コーチ兼ポートフォーリオマネージャーとは何か?会社に必要とされるマネージャーとはどんな人材か?

インターネットの登場など時代の変化に伴って、企業のマネージャーに求められている素質も大きく変化しています。

従来のマネージャーは自分自身も部下と同じ仕事をしながらマネージメントを行う、プレイングマネージャーか、あるいは肩書きだけをもって偉そうにしている嫌な上司が基本でした。

しかし、実際に成功する企業や衰退する企業が出てきたことや、チームのパフォーマンスに関する研究が進んだことで、従来のマネージメント方法ではチームのパフォーマンスを最大化することができず、将来的な衰退につながることが明確になっています。

こうした変化の中で、マネージャーはプレイングマネージャーからや偉そうな上司から、コーチ兼ポートフォーリオマネージャーへと変化してます


プレイングマネージャーの問題点

ふんぞり返って部下からの報告を聞き、偉そうに意見を言う嫌で仕事ができない上司は論外として、部下以上に働き成果をあげているプレイングマネージャーがなぜいけないのでしょうか?

それは、プレイングし続ける限り、これまでと同じやり方をずっと続けてしまう(あるいは大きな変化が生まれない)ということです。

現代では情報がそこかしこにあり、市場や競合の状況も大きく変化しやすい傾向があります。そういった中で既存の計画ややり方に固執していると、時代からあっという間に取り残されてリカバリーが難しくなります。

このため、チームとしての生産性を上げ続けるためには、そうした変化を汲み取り、現在の仕事にどう生かしていくかを柔軟に考えることが必要です。

ですが、プレイングマネージャーはあまりにも忙しすぎて、それを考える時間がとれないし、行動に移す時間もとれないというのが、将来的にチームのパフォーマンスを下げる大きな足かせになります


マネージャーの役割

プレイングマネージャーを重視する企業はマネージャーの役割を誤解しています。そういった組織では「マネージャー」=「仕事ができて業績を上げる優秀な個人」といった考え方をしています。

しかし、マネージャーの本来の役割は「チームが生み出すパフォーマンスを最大化すること」です。

高度経済成長期など昔は、質の高いものを出せば売れた時代だったので、仕事のできる上司が上に立ち、自分のやり方を下に強制し、部下を駒のように扱う方法で、チームが生み出すパフォーマンスを最大化することができました。

しかし、今ではそのやり方では、人材が育たず、かつ、優秀な人材がどんどん流出し、変化にも柔軟に対応できず、チームが衰退の一途をたどります。

このような時代の変化に合わせて、「チームが生み出すパフォーマンスを最大化すること」という目的のために、マネージャーの仕事も変化する必要があります


ポートフォーリオマネージャーとは何か?

ポートフォーリオマネージャーのポートフォーリオとは、折り畳みカバンや書類といった意味もありますが、ここでは「最適な組み合わせを作る」という意味です。

株式や金、不動産、現金などの金融商品をリスクヘッジしながら効果を最大化する最適な組み合わせを作るといった使い方をします。

ポートフォーリオマネージャーとは、チームのパフォーマンスを最大化し価値を生み出すために、社内外のあらゆるリソースの最適な組み合わせを考え活用する人です。

既存の業務プロセスを見直して、別のシステムに置き換えたり、まとめて外部委託する方法を考える業務を担う人です。


人数思考の人はマネージャー失格

マネージャーの中には「うちのチームに人が足りない」「もっと人が欲しい」という人や、とにかく人を増やすことだけを考えるマネージャーがいます。こうした人はマネージャー失格の代表例です。

「この仕事には部下が6人は必要だ」と考えるのは思考停止に他なりません。

そうではなく「この仕事をもっと少ない人数でやるにはどうしたらいいか?」を考えるのがマネージャーの役割です。

もちろん「気合と根性で乗り切れ!」と言った精神論や根性論はもってのほかです。

新しいシステムを導入したら、このプロセスを省くことができて時間が生まれるのではないか?その時間をもっと重要なことにつぎ込んだらいいのではないか?といったことを考え実行に移すのがマネージャーの役割です。

他にも、コンサルを入れる、派遣会社を入れる、事業提携をする、クラウドソーシングする、クラウドファンディングするといったようにあらゆるものを柔軟に組み合わせるなど、求められるのはまさに、ポートフォーリオマネージャーです。

point

人数が多ければ多いほどいいと考えている人はマネージャー失格。


チーム・ファースト

マネージャーは誰よりも会社というチームを最優先させる人物でなければいけません

会社というチームのパフォーマンスを最大化するために、自分のチームを持ちマネージメントしているわけです。

「この仕事には部下が6人は必要だ」「もっと人が必要だ」と考えるのではなく、「自分のチームの仕事をもっと少ない人数で回せるようになれば、他にもっと人を必要としているチームに人を回せる」と考え自分の利益よりもチームの利益を優先する人である必要があります

チームを小さくすることで自分のチームのコストが下がり、会社全体としても活用できる人材が増えることで、会社というチーム全体で生産性を向上させることにもつながります。

業務委託や新規技術の導入により、メンバーの時間に余裕を生み出すことで、より価値の高い仕事に集中することができるようになり、チームが生み出す価値もより高いものになります。

このぐらい全体を見て長期的に考えられるチーム・ファーストの人材がマネージャーになるべき人材です。

point

会社というチーム・ファーストができる人が、マネージャーになるべき人材。


コーチの役割

現代のマネージャーに求められる役割はポートフォーリオマネージャーだけではありません。コーチの役割も必須となっています。

マネージャーの本来の役割は「チームが生み出すパフォーマンスを最大化すること」です。そのためにはメンバーを育てることが欠かせないためです。

メンバーがモチベーション高く仕事に挑み、チームメンバー同士で助け合い励まし合う関係があるチームには信頼関係とチームワークが生まれ、より高いパフォーマンスが出せるようになります。

コーチとは、自分がなれると思っている人物になれるように、聞きたくないことをきかせ、見たくないものを見せてくれる人のことです。

そのためには、本人以上にメンバーの可能性を信じ、メンバーの成功と幸せを願う必要があります

それを実際にできる人こそが、チームに求められているマネージャーです。

会社のチームとはプロのサッカーチームのようなもので、マネージャーはコーチ(監督)です。メンバーを育成し、チームが一つの目標に向かって全力を発揮できるようにすることが仕事です。

一方、プレイングマネージャーはメンバーと一緒になって自分もサッカーをプレイする人です。これではチームのパフォーマンス向上は難しいものです。

一緒にプレイせずコートの外に立って全体を俯瞰するからこそ、メンバーには見えないことが見えてきます。

point

マネージャーは優秀なコーチも兼ねている必要がある。




参考

この記事の内容はモルガン・スタンレーやGoogleで人材育成や組織開発を率い、自身も起業家であるピョートル・フェリクス・グジバチさんの著書『世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法』の一部要約に個人的な見解を加えたものです。

本書は現代の組織に求めれているものは何か?それを得るためにはどうすればいいかが具体的かつ論理的に記されています。

使われている用語は専門用語ではなく、誰にでもわかりやすいものになっていて、例も豊富に乗っている非常に実践的な良書です。

会社を率いている人や部署を率いている人、あるいはマネージャーを目指している人の必読書といえます。

この記事に興味を持たれた方は実際に本書を手に取ってみることをお勧めします。



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