ストーリーには人の心を動かし、行動に移させ、しかもその感情をずっと持続させる効果があります。
人類が地球上でここまで成功できたのもフィクションのストーリーを人々の間で共有することができたからです。
ストーリーに人生を変える力があることは歴史が証明済みです。
以下の記事でストーリーがなぜ人の心を動かすのか?人の心を動かすためには具体的にどういった要素が必要かを実例を踏まえて解説しました。
(参考)人の心を動かすストーリの作り方と構成方法(物語への誤解・メリット・必要性)
ここではもう一歩踏み込んで、ビジネスでストーリーを有効活用するための4種類のストーリーの作成方法について解説しています。
ビジネスは商品を売る、商品を買ってもらう、利益を出す、チーム力を上げるなど必ず達成するべき目的があります。ビジネスにおける目的達成を助けるものとしてストーリーはとても効果的です。
ビジネスにおけるストーリーを分類すると、大きく次の4つに分類することができます。
ターゲットは誰かによって使うストーリーが変わってきます。
この4つのストーリーを目的や手段に応じて使い分けることができれば、大きな効果を生み出すことができます。
ストーリー | ターゲット | 効果・特徴 |
---|---|---|
商品のストーリー | お客さん | ・商品に興味を持ってもらえる。 ・商品に携わるひとの思いにフォーカスする。 ・商品に携わる一人一人でストーリーをいくつも描ける |
創業者のストーリー | 投資家、お客さん | ・会社に興味を持ってもらえる。 ・商品に興味を持ってもらえる。 |
目的のストーリー | 仲間 | ・チーム力UP ・向かう方向を明確にして、一丸となって進める |
お客さんのストーリー | お客さん | ・商品に興味を持ってもらえる。 ・ストーリーの主人公とのシンクロ率が高い(心を掴みやすい) |
ここでの商品はモノ以外にも、アイドルグループや推しの芸能人など売り出したいもの、人々に興味を持って欲しいものを指します。
人の心を動かして商品に興味を持ってもらう時に情報にフォーカスしてはいけません。
例えば、売りたいスマホがある時に
「このスマホは超高性能で、カメラの画素数が〇〇で、CPUのスペックが△△です」
とたくさんの魅力手な情報を並べ立てても、聞いている人にはあまり刺さりません。この情報を聞いたことで心が大きく動かされ「欲しい!」とはなりません。
フォーカスするべきは情報ではなく人物です。人物にフォーカスするとは人物の情報を伝えればいいわけではありません。
その商品に携わっている人の思いにフォーカスします。
例えば先ほどの超高性能スマホの例であれば、
「私は子供のころからカメラが大好きで、昔はカメラの販売をしていました。
ですが一眼レフカメラは大きく持ち運びに不便で、撮った写真を共有するのも時間がかかってしまうのが嫌だとずっと思っていました。
もっと気軽に高性能のカメラを持って旅に出たい。そしてとった写真をできるだけ早くみんなと共有したいと思い続けていました。
とスマホが出てきたときに、この小さなデバイスのカメラに一眼レフと同等の性能のカメラが乗れば私の夢が実現できる。もっと素晴らしい写真を一番感情が乗ったタイミングでたくさんの人に届けることができると思いました。
そこで、スマホ会社に転職し、そして高性能カメラの開発に全身全霊を注いできました。そして出来上がったのがこの超高性能カメラを搭載したスマホです。」
というように、なぜその商品を作ったのかという想いを伝えると、人は「そこまでいうスマホなら使ってみたい!」というように感じます。
相手の心を動かして行動を変えることができました。これがストーリーの力です。
ストーリーの構成の必須要素である、平凡な日常→爆発(大きな変化)→新日常を入れ込むことも大切です。
ストーリーの中で最も重要な平凡な日常では苦悩と葛藤を入れます。
上記の例では技術者にフォーカスしましたが、企画者、セールスマンなどその商品に携わる一人一人にフォーカスすることができます。
つまり、商品ストーリーはいろいろな角度から作ることができます。
投資家に訴えたいときや、世の中の人に会社に興味を持ってもらい好きになってもらいたいときは創業者のストーリーが効果を発揮します。
また、創業者のストーリーを伝えるとその会社の商品を売ることにもつながります。
例えば、スティーブジョブスの生い立ちや考え方の話を聞いたとき、その話の中ではiphoneやMacの細かい説明は一切出ていないにも関わらす、「iphoneが欲しい!」「Macが欲しい!」となったりします。
スティーブジョブスはそんなところにこだわってたんだ。私もその商品を手にしてみたい。という感情が芽生え行動に移させます。
つまり、創業者のストーリーとはとてもパワーを持っています。
目的のストーリーは仲間向けに使うストーリーです。チーム力をアップしたいときに使います。
例えば高性能カメラを備えたスマホを売る時に、チームメンバーの中で「なんで私たちは高性能のカメラを作るんだっけ?」という状態だと、チームの足並みはそろわずいい結果がでません。
開発の目的をストーリーとしてシェアすれば、「なぜそれをするのか?」というチームが向かう方向を浸透させ、一体感を生み出すことができます。
例えば、「今、スマホをカメラとして活用している人はたくさんいる。でも、スマホの製造メーカーはスマホ本体の薄さやアプリの充実度といった、本体の小型化とソフトのラインナップ強化にばかり力を入れている。
どこもスマホのカメラにフォーカスしていない状況だ。
ここで、私たちがスマホカメラに一眼レフなみのカメラを搭載できれば、私たちは一番乗りで世の中に革命を起こせる。
それはスマホ業界だけじゃない。カメラ業界にも革命が起こせるんだ。二つの業界同時にだ。
この最初の偉業を私たちで達成しようじゃないか!」
というように、目的のストーリーを開発に携わる人たちでシェアすれば、みんなが向かう方向を理解し、一丸となって進むことができます。
商品を使ったお客さんにフォーカスしても人の心を動かすストーリーを作ることができます。
その商品を使ったことでどんなふうに人生が変わったかというストーリーです。
人の心を動かすストーリー作りの基本である、日常→爆発→新日常に沿ってストーリーを作ります。
構成 | 内容 |
---|---|
日常 | 商品を使う前の状態 |
爆発 | 商品を購入して使った |
新日常 | 商品を使ったことによる変化 |
例えば、青汁の商品を売りたい場合に、「
この青汁に出会う前は、足腰が痛く、怠さが抜けず胃の不調が続いていました。
困り果てて色んな情報を見ていた時にある日ふとこの青汁の広告を見かけたんです。
最初はどうせ効かないだろうというダメ元で飲んでみました。
ですが、これを飲み始めてから1か月ほど経った頃に少しづつ体の不調が治ってきたんです。
今では、毎朝5㎞ランニングして、その後は好きなヨガを楽しんでいます。これまでは家に帰る途中の階段でも息が切れていたのが、今では2段とびで駆け上がることができます。息も切れません!」
というストーリーを聞いた他の人たちは「えっ、私も試してみたい」という強い興味を掻き立てられます。
ポイントは商品を使う前のダメダメだった日常です。これが、今見ているお客さんの苦悩とシンクロするので、ストーリーに引き込まれ心が動きます。
商品を売りたいときに、A面が作り手の思いにフォーカスしたストーリーだとすれば、B面がそれを使ったお客さんにフォーカスしたストーリーです。
どちらかが必要なわけではなくどちらも必要です。
ストーリーの方向性を「商品」「創業者」「目的」「お客さん」の4種類から決めた後は実際にストーリーを作成していきます。
どれも、「人の思い」に着目します。その時に、なかなかいい思いが見つからないという場合は、次の3つに着目するとストーリーを作り出すことができます。
初体験とは人生におけるターニングポイント=爆発です。その前後をくっつければストーリーができあがります。
FAQとはよくある質問のことです。つまり多くの人が興味を持っていることです。
持論とは何か強烈な経験をしたから生まれたものです。
この3つに着目すれば自然にストーリーを作ることができます。あとは、作ったものが上記の4種類のどれに使えるかを検討します。
エピソードと目的が決まったらストーリーを作り込んでいきます。
ストーリーの基本構成は次の3つです。
一番大事なのは最初の「日常」です。ここで苦悩・葛藤を赤裸々に描きます。また、主人公は平凡な親しみやすいキャラ設定にします。その上でディティールを描いて、相手の頭の中にそのキャラやシーンを存在させます。
聞き手とキャラのシンクロができたら、その平凡な主人公の苦悩・葛藤のある日常に「爆発(大きな変化)」が発生し、そして以前とは違う新日常が始まる。
これで人の心を動かすストーリーが完成します。
詳細や実例については下記をご参考ください。
(参考)人の心を動かすストーリの作り方と構成方法(物語への誤解・メリット・必要性)