変化の速い現在では、新しいことをどんどん吸収し、自発的に行動できる人材が求められています。
しかし、上司など人材を募集している人たちは、自発的に学習し行動できる人を育てることが頭になく、もともとそういった素質を持っている人ばかりを探そうとします。
結果として、人が集まらないという事態に陥ります。それはチームのパフォーマンスを下げ、衰退の一途をたどります。
そういった人を育てる視点のない上司の害悪は人が集まらないというだけではありません。チームの中にいる社員や新人の成長を止めることを平気でします。
ここでは、人の成長を止めチームを危険にさらすダメな上司と、人を成長させチームの可能性を広げるイイ上司の違いについてまとめています。
チームメンバーの成長を止めて人を潰す上司は、新人が入ってきたときに次のようなことを言う人たちです。
「自分が若いときはこう言われて、それに耐えてここまできた」という人がいるかもしれませんが、それは過去の話です。
今ではチームのパフォーマンスを高める研究も盛んに行われ、こういった部下を制限する上司がチームのパフォーマンスを下げることが明らかになっています。
優秀な上司に求められる視点には3つの視点があります。短期、長期、随時視点です。
残念ながら、多くの上司は「短期視点」しか見えていません。
新人を支配しようとしたり制限するのも短期視点しか見えていない上司です。そういった人たちは今目の前にある仕事をいかに早く終わらせるかしか考えていません。
そこそこできる上司は、これに合わせて随時視点も持ち合わせているかもしれません。業務を進めていくときに何か変化があると、それを察知して上手に対応します。
しかし、チームやメンバーを成長させて市場価値を上げていくという最も重要な視点が抜け落ちています。
長期視点が抜け落ちている上司はどんなに頑張っていもチームをダメにします。
「新人のくせに偉そうなことを言うな」「お前がそれを言うのはまだ早い」と言えば、新人は委縮して自分の意見を言うことができなくなってしまいます。
モチベーションも下がり、自分が持っている疑問や考えを確かめることもできなくなります。できたとしても恐る恐るで成長のスピードは鈍化します。
「新人の成長が遅い!」と怒鳴っている上司ほど、チームの害悪になっている場合がほとんどす。
だからこそ、チームを強化するためには、上司が長期的な視点を持つことが必須です。
長期視点を持っている上司は部下への接し方が全く異なります。
長期視点を持っている上司は新人は褒めて、発言権を与え、仕事を任せます。
なぜなら、そうした方が新人のモチベーションや学習意欲が上がり、かつ、学習機会もできて、より早く大きく成長できるからです。
何かしらの行動に対して「おっすごいね」「~できたんだね」と言って褒めたり、承認すれば、モチベーションは上がるものです。
発言権を与えれば、自分もチームの一員なんだと実感できるものです。仕事を与えれば責任を持って頑張ろうとするものです。
そして、自らどんどん発言し行動し、学ぶ人材へと育っていきます。
もちろんこれは新人だけではなく、既存の部下にも有効です。重要なのは新しく入ってきた新人に対してさえも、このような長期的な視点を持った姿勢を貫いているということです。
長期視点を持っている上司は、部下に業務の進捗状況を確認するだけでなく、直接の業務とは関係ない勉強会などを勧めたりもします。
なぜなら、それが部下の能力を伸ばし、将来チームの底力を上げることだと理解しているからです。
新人やまだ未熟な部下に仕事を任せるということは、それが得意な人に任せたときよりも2,3倍かそれ以上の時間がかかることです。失敗するかもしれません。
業務効率という短期視点から考えたらあり得ない愚かな行為です。
しかし、長期視点を取り入れると、例え時間がかかったとしても新人に仕事を任せることが、将来的にチームのためになるということがわかります。
そこには次の3つの理由があります。
仕事を任せるべき1つ目の理由は「部下が成長する」ことです。
これまでやったことがないことに挑戦して、四苦八苦や失敗しながらも、学び、周囲の力を借りて何とか成功させようとすることは、大きな学びをもたらします。
仕事を任せるべき2つ目の理由は「チームワーク(助け合う文化)を醸成する」ことです。
これまでやったことがない仕事は当然ながらわからないことも多く、周りの人に協力を依頼することもたくさんあります。
ヘルプを依頼された人は、その人にやり方を教えることで、自分の能力を言語化したり、教えるという行為を学ぶとともに、チームへの貢献を感じることができます。
また、教えてもらった人は、教えてくれた人に感謝の気持ちを持ちを抱きます。このような相互の関係性がチームワークを育みます。
なお、周りの人が親切に手を貸し、成長を助けることは非常に重要です。
なぜなら、仕事を任せられた人が将来成長したときに、ヘルプを依頼された場合にどう対応するかは、このときに受けた対応に大きく依存するためです。
仕事を任せるべき3つ目の理由は「学ぶ時間が生まれる」ことです。
部下に仕事を任せれば、本来それをやるはずだった時間が浮きます。上司はその浮いた時間をより本質的で重要な勉強に充てることができます。
それは、自分自身の成長に直結し、そしてチームを成長させることにもつながります。
この記事の内容はモルガン・スタンレーやGoogleで人材育成や組織開発を率い、自身も起業家であるピョートル・フェリクス・グジバチさんの著書『世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法』の一部要約に個人的な見解を加えたものです。
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