社会で人と関わって生きていく上でコミュニケーション力は外せないスキルです。コミュニケーション力がないと人といい人間関係を築くことができません。
もちろんそれは、お客さんや好きな人だけではありません。パートナー、両親、子供、友達、親戚、同僚など自分以外のすべての人との関係性です。
誰もがコミュニケーション力は重要で身に付けたいと考えています。
一方、人との会話の一つに雑談があります。雑談は「雑」という漢字が入っているように軽視されがちな言葉でもあります。
ですが、実はどんな人とも何気なく話す雑談こそがコミュニケーション力のことです。雑談を苦手だと感じている人にコミュニケーションが得意だと言う人はいません。
雑談は話好きな人がもつ個性や特性だと考えている人がいますが、そうではありません。
雑談とは知識です。特別なスキルは必要ありません。雑談のポイントを知っていて実践しているかでしかありません。欲しい人は誰でも手に入れることができます。
ここでは、どんな人とも楽に話せて心の距離をグッと縮めることができる雑談のポイントについて、実例を踏まえ解説しています。
そもそも多くの人が雑談について勘違いしています。
その結果、人と話しても上手く関係性が構築できず、「あの人はわからんずやだ」「気が合わない」「伝わらない」という感情を抱くことにつながってしまいます。
雑談を軽視している人で人間関係が良好な人はいません。
「人の悩みの9割は人間関係である」とかの有名な心理学者アルフレッド・アドラーも断言しているほどです。
そして、その人間関係を構築する基本中の基本は雑談です。つまり、雑談がきちんとできる=人間関係がいい=ほとんど悩みがない ということです。
雑談とは社会で生きていく上でとても重要なことです。
もちろん、仕事においても雑談はとても重要です。プレゼンのスキルや、技術や実績よりも、時には雑談で築き上げた人間関係の方が効果を発揮することがあります。
また、プレゼンやスピーチが得意=雑談が得意ではありません。プレゼンやスピーチのスキルがものすごく高いのに、周りの人から敬遠されて嫌われている人はいます。
こういう人は仕事やお金はある程度回ってくるかもしれませんが、常に誰かから嫌われる状態なので幸せな人生を歩むことはできません。
まとめると、雑談への正しい認識は次のようになります。
雑談力というと喋り上手で、いろんなことを知っていてストーリーが次から次へと出てくる人を想像しがちですが、そうではありません。
雑談力とはポイントさえ踏まえれば誰にでもできることです。雑談力を分解すると次の2つで構成されています。
ほとんどの人が話す力にフォーカスしがちですが、最も大切なのは聞く力です。
雑談には5つの流れがあります。
雑談をするためにはまず始める必要があります。この始め方がそもそもわからない、、という人も少なくありません。
その後に広げ方を知らないと「今日は暑いですね」→「そうですね」→「、、、」で終わってしまうこともあります。
その後に相手の話を聞き、盛り上げます。そして、始め方からには終わらせる必要があります。
終わり方もスムーズにかつ好印象を残して終わらせるようにする。これが雑談力です。
この5つの流れにおいてそれぞれ最適な方法があります。
雑談力の1流~3流をまとめると次のようになります。
ステップ | 1流 | 2流 | 3流 |
---|---|---|---|
準備 | 表情を準備する | 話すネタを準備する | 準備しない |
相手が他のことをしている場合 | 相手から見えるところに立つ。 目が合ったら微笑んで会釈する。 | じっと待つ | 話しかけない |
始める | 相手に焦点を当てる | 自分のことを話す | 話しかけられるのを待つ |
あいさつ | あいさつに2プラスする | 大きい声であいさつする | あいさつしない |
相手の名前 | 会話の中で繰り返し言うことで覚える | 覚えようとする | 忘れる |
項目 | 1流 | 2流 | 3流 |
---|---|---|---|
広げ方 | 共通点より相違点を探す | 共通点を探す | 壁をつくって立ち去る |
褒め方 | ビフォーアフターを褒める | 無理やり褒める | 褒めない |
項目 | 1流 | 2流 | 3流 |
---|---|---|---|
ネガティブな話題 | 共感して全力で励ます | 同調する | スルーする |
SNSのコメント | 全力で承認する | かぶせる | スルーする |
自分の意見と違う | ズラして質問する | 自分の意見を言う | スルーする |
項目 | 1流 | 2流 | 3流 |
---|---|---|---|
たとえ話 | たとえ話で一人二役を演じる | たとえ話をする | しない |
擬音・感嘆 | 大きな声で堂々と身振り手振りを交える | 擬音・感嘆を言う | 使わない |
質問 | 一人質問を使う | 相手に質問する | しない |
役割 | 空きを担当する | 自分の得意な役割を担当する | どれも苦手 |
項目 | 1流 | 2流 | 3流 |
---|---|---|---|
終わり方 | 具体的なエピソードを褒めてお礼を言う | その場と後からもお礼を言う | その場でお礼を言う |
次回予告 | 相手の脳に空白(気になる)を残す | すべて言ってしまう | しない |
5つのステップ以外にも心得ておくべき心構えがあります。
項目 | 1流 | 2流 | 3流 |
---|---|---|---|
身体の向き | 話している人に腹を向ける | 顔だけ動かして目線を合わせる | 話している人をみない |
自己開示 | 失敗談や弱点を1つづつ見せる | すべて言ってしまう | 自分を良く見せようとする |
話の全体像 | 全体を俯瞰している(5つのステップで何をするべきかをわかっている) | 具体的な話を練習する | 理解していない |
褒められた時 | 「幸運だった」と言う | 自分のおかげと言う(努力、才能、意志、習慣など) | おだてられて調子に乗る |
話を始めるときに次の5つのポイントを押さえておけば、とてもスムーズに話を開始することができます。
雑談をはじめるときに、3流は何も準備をしません。いつも行き当たりばったりです。誰かに話しかけられたら「あ、ああ、久しぶり」といったように話を始めます。
2流は話すネタを準備します。今日は〇〇さんに会いそうだから、この話を用意しておこうかという状態です。
1流が準備するのは話ではありません。同じ話題を話すときでも、話しやすい人と話しにくい人がいます。つまり、雑談のしやすさを左右するのは話の内容ではありません。
では何を準備するかというと、表情を準備します。
唐突ですが、なぜ人はみなミッキーマウスが好きでディズニーランドに行きたがるのでしょうか?それはミッキーが常に微笑んでいるからです。
ミッキーがいつも明るく「やあ僕ミッキー」と言っているからみんなミッキーが好きなのです。
もしミッキーが落ち込んでいて暗かったらどうでしょう「僕ミッキー。最近疲れがたまってて、あんまり体調良くないんだ。ゴホゴホ」。同じミッキーですが会いたくなるでしょうか?
つまり、思っている以上に表情が大切ということです。
無表情や真顔はいけません。相手に怖い印象を与えます。雑談を気持ちよく始めるためには自然な微笑みを準備します。
急にはできないのであらかじめ準備したり練習しておく必要があります。
項目 | 1流 | 2流 | 3流 |
---|---|---|---|
準備 | 表情を準備する | 話すネタを準備する | 準備しない |
相手が何か別のことをしていたりこちらに気付いていない場合は、まず相手から見えるところに立つことから始めます。
そして、目が合った時に微笑んで会釈をします。
そうすると相手が気づいたときに話しかけてくれる確率がグッと上がります。
項目 | 1流 | 2流 | 3流 |
---|---|---|---|
相手が他のことをしている | 相手から見えるところに立つ。 目が合ったら微笑んで会釈する。 | じっと待つ | 話しかけない |
始め方が下手な3流は「話しかけられるのを待ちます」。教室やパーティー、会社や飲み会など自分から話しかけることはありません。
心の中で「誰か私に話しかけてくれないかな~」と思っています。
2流は話しかけるのですが自分のことを話します。「こんにちは〇〇です。」「私は最近~」といったように話の主語は「私」です。自分にばかりフォーカスしています。
1流はマインドが違います。話しかけるときも話すときもフォーカスは相手です。「こんにちは〇〇さん」「〇〇さんの今日の雰囲気は△△ですね」や「〇〇ですか?」といったように、話題の主体はあいてです。
特に質問を使います。
項目 | 1流 | 2流 | 3流 |
---|---|---|---|
始める | 相手に焦点を当てる | 自分のことを話す | 話しかけられるのを待つ |
雑談力のない3流ははあいさつをしません。話しかけられても恥ずかしい・人見知りといった理由でまともに挨拶をしない人です。
2流は大きい声であいさつをします。「おはようございます!」「こんにちは!」これはこれで悪くはありませんが、雑談力があるとはいえません。あくまで普通です。
1流は「おはようございます!」「こんにちは!」というあいさつに2語足します(2プラス)。この追加する2語はなんでも大丈夫です。
項目 | 1流 | 2流 | 3流 |
---|---|---|---|
あいさつ | あいさつに2プラスする | 大きい声であいさつする | あいさつしない |
0 「おはようございます!」
+1 「今日はずいぶんと早い出社ですね。」
+2「昨晩ぐっすり寝れたんですか?」
0「こんにちは」
+1「今日は暑いですね~」
+2「にも関わらずお元気そうですねー」
0「こんばんは!」
+1「今日も素敵な格好されてますね」
+2「これからどこかへ行かれるんですか?」
0「お久しぶりです!」
+1「〇〇の時以来ですね~」
+2「お元気にしてましたか?」
このように2語足しただけで、話がグッグと前に進みます。
多くの人は「しっかりとあいさつをしなさい!」と親や先生に言われて育っています。なのであいさつをすることはできます。ですが、あいさつに2プラスすると話がとてもスムーズに進むことは知りません。
ほとんどの人が知らないことですが、知っていればとても簡単にできることです。
人が最も大切にしているものは自分の名前です。
3流は相手の名前を忘れます。2流は語呂合わせや連想で紐づけてなんとか覚えようとします。
1流は会話の中で繰り返し反復することで覚えます。
例えば次のような流れです。
「初めまして、お名前はなんというんですか?」
「〇〇さん。素敵なお名前ですね。漢字はどう書くですか?」
「〇〇さんのご出身はどこなんですか?」
「へー、〇〇さんはそこから来られたんですね!」
「〇〇さんは何をされてるんですか?」
雑談の苦手な人で相手の名前を何度も何度も呼ぶなんて不自然と思い込んでいる場合がありますが、それは勘違いです。
名前を呼ばれなくて嫌な思いをすることはありますが、名前を何度も呼ばれることで気分を害す人はいません。
「私のことを覚えようとしてくれている」「私を一個人として見てくれている」という丁寧な印象を与えることができます。
むしろ、名前を最初の1度だけ呼ぶだけの場合は、その後の会話で相手の名前を省略しているのと同じです。
ドイツの心理学者が人が物事をどれだけ覚えているかを調査した数値化したデータがあります。これを忘却曲線といいます。
人が何かを覚えておくためには、ある一定時間の間に反復して記憶する必要があります。
このため最初の方にまとめて名前を呼ぶだけでなく、その後の会話の中でも相手の名前を呼ぶことが大切です。
会話の中で繰り返し言うことで覚えることは学術的にも正しい方法です。雑談に対してそこまでしっかりと意識して話始める。これこそが雑談力です。
項目 | 1流 | 2流 | 3流 |
---|---|---|---|
相手の名前 | 会話の中で繰り返し言うことで覚える | 覚えようとする | 忘れる |
話を始めたら次は話を広げる方法についてです。
親友であれば、電話や居酒屋など気づいたら2~3時間ぐらい経ってることもあります。ですが、初対面の人とは話がもたないという人がほとんどです。
だからこそ、親友でない初対面の人とも話を広げることができるというのが雑談力です。
3流は話を広げることができずに壁を作ってしまいます。「じゃあ、これで」といったようにすぐにその場を立ち去ろうとします。
2流は共通点を探します。コミュニケーションや雑談の本には「共通点を探しましょう」と書いてあることも少なくありません。ですが、一般的に共通点は少ないというデメリットがあります。
この方法では偶然共通点があった場合にしか話が広げられないことになります。
「あなたも〇〇県出身なんですね」「あなたも山登りとサイクリングが好きなんですね」「あなたもスラムダンクが好きなんですね」じゃない方が多いのが普通です。
1流は共通点よりも相違点を探します。はっきり言ってこの方法は最強です。話を無限に広げることができ、相手も自分の好きなことについて話すのでいい気持ちになります。
相違点はスルーする残念なことではなく、相違点は相手から簡単に話を引き出せるラッキーチャンスです。
「〇〇が趣味なんですね。私はやったことがないのですが、どのようにしてやるんですか?」
「私は〇〇が好きなんですよ、やられたことありますか?ないですか、では普段は何をされてるんですか?」
あなた「私は普段は山登りをするんですが、されたことありますか?」
相手「いえ、、」
あなた「そうなんですね。では休日はどんなことをしているんですか?」
相手「映画を見ています」
あなた「映画ですか~、私は映画はあまり見ないのですが、最近だとどんんな映画が面白いんですか?」
相手「最近見て面白かったのはボス・ベイビーですね」
あなた「初めて聞きました!どんな内容のお話なんですか?」
相手の喋ることは自分と共通点が一つもない相違点ばかりですが、話がどんどんと広がっていきます。そして、相手が喋れば喋るほど、少しづつ相手の話す量が増え、情報がオープンになり、心の距離が近くなっていきます。
相違点とは強力な武器です。そしてほとんどの人とは相違点だらけです。つまり、どんな人とも話を広げることができます。
項目 | 1流 | 2流 | 3流 |
---|---|---|---|
広げる | 共通点より相違点を探す | 共通点を探す | 壁をつくって立ち去る |
人と会話をするときに「相手を褒めよう」というのはよく聞く言葉です。ですが、褒めるというのも普段から意識して練習しておかないとパッと出てこないものです。
3流はほめるところがないと諦めます。
2流は無理やり褒めます。ですがあまりに脈略なく褒めすぎても嘘くさくなってしまいます。また、無理やり褒めると媚びている印象やうさんくさい印象を与え信頼感を落とすことにもつながります。
1流はビフォーアフターを褒めます。
ビフォーアフターを褒めるとは、今何ができるかではなく、過去と比べた変化を褒めるということです。
人が何かをすれば成長したり上手くなったりするのが普通です。何かに取り組んだ日々を過ごして全く変化しない・下手になるということはありません。
つまり、現在取り組んでいることや最近ハマっていたことを聞いた上で、それを始めたときの状態を聞けばどんな人でも確実に褒められるということです。
逆に、現在の状態だけにフォーカスしてしまうと、世間一般や上手な人と比べてすごいかどうかを評価することになってしまいます。そうすると余程凄い人でないと褒める点が見つかりません。
子供の成長と似ています。「あーうー」という言葉だけを見たらまだ喋れないという評価になってしまいますが、数か月前の生まれた瞬間に泣くことしかできなかった状態と比べると「意識して音をだせるようになった」「すごい成長」というように褒めることができます。
例えばyoutubeの登録者数が何人でも褒めることができます。
「今登録者数50人なんだ」と聞くと「少ない!」と思ってしまい、褒めるどころか見下したり批判してしまいます。
ですが、「始めた当初はどうだったの?」と質問して「いやー、最初は2人だけで、なかなか増えなくて大変だったんだ、、」という回答が来れば、「2人から50人になって、48人も増やしたの!?すごいね。どういうことをやったの?」と褒めて話を前に進めることができます。
相手が「今登録者数50人しかいないんだけど、なんとかして1万人に増やしたいんだ」と言ったときも同じです「それは無謀じゃない」「時間かかりそう」とは決していいません。
現在地点がわかったので過去を聞き出します。「なるほどー。でも開始当初はどんな状況だったの?」と聞けば「いや、開始当初は全然人が集まらなくて、5人の状態が2か月も続いたよー」というようにビフォーの状態がわかります。
それを現在地点と比べれば「すごいね」と褒めることができます。しかも自然にです。
ビフォーアフターを褒めるとは、どんな情報も褒めることができる無敵の技です。
人は現状に満足していないことの方が多いです。未来を見て「もっとこうなりたい」「こうしたい」と思っている人がほとんどです。
現状を不満を持って語る人がほとんどです。
だからこそ、過去は自分から聞き出さなければいけません。相手から過去こうだったけど、今はここまで成長したんだと言ってくることはほとんどないからです。
人は常に進歩しています。絶対に褒めることができます。
項目 | 1流 | 2流 | 3流 |
---|---|---|---|
褒める | ビフォーアフターを褒める | 無理やり褒める | スルーする |
ここまでで、雑談に対する認識改革、雑談における一流の「始め方」と「広げ方」について解説してきました。
雑談の5ステップのうちの残りの3ステップ 「聞き方」「盛り上げ方」「好印象の作り方」 については下記をご参考ください。
一流のコミュニケーション力&雑談力「聞き方」「盛り上げ方」「好印象の残し方」|最適な自己開示方法と褒められた時の対処法