上司やマネージャーの中には業績の低い部下のことを「アイツは仕事ができない」という人がいます。
そういった人は「これじゃチームの仕事が進まないから、人を変えてくれ」「人員を増やしてくれ」と簡単に言います。
ですが、部下が仕事ができないのはほとんどの場合部下の責任ではなく、マネージャーの責任です。
マネージャーの仕事は、チームの目標を明確にし、行動計画を立てて、チームメンバーのモチベーションを引き出し、チームが最高のパフォーマンスを長期的に発揮できるようにすることです。
ところが、部下の文句や愚痴を言うマネージャーに限って、そういった職務を怠っている場合がほとんどです。
ここでは「仕事ができない」という部下に対して、上司がどのように接するべきかについてまとめています。
「仕事ができない」と感じる部下に対して、上司は次の4つの行動をする必要があります。
この4つをしっかりとやって、それでもモチベーションが低く、仕事ができないという人はそうそういません。
マネージャーの仕事の一つは「部下の仕事のサポート」です。
「プロジェクトはどれぐらい進んでいますか?」「何か課題になっていることはありますか?」「私がサポートできることはありますか?」といったことを定期的に部下に聞き、サポートをすることが重要な役目の一つです。
ところが「アイツは仕事ができない」と文句を言う上司に限って、部下に対してこういったことを自ら聞きに行っていません。
「プロジェクトはどれぐらい進んでいますか?」「何か課題になっていることはありますか?」「私がサポートできることはありますか?」といったことを定期的に部下に聞き、サポートをするというと、「そんなのは部下から報告するべきだ」というマネージャーがいます。
そういうマネージャーは部下が自ら進んで報告したくなるような関係性を築いているのでしょうか?ほとんどの場合答えはノーです。
上司は普段から、部下が困った時に自ら相談したり、失敗を打ち明けたり、弱みを見せられるような信頼関係を作っておく必要があります。
部下のフルネームを漢字で書けることはもちろん、住んでいるエリア、今追いかけている目標、学生時代に打ち込んでいたこと、休日の趣味、仲のいい友人関係などの事実や、何にモチベーションが上がるかといった価値観まで把握しておく必要があります。
そして、部下の成功と幸せを心から願いサポートする姿勢で接している必要があります。
部下が「上司は自分を理解し、見てくれていて、自分に力を入れていてくれる」と感じているのであれば、どんな人でも頑張ることができます。
そういった関係性を築いておらず、部下が「上司は自分のことを理解しようとしない、自分を見てくれない、自分の成功や幸せを応援していない」と感じているようであれば、それはマネージャーの職務怠慢です。
やる気がなくモチベーションが低い部下がいたら「仕事ができない」というレッテルを貼るのではなく、モチベーションが低い原因を突き止めて、成果を出せるようなチャンスを与えるのも上司の仕事です。
もしかすると、現在の仕事に対して、仕事の意味を見いだせていないのかもしれません。仕事が自分の将来キャリアにどうつながるのかが見えていないのかもしれません。
やりたいことやモチベーションが上がることを聞き出して、現在の仕事とそれらを結び付けてあげる必要があります。
もし、現在の仕事よりも他に適切な仕事があるのであれば「私のチームで苦労するよりも、あそこのチームで頑張った方がいいかもしれないですね。異動が可能か確認してみますよ」と言って、部下がモチベーションを上げて自己実現できるように取り計らうのも上司の仕事です。
つまり、部下のモチベーションが上がるようなチャンスを与えることも上司の仕事ということです。
現在の業務内容と部下の持っているスキルや好みが一致してないければ、部下がパフォーマンスを発揮できないのは当然です。
一流のプログラマーに営業をやらせて業績がボロボロ、それで「アイツは仕事ができない」と言っているのであれば、それは会社の重罪です。
社員の特性や嗜好、スキルを理解して、最善の場所を与える、時には作り出すことも上司の仕事です。
人はスキルや好みが一致している仕事であれば、根気強くやり続けパフォーマンスを発揮するものです。
部下の幸せと成功を願い、「部下の仕事をサポートをする」「部下と信頼関係を築く」「チャンスを作り出し与える」「適材適所を考える」を全てやり切ったのにも関わらず、どうしても部下が成長せず、かつ成長する意欲を見せない場合は、それ以上肩入れする必要はないでしょう。
もう、あなたは十分その社員に対して誠意を尽くしました。
その社員はこの会社とはマッチしなかったということです。正直にそのことを伝え、厳しい評価を下すことも上司の仕事です。
ただし、その社員が会社を去る時にその人をこき下ろしてはいけません。できないところが目立ちましたが、滞在した期間でできたこともあるはずです。そのことを認め感謝を示し、新しい人生の成功を願う。それが上司がすることです。
なぜそうまでするかというと、それは会社に残る人の心理的な安全性を保つためです。
たいていの場合、上司と部下よりも社員同士の方が仲がよく情報交換しているものです。社員をこき下ろしたら、他の社員も恐怖を感じます。
また、ストレスを抱えて外に出た人は、ため込んだストレスをSNSや口コミサイトなどで発散することもあります。そういった危険性を防ぐためにも、退職者にも敬意を持って接する必要があります。
この記事の内容はモルガン・スタンレーやGoogleで人材育成や組織開発を率い、自身も起業家であるピョートル・フェリクス・グジバチさんの著書『世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法』の一部要約に個人的な見解を加えたものです。
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