。
この言葉を発するときは、たいてい怒りが入っています。「余計なことをしやがって」という感情を相手にぶつけた言葉でもあります。
ですが、ミスをした相手は、ミスをしたくてしたわけではありません。ミスを報告すること自体とても気が重かったことでしょう。
それを、きちんと報告してきてくれたのです。それが正しい現状です。
また、この言葉を言ってはいけないと言われると、「原因を追究するのは重要でしょ!」「二度と発生しないようにしないと!」という反論がきそうですが。
であれば、そのことをストレートに伝えればいいのです。「なんで?」と相手を責め立てる必要は一切ありません。
相手が自分の非を認めていないなら責めるのもわかりますが、相手は既に非を認め素直に報告してきた後です。それを更に責め立てると、次からその人は失敗を報告せずに隠そうとするかもしれません。
重大な事故につながりそうな予兆に気づいても、言ったら責められると考えて、進んで報告してくれることもなくなってしまいます。
「なぜそんなミスをしたの?」の言い換えは「どうしたら、そのミスを防げそう?」です。
なんでなんでと相手を責めたところで、その失敗は取り消せません。相手を責め立てても、その人が失敗して凹んでいる傷口をこじ開けて塩を塗りたぐるだけです。
やるべきことは、どうしたらそのミスを今後発生させないことができるか?です。
それを素直に相手に伝えればいいのです。
こうすれば、失敗をした本人は、
こうすることで、その人も大きく成長し、今後の対策も打てて、更に、今後何か変な予兆があったときにその人がすぐに報告してくれるようになります。
責め立てなかったことで人間関係も良くなります。
「なぜそんなミスをしたの?」では何も解決せず、マイナスなことが広がるのに対して、「どうしたら、そのミスを防げそう?」に言い換えるだけでプラスが広がるわけです。
なおいいのは、「素直に報告してくれてありがとう」という枕言葉をつければ、失敗して申し訳なさを感じている相手への配慮にもなります。
同じ話を何度も何度もする人がいます。聞いている側は「あー、また始まったよ。いい加減にしてほしいな」と思います。
そして、率直な人であれば「その話前にも聞きましたよ」と伝えます。
これの何がいけないかを理解するには、何度も同じ話をする人の心を理解することが大切です。
何度も同じ話をするのは、そのストーリーがその人にとってとても印象深く、いい話だと思っていて、何度でも話したいものだからです。
その人は話したくて話しているのです。それを、「その話前にも聞きました」と言って、「もうその話いいです」「もう喋らないでください」と言うのは、相手の気持ちを完全に無視した行為になります。
相手が「これから話します」という姿勢に入ったのを止めてはいけません。それはとても失礼で、相手を傷つける行為です。
「その話前にも聞きましたよ」の言い換えは、「〇〇の話ですね、面白いですよね」です。
こうすれば、自分の「もう聞いたんだけどな」という気持ちを無視せず、相手の話の腰も折らないという両立ができます。
さらに上級者になれば、所見のように聞くという方法もあります。
「先日もお伝えしましたが」という言葉には、「前も言ったのに、何度も言わせるなよ」「もう二度と聞くなよ」といった相手に対する攻撃的な感情が含まれています。
言われた相手は、申し訳ない気持ちになったり、もう聞きにくいなという気持ちになります。嫌な思いをして、その関係性が近くなることはありません。
相手に対して攻撃的であったり、嫌な思いをさせる言葉は人間関係の悩みを大きくさせるだけで、決して改善することはありません。
また、自分は文章を練り上げて伝えているのでしっかりと覚えていますが、相手はその伝えられたタイミングなどによっても覚えていないこともあります。
自分と相手ではその情報の記憶に残りやすさが違うというのもポイントです。
「先日もお伝えしましたが」の言い換えは「説明がわかりずらすくて失礼しました」です。
人から伝えられた情報は記憶に残りにくいのが普通です。「ごめん、もう1回教えて」「先週言ってたのなんだったけ」となるのは人として普通のことです。
それを理解して、「すみません、先日の話もう一度教えてくれませんか?」と言われたら「ですよね。」と受け止め、更に、相手が絶対に忘れないような予防策を打てなかった自分を謝罪して「説明が分かりずらくて失礼しました」と言うのが、相手への配慮です。
目的は、自分の我を通すことではなく、自分の大きな悩みの要因である人間関係を改善することです。このため、相手がどう受け取るかを知っておくことがとても大切です。
言葉 | 目的 | 相手の受け取り方 |
---|---|---|
先日もお伝えしましたが | マウントをとる。自己肯定感を上げる。 | 嫌な奴。 |
説明が分かりづらくて失礼しました | 人間関係を良好にする。相手に配慮する。 | 丁寧で素敵な人。 |
ついつい自分よりも年下の人に言ってしまいがちな言葉が「若いのにしっかりしている」です。
この言葉は口にしている人も多いですが、その言葉の裏には、「若い人はしっかりしていないのが普通だ」という若い人に対する差別が含まれています。
自分が若い人はこうあるべきと考えている思い込みからくる差別を伝えていることになります。
これを言われた人は、「この人は基本的に、年下に対する敬意を持てない人なんだ」と思います。
この「〇〇なのに」という言葉はとても危険で言ってはいけない差別用語です。
「若いのに」以外にも「女なのに」「男なのに」「年寄なのに」「中国人なのに」と言ったように、「~なのに」をつけることで、相手の属しているカテゴリー全体を差別した目線で見ていることが伝わります。
「子供がいるのに」という言葉も、本来はこんなことをするべきではないのに、というその人の「こうあるべき」といった固定観念が含まれています。
NGワード | 含まれた意味 | 伝わるメッセージ |
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若いのにしっかりしてる | 若い人はしっかりしてないのが普通 | 若い人に敬意を持てない人 |
女性なのに仕事ができる | 女性は仕事ができないのが普通 | 女性に敬意を持てない人 |
男なのに家事をするんだ | 男は家事をしないのが普通 | 家事は女性の仕事 |
年配なのにバリバリ働いている | 年配になったら働かないのが普通 | 年配者は仕事ができない |
子供がいるのに遅くまで仕事をするんだ | 子供がいる人は遅くまで仕事しないのが普通 | 子供がいる人は長く働いてはいけない |
中国人なのにマナーがいい | 中国人はマナーが悪いのが普通 | 中国人を見下している |
おじいちゃんなのにスマホが使える | おじいちゃんはスマホが使えないのが普通 | おじいちゃんは機械操作ができな |
おばさんなのにダンス上手いですね | あばさんはダンスできないのが普通 | ダンスは若い人がするもの |
芸人さんなのに頭がいいですね | 芸人は頭が悪いのが普通 | あなた以外の芸人は頭が悪い |
「〇〇なのに」という言葉以外にも、「〇〇はやっぱり~ですね」という言葉も思い込みからくる差別を含んだ言葉です。
「年配の人はやっぱり、しっかりしてますね」と言えば、年配の人はしっかりしているのが普通という意味になります。
しっかりしていない年配や、しっかりしている若い人をほんのりと差別しています。
実際に、しっかりしているかしていないかは年齢や性別、国籍など関係ありません。そして、しっかり=絶対的にいいことではありません。ちょっと抜けてることでムードメーカーになる重要な存在もいます。
「芸人さんはやっぱり、喋りが上手いですね」と言えば、芸人さん=喋りが上手い人という思い込みからくる限定になります。
ですが、芸人さんの中には、喋りが上手い人もいれば、ネタを作るのが上手い人、コントが上手い人もいます。もちろんその中には喋るのが苦手な一流の人もいます。
このように、職種でくくることも差別です。
「〇〇なのに」の言い換えは「しっかりしてる」です。余計な枕詞をつける必要はありません。
シンプルに褒めれば、差別もなく伝わります。
とくに、相手の名前をつけて「〇〇さんは、しっかりしている」と言えば、誉めていることがもっと伝わるようになります。
相手も「私のことをよく見てくれてる」と感じ好感を抱きます。どこかで誰かをけなしたり差別することもないので、人間関係はプラスになるのみです。
NGワード | 言い換え |
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若いのにしっかりしてる | あなたはしっかりしている |
女性なのに仕事ができる | あなたは仕事ができる |
男なのに家事をするんだ | あなたは家事ができる人だ |
年配なのにバリバリ働いている | あなたはバリバリと働くひとだ |
子供がいるのに遅くまで仕事をするんだ | あなたは遅くまで頑張って仕事をする人だ |
中国人なのにマナーがいい | あなたはマナーがいい |
おじいちゃんなのにスマホが使える | あなたはスマホが上手に使える |
おばさんなのにダンス上手いですね | あなたはダウンすが上手い |
芸人さんなのに頭がいいですね | あたなは頭がいいですね |
年配の方は、やっぱりしっかりしてる | あなたはしっかりしてる |
芸人さんは、やっぱり喋りが上手い | あなたは喋りが上手い |